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別れ
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アステルは家の中で帰りを待ちながら祈らずにはいられなかった。どうかシリウスとレイアが無事に戻ってきますように、と。椅子に座り、テーブルの上に両手を組みながら祈り続ける。窓の外では未だに降り続けている雨。音を聞く限りまだ止む気配はない。祈ることしかできない自分が歯痒くて仕方がなかった。
(そうだ。帰ってきたら何か作ろう。シリウスの好きなものを作ってあげたい)
体調が良くなってすぐに美味しい料理を作ろう、そうしたら喜んでくれるはずだ。そう思うだけで少しだけ元気になれる気がして、自然と笑みがこぼれてくる。そんな時だった。扉がノックされた音が聞こえたため、アステルがシリウスが帰ってきたのではないかと期待をしながら返事をして扉を開けると、そこに立っていた人物を見て息を飲んだ。
「ロディ……?」
そこには全身びしょ濡れになったロディの姿があって、彼はアステルの顔を見るとホッとしたような顔をして微笑んだ。
「レイアが無事に見つかった」
「本当?よかった……」
「ダークエルフがいた」
「えっ……?」
アステルは泣きそうになりながら安堵の溜息を吐くと、ロディは表情を険しくして衝撃的な一言を口にしたため、今度は固まってしまう。シリウスの存在を知られてしまった。その事実はアステルにとって最も恐れていたことだった。そんな彼女に対してロディは真剣なまなざしで見つめる。
「奴は森の中に逃げた。何があるのかわからないから鍵を掛けて家にいろ。俺達はダークエルフを捜すからお前は絶対に家から出るなよ!」
それだけ言うとロディは扉を勢い良く閉めて走り去っていった。一人、取り残されたアステルはその場に崩れ落ちると、しばらく動くことができなかった。
(シリウスが帰って来れない……)
アステルはよろよろと立ち上がり、おぼつかない足取りのまま家の中に入ると、そのままシリウスが使っていたベッドに倒れ込む。そして枕元に置いてあったシリウスがさっきまで着てきた服をぎゅっと力強く握り締めて胸に押し付けて涙を流す。もう彼がいない生活など考えられない。シリウスがいない世界なんて意味がない。いつの間にか彼の存在が自分の全てなのだと思い知らされてしまったのだ。
◆
朝になると雨が上がり、雲間からは太陽の光が射していた。しかしアステルの心は晴れないままだ。シリウスの服を抱きしめたまま横になっていると鳥が窓を叩く音でヴァンが戻って来たことを察してゆっくりと起き上がり、扉を開けて外に出た。
「お帰りなさい、ヴァン。それは……」
アステルはヴァンがクチバシに咥えている布袋に気がつくと、すぐにそれをシリウスが身につけていた外套の布だと気がついた。ヴァンがそれを地面に置くと、アステルはすぐに袋の中を確認してみる。
「花……」
中には地面の一部ごと掘り起こしてきたのか土まみれの小さな白い花がたくさん入っていた。シリウスが根ごと摘んでいたものだろうか。アステルはその花を手に取ると、優しく包み込んだ。彼の優しさが伝わってきて、枯れかけていた心が再び潤っていくのを感じる。この花はきっと最後の贈り物。
そう思った瞬間、アステルは無意識に涙を流していた。シリウスは今頃どうしているだろう。怪我はしていないか、逃げ切れたのか、心配は尽きない。アステルはシリウスが残してくれた小さな白い花を潰さないよう、大切に抱えながら、彼の無事を祈り続けた。
その様子を遠くから一人のダークエルフの男が木の影から見守っていた。
(ヴァン、ありがとう……アステル……必ず幸せになってくれ)
男は悲しげな雰囲気を纏わせ、その姿は森の中へと消えていった。
(そうだ。帰ってきたら何か作ろう。シリウスの好きなものを作ってあげたい)
体調が良くなってすぐに美味しい料理を作ろう、そうしたら喜んでくれるはずだ。そう思うだけで少しだけ元気になれる気がして、自然と笑みがこぼれてくる。そんな時だった。扉がノックされた音が聞こえたため、アステルがシリウスが帰ってきたのではないかと期待をしながら返事をして扉を開けると、そこに立っていた人物を見て息を飲んだ。
「ロディ……?」
そこには全身びしょ濡れになったロディの姿があって、彼はアステルの顔を見るとホッとしたような顔をして微笑んだ。
「レイアが無事に見つかった」
「本当?よかった……」
「ダークエルフがいた」
「えっ……?」
アステルは泣きそうになりながら安堵の溜息を吐くと、ロディは表情を険しくして衝撃的な一言を口にしたため、今度は固まってしまう。シリウスの存在を知られてしまった。その事実はアステルにとって最も恐れていたことだった。そんな彼女に対してロディは真剣なまなざしで見つめる。
「奴は森の中に逃げた。何があるのかわからないから鍵を掛けて家にいろ。俺達はダークエルフを捜すからお前は絶対に家から出るなよ!」
それだけ言うとロディは扉を勢い良く閉めて走り去っていった。一人、取り残されたアステルはその場に崩れ落ちると、しばらく動くことができなかった。
(シリウスが帰って来れない……)
アステルはよろよろと立ち上がり、おぼつかない足取りのまま家の中に入ると、そのままシリウスが使っていたベッドに倒れ込む。そして枕元に置いてあったシリウスがさっきまで着てきた服をぎゅっと力強く握り締めて胸に押し付けて涙を流す。もう彼がいない生活など考えられない。シリウスがいない世界なんて意味がない。いつの間にか彼の存在が自分の全てなのだと思い知らされてしまったのだ。
◆
朝になると雨が上がり、雲間からは太陽の光が射していた。しかしアステルの心は晴れないままだ。シリウスの服を抱きしめたまま横になっていると鳥が窓を叩く音でヴァンが戻って来たことを察してゆっくりと起き上がり、扉を開けて外に出た。
「お帰りなさい、ヴァン。それは……」
アステルはヴァンがクチバシに咥えている布袋に気がつくと、すぐにそれをシリウスが身につけていた外套の布だと気がついた。ヴァンがそれを地面に置くと、アステルはすぐに袋の中を確認してみる。
「花……」
中には地面の一部ごと掘り起こしてきたのか土まみれの小さな白い花がたくさん入っていた。シリウスが根ごと摘んでいたものだろうか。アステルはその花を手に取ると、優しく包み込んだ。彼の優しさが伝わってきて、枯れかけていた心が再び潤っていくのを感じる。この花はきっと最後の贈り物。
そう思った瞬間、アステルは無意識に涙を流していた。シリウスは今頃どうしているだろう。怪我はしていないか、逃げ切れたのか、心配は尽きない。アステルはシリウスが残してくれた小さな白い花を潰さないよう、大切に抱えながら、彼の無事を祈り続けた。
その様子を遠くから一人のダークエルフの男が木の影から見守っていた。
(ヴァン、ありがとう……アステル……必ず幸せになってくれ)
男は悲しげな雰囲気を纏わせ、その姿は森の中へと消えていった。
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