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性格が悪い
しおりを挟むこんな素敵なお言葉をもらっても私はなんと返せばいいのかわかりません。
自分がほしいものは今まで妹がもらっていました。私がほしいと目が輝くと先回りして妹が取っていくのです。素敵なもの、欲しいものをそのまま口にした経験がないのです……
「………私は……婚約者に婚約破棄されてしまいました……」
「うん。そうだね」
「私は世間一般では傷物であって……」
「うん。そうだね。
だから僕は正々堂々と君に想いを伝えることができるようになった。
シャロン嬢にとってはとても辛い思い出かもしれないけど、僕には幸運な出来事だったんだ」
「……辛い出来事?」
ぼうっとする頭の中を整理するように言葉を紡いでいましたが、婚約破棄を辛い出来事とジョージ様に言われ、ふと考えてしまいます。
「………ジョージ様?」
「なんだい、シャロン嬢」
「私、婚約破棄されてしまいましたが、全然辛くないのです。むしろ大歓迎でしたわ。こんなに性格が悪い女なのですよ?」
そう、私はダレン様に婚約破棄されてしまいましたが、ちっとも辛くなんてなかったのです。どうやってダレン様と協調しあえる関係性を作ればいいのか、そんなことを考えなければならない日々から解放されると思うと喜びさえあれ、悲しみなどなかったのです。婚約当初はもちろん悲しいことばかりでしたが、今は思いあえなかったことすら幸運だったのではと思ってしまえるのです。
私はこんなに薄情で性格が悪いのです。
「どんなシャロン嬢でも僕は大好きだよ。あんな男に心を砕いてないなんて僕からしたら朗報でしかない。それを性格が悪いというのなら僕は大悪党になってしまうよ」
私の言葉になんてことないとそう返して頂けるのです。
こんな素敵な男性、他にいらっしゃるのでしょうか。
「私には父も母ももうおりません…」
「父親の分も、母親の分も、僕が愛を捧げると誓うよ」
「侯爵家だって、散財されていてあまり贅沢はできないかもしれません…」
「贅沢なんて必要ない。君が僕のそばで笑っていてくれるならこんなに幸せなことはないんだ。それに君が贅沢したくなったら僕が稼ぐよ。」
「領地経営も不慣れな私には激務かもしれません…」
「今までずっと君が一人でやっていたことは知っているよ。でも今度からは僕にも手伝わせてほしい。そしてたまには休憩をとって僕とデートもしよう」
「それに、私ジョージ様のことが好きなのです…」
「僕もシャロン嬢のことがだい……………えっ?」
ぽつりぽつりと話す私の言葉に丁寧に言葉を返してくれていたジョージ様が固まってしまいます。
だって、私こんなに不安な事を話せるほどジョージ様が大好きなのです…
ダレン様になんて、不安のひとつも話せませんでした。でもジョージ様なら安心して胸の内を見せることができるのです。
領地経営もこれからの人生も大変な事ばかりだと思います。
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不安なことも楽しいことも一緒に経験していきたい。
そうして歳をとったとき過去を振り返って笑いあいたいのです。
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