38 / 41
名前はルイーナ ⑨
しおりを挟む
そう、私は両親にさえ愛されないいらない子なのに………
「ねぇ、ルイーナ。『父親の分も、母親の分も愛をあげる』私が以前素敵な人から頂いた言葉よ。私たち家族があなたにたくさんの愛をあげるわ。あなたが生まれて来てくれて、本当に嬉しかったのよ。あなたとこうしてお話ができて私は幸せなの。あなたからたくさんの幸せを貰ってるわ。だから私たち家族にもあなたを愛させてちょうだい」
「ふっ……ぅぅぅ……ぅぅぅ…………」
そこからは生まれて初めてこんなに泣いた。声をあげて誰かの前で泣いた。
シャロン様が抱きしめてくれていて、ジョージア様も背中をさすってくれる。
「ルイーナ、あなたのことが大好きよ」
「ルイーナ、生まれて来てくれてありがとう」
そんな言葉をシャロン様が一言ずつくれるたび今まで必死に心を覆っていたかたい殻がはがれていくようだった。
そして落ち着いたときにシャロン様はハンカチを私に渡して下さった。
涙を拭くようかと、そのハンカチを見つめると、見覚えがあった。これはまだ私が10歳くらいの時、初めて刺繍したハンカチを養護院で販売したもの。
全然上手じゃないのに全部売れて、とても嬉しかったのを覚えている。
だからあれから練習して、今ではそこそこうまくなれていると思う。
「あ、あの、これっ!」
「ふふっ、覚えてる?実はあなたが刺繍したものを初めて販売するって聞いてね。養護院で買っちゃったの」
買っちゃったのって。
こんな下手くそな刺繍。絶対侯爵様は持っちゃいけないのに。
それなのに…
私には誰もいないってずっと思ってた。それなのにずっと前から気にかけてくれてたんだ……
もう涙が止まらないよ………
「それでね、あなたに仕事をお願いしたいの」
………………仕事?
「うちでね、刺繡職人を探しててね。もしよければそこで仕事をしてもらえないかと思ってるの。どうかしら?」
………………仕事?……刺繍………………?
「やります!!!」
「あら、色々考えなくていいの?ほかにやりたいこととかあれば無理にとは言わないんだけれど」
「いえ、仕事探さなきゃと思っていたので、刺繍を仕事にできるのならやります!!やらせてください!!」
刺繍の仕事は経験や人脈が必要となる仕事で、私にはその人脈もなく、仕事ととしての経験もないのでほとんど諦めていた。
それをこんな風に声をかけていただけるなんて、やるしかない!!
「ふふっ、なら明日にでも職場に案内するわね。ローシャ服飾店ってわかる?」
「………ローシャ服飾店ですか?あの有名店ですよね」
ローシャ服飾店は30年以上前にできたという今でも大人気のお店です。
ドレスはもちろんそれに合わせた小物も相談出来たり、最近は男性の服も合わせてオーダーできるとのことで、さらに人気が上がっています。皇室御用達のお店として貴族様から大人気なのですが、それとは別店舗として平民街にも小さな店を出し、平民にも手を出しやすい品物があるといいます。
「あら、知ってるの?嬉しいわ。あの店、私が若いころに作ったお店でね。そこの刺繡職人として働いてほしいと思っているの。どうかしら」
「も、もちろん!!光栄すぎるお誘いです」
「ふふっ、よかった。じゃあよろしくね」
「ねぇ、ルイーナ。『父親の分も、母親の分も愛をあげる』私が以前素敵な人から頂いた言葉よ。私たち家族があなたにたくさんの愛をあげるわ。あなたが生まれて来てくれて、本当に嬉しかったのよ。あなたとこうしてお話ができて私は幸せなの。あなたからたくさんの幸せを貰ってるわ。だから私たち家族にもあなたを愛させてちょうだい」
「ふっ……ぅぅぅ……ぅぅぅ…………」
そこからは生まれて初めてこんなに泣いた。声をあげて誰かの前で泣いた。
シャロン様が抱きしめてくれていて、ジョージア様も背中をさすってくれる。
「ルイーナ、あなたのことが大好きよ」
「ルイーナ、生まれて来てくれてありがとう」
そんな言葉をシャロン様が一言ずつくれるたび今まで必死に心を覆っていたかたい殻がはがれていくようだった。
そして落ち着いたときにシャロン様はハンカチを私に渡して下さった。
涙を拭くようかと、そのハンカチを見つめると、見覚えがあった。これはまだ私が10歳くらいの時、初めて刺繍したハンカチを養護院で販売したもの。
全然上手じゃないのに全部売れて、とても嬉しかったのを覚えている。
だからあれから練習して、今ではそこそこうまくなれていると思う。
「あ、あの、これっ!」
「ふふっ、覚えてる?実はあなたが刺繍したものを初めて販売するって聞いてね。養護院で買っちゃったの」
買っちゃったのって。
こんな下手くそな刺繍。絶対侯爵様は持っちゃいけないのに。
それなのに…
私には誰もいないってずっと思ってた。それなのにずっと前から気にかけてくれてたんだ……
もう涙が止まらないよ………
「それでね、あなたに仕事をお願いしたいの」
………………仕事?
「うちでね、刺繡職人を探しててね。もしよければそこで仕事をしてもらえないかと思ってるの。どうかしら?」
………………仕事?……刺繍………………?
「やります!!!」
「あら、色々考えなくていいの?ほかにやりたいこととかあれば無理にとは言わないんだけれど」
「いえ、仕事探さなきゃと思っていたので、刺繍を仕事にできるのならやります!!やらせてください!!」
刺繍の仕事は経験や人脈が必要となる仕事で、私にはその人脈もなく、仕事ととしての経験もないのでほとんど諦めていた。
それをこんな風に声をかけていただけるなんて、やるしかない!!
「ふふっ、なら明日にでも職場に案内するわね。ローシャ服飾店ってわかる?」
「………ローシャ服飾店ですか?あの有名店ですよね」
ローシャ服飾店は30年以上前にできたという今でも大人気のお店です。
ドレスはもちろんそれに合わせた小物も相談出来たり、最近は男性の服も合わせてオーダーできるとのことで、さらに人気が上がっています。皇室御用達のお店として貴族様から大人気なのですが、それとは別店舗として平民街にも小さな店を出し、平民にも手を出しやすい品物があるといいます。
「あら、知ってるの?嬉しいわ。あの店、私が若いころに作ったお店でね。そこの刺繡職人として働いてほしいと思っているの。どうかしら」
「も、もちろん!!光栄すぎるお誘いです」
「ふふっ、よかった。じゃあよろしくね」
67
あなたにおすすめの小説
私ではありませんから
三木谷夜宵
ファンタジー
とある王立学園の卒業パーティーで、カスティージョ公爵令嬢が第一王子から婚約破棄を言い渡される。理由は、王子が懇意にしている男爵令嬢への嫌がらせだった。カスティージョ公爵令嬢は冷静な態度で言った。「お話は判りました。婚約破棄の件、父と妹に報告させていただきます」「待て。父親は判るが、なぜ妹にも報告する必要があるのだ?」「だって、陛下の婚約者は私ではありませんから」
はじめて書いた婚約破棄もの。
カクヨムでも公開しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
私、お母様の言うとおりにお見合いをしただけですわ。
いさき遊雨
恋愛
お母様にお見合いの定石?を教わり、初めてのお見合いに臨んだ私にその方は言いました。
「僕には想い合う相手いる!」
初めてのお見合いのお相手には、真実に愛する人がいるそうです。
小説家になろうさまにも登録しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
結婚式をボイコットした王女
椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。
しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。
※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※
1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。
1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)
ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる