シークレットベイビー~エルフとダークエルフの狭間の子~【完結】

白滝春菊

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囚われたアステル

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 眠らされたアステルの意識が戻るとそこは薄暗い地下室の中だった。両手両足を縄で拘束されており身動きが取れない。声を出せないように口には布を噛まされていた。自分の置かれた状況を理解すると背筋が凍るような恐怖が襲ってくる。

(私、死ぬの?)

 殺されるかもしれないという恐怖で震えが止まらない。この世から去る事実よりも幼いステラを置いていってしまう事の方が怖かった。

(そういえばステラは?)

 辺りを見回すがどこを探してもいない。別の場所に囚われているのか、それとも近くにいたヴァンが逃がして誰かが保護してくれたのかはわからないがとにかく無事でいる事を祈るしかなかった。

 しばらくすると複数の足音が聞こえてきた。その音を聞いただけでアステルは顔を青ざめさせる。そして扉が開かれ、そこに現れた人物にアステルは目を大きく見開く。

「こいつだ」
「おお、これはなかなかのエルフの娘ですな」

 目の前に現れたのはアステルを捕らえた男だ。あの時はフードで顔が隠れていてよく見えなかったが今は素顔が見える。銀髪は長く、片目は閉じているが赤い瞳は鋭い眼光をしており、褐色の肌をしていた。まるで狼のような風貌の男。外見年齢は二十代後半といったところか。
 実年齢がわからないのは彼の耳が尖っている、ダークエルフだからだ。同じダークエルフのシリウスとは雰囲気が違う。記憶の中の彼はもっと誠実だったし何より優しかった。目の前にいる男はまるで獣のような荒々しさを感じる。

「顔もいいですが体つきも今までのエルフとは……んふふ、違いますねぇ」

 一緒にいる男は平凡な容姿の茶髪の人間の男だ。眼鏡を掛けており、アステルに近寄ってしゃがみ込むと顔を覗き込んできた。
 どこか卑しい笑みを浮かべて息を吹きかけてくる。気持ち悪くてアステルは思わず目を瞑った。

「ああ、こいつはいいですねぇ」

 人間の男が手を伸ばすとアステルの片方の胸を鷲掴みにする。あまりの事にアステルは悲鳴を上げそうになったが口に布を噛ませられているせいでくぐもった声しか出ない。必死に抵抗するが手足の自由を奪われているためどうしようもなかった。
 するとダークエルフの男が舌打ちをする。

「この女、ガキを産んでやがった」
「この見た目で経産婦ですか……あー……なら、客を取らせましょう」

 人間の男が残念そうにため息を吐いた後、手を離して立ち上がった。その言葉の意味が理解できないほどアステルは馬鹿じゃない。これから自分がどんな目に合うのか想像しただけで背筋が凍った。

「客に使えるようにしてくださいね。ノワール」

 ノワールと呼ばれたダークエルフが嫌そうな顔で舌打ちをするとアステルの体を持ち上げ、肩に担いだ。抵抗をしたかったが余計なことをすれば殺されると悟り、大人しくするしかない。

(ステラ……)

 愛する娘の名前を心の中で呟きながら涙を流すことしかできなかった。

 ◆

 アステルが連れて来られたのは薄汚いベッドのある小さな部屋だ。壁も床も天井もボロボロでおそらく使われなくなった建物を利用しているのだろう。その証拠に部屋の隅には埃が積もっていた。
 部屋には誰もおらず、アステルは乱暴にベッドの上に投げ出される。受け身を取れず、背中を強く打ってしまい咳込んだ。

「おい、起きろ!」
「うっ!?」

 ノワールに髪の毛を捕まれて無理矢理上を向かされる。痛みに表情を歪ませるが、それでも反抗的な態度を取らなかった。
 咥えさせられた布と手足を縛るの縄をナイフで切られるが逃げる気はない。逃げるならチャンスを待つべきだ。そして何が何でもステラの所に帰る。

「さっき言った通り、お前は今から客を取るんだ」

 そう言ってノワールが取り出したのは小瓶に入った液体だ。それを自分で飲んだ後にもう一本はアステルに無理矢理飲ませた。薬を扱っているからわかる。これは媚薬だ。
 ノワールは睨みつけたままアステルに覆いかぶさり服を脱がそうとするがアステルはその手を掴む。

「なんだ?」
「あ、あの……一つだけ教えてください。私の娘はどこにいますか?」
「お前のガキは逃げやがった。どうせ混じり者だから売り物にならねぇしな」

 やはりヴァンが逃してくれたようだ。それだけわかれば後は大人しく従うだけ。逃げられる場面を必ず見つけてやる。

「……半分はダークエルフだよな?」
「はい……」

 ステラの父親がダークエルフであることを見抜かれたから見逃してもらえたのだと理解をすると正直に答えた。するとノワールは舌打ちをして忌々しいという表情を浮かべる。
 ダークエルフは特にエルフに迫害を受けていたのでエルフを強く憎んでいる。こんな風に調教を任されたのは間違いなく彼に対する嫌がらせだ。媚薬を飲まないといけないのは嫌悪している相手を抱くことが難しいからだ。

 ノワールは舌打ちをするとアステルに跨った。そのまま首筋に噛み付いてくる。血が出るほど強く噛まれるがアステルは抵抗しない。痛くて声を出しそうになるが唇を噛んで耐えた。しばらくするとノワールは口を離す。

「もの好きな馬鹿に無理矢理やられたのか、俺みたいに余興で抱かれたのか知らねぇが……何故ガキを堕ろさなかった?」
「……愛している人の子だから……うっ」
「嘘をつくな……!」

 そう答えるとグッと首を絞められ、呼吸ができなくなる。ノワールの瞳は怒りに染まっており、本気で殺すつもりかもしれない。

「ダークエルフとエルフが……ありえねぇんだよ!」
「ぐっ……」

 苦しみながらアステルはぼんやりとシリウスに出会った時のことを思い出した。あの時もこうやって首を絞められていたがあの状況でも手加減をされていたのだと最悪な形で思い知る。
 そしてシリウスは怯えた表情だった。優しい言葉を掛けてやれば大人しくなってくれた。しかし、今は違う。本気だ。このままでは本当に殺されてしまう。

(ステラ……ごめんなさい……)

 意識が遠退きかけた瞬間、ふっと力が弱まった。酸素を求めて大きく息を吸い込む。どうやら気絶する寸前で離されたらしい。アステルは商品なので殺したらまずいと判断をしたのだろう。

「チッ、もういい……」

 ノワールは舌打ちをすると今度は自分のズボンに手を掛け、下着ごと下ろし始めた。見せつけるように色黒い性器を取り出すと勃起しており、先端からは透明な液が出ていた。アステルはそれを見て顔を青ざめさせる。

「客の前では気持ち悪いくらい喘いでみろよ。そしたら少しは可愛がってもらえるかもしれねぇぞ」
「い、いや……」

 無理矢理白い足を開かされ、思わず目を瞑ると涙が溢れ出す。死ぬよりはマシだと思っていたがシリウス以外の男に抱かれるのは嫌で仕方がない。

(シリウス……)

 せめて目の前の男をシリウスだと思って耐えようと、彼の名前を心の中で呼ぶしかなかった。
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