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弟子と母親編
父親の不安
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夕方になり、アステルは一日の作業を終えると大きく背伸びをした。陽の光が柔らかく差し込む作業場には色とりどりの薬瓶が並び、そこには美しい色合いの液体が静かに揺らめいている。その光景は彼の努力と成長をまるで祝福するかのように輝いていた。
「よかったら夕飯、食べていく?」
そうアステルが声をかけるとケルヴィンは少し戸惑いながらも「いえ、結構です」と静かに答えた。彼の返事にアステルは少し残念な気持ちになりつつも今日の分の報酬を渡す。
「そう……じゃあ、また明日もよろしくね」
アステルはケルヴィンを家の外まで送ろうとしたが彼はさっさと一礼をして走り去ってしまった。
「お母さんただいま~!」
その直後、すれ違いでステラが帰宅すると元気な声が響き渡り、ステラは三つ編みを揺らし、母に向かって真っ先に飛びついてきた。送り迎えには馬車を雇っておりステラはそれに乗って学校に行って、帰ってくるのだ。
「おかえり、今日はどうだった?」
「うん!ちゃんとお勉強してきた!」
アステルが尋ねるとステラは目を輝かせながら今日の出来事を答える。その笑顔を見るだけでアステルは嬉しくなった。
「…………」
ふと、アステルはケルヴィンがじっとこちらを見ていたのに気がついて。「どうしたの?忘れ物?」と尋ねると彼は「なんでもありません」と言いながら後ろを向いて帰ってしまった。
「あの人……怒ってたの?」
「ううん、緊張していたのよ」
ステラは少し不安そうな顔をしたのでアステルは優しく微笑んで「大丈夫よ」と頭を撫でた。
「キャロ、遊んで!」
「はい。わかりました」
ステラは近くで庭の掃除をしていた兎獣人のキャロラインに声をかけると彼女は嬉しそうに返事と返し、ステラの荷物を持ちながら家の中に入っていく。
(仲良くなったのね……)
アステルはほほえましい気持ちでその様子を見つめた。以前は距離を置いていたはずのステラが今では自分からキャロラインに声をかけている。そんな娘の成長を見守ることができる喜びをアステルは心から喜びながら一緒に家の中へと入っていった。
◆
夜の静けさの中、家の扉が開く音と共にシリウスが帰ってきた。彼の帰りを待っていたかのように、アステルは心を躍らせる。
ソファの上ではステラが本を開いたままウトウトとまどろんでいる。彼女の長いまつげが微かに上下し、無邪気な寝顔が穏やかな時間を演出していた。
「新しく入った奴はどうだった?」
「うん、あのね」
アステルは今日の出来事を楽しげに話し始める。ケルヴィンの飲み込みの早さや人手が増えたことで仕事が楽になったこと……そして、ステラがキャロラインと仲良くなったことを一つ一つ大切そうに語る。
「それはよかった」
シリウスはその話をじっと聞き、安心したように大きく息を吐いた微笑むが彼の表情には、少しだけ影が差しているように見えた。
「最初は不安だったけど、これなら安定して薬を作り続けることができそう」
アステルがそう言うと、シリウスは穏やかに頷いた。しかし、その笑顔の裏に潜む何かをアステルは見逃さなかった。
「何かあった?」
不思議に思い問いかけるがシリウスはすぐに無表情に戻り「なんでもない」と言い残して荷物を置くために別の部屋に向かってしまった。
その後ろ姿を見送りながらアステルは心に疑問を抱く。何か悩み事でもあるのだろうか?最近、彼の様子に元気がないように感じていたがもう子供ではないし、大人の彼にあまり詮索するのも良くないだろう。
「お父さん……あのね……」
いつの間にかソファの上で横になって眠りに落ちていたステラが寝言をつぶやき、無邪気に寝返りを打った。
アステルは微笑みながら娘の頭を優しく撫でる。柔らかな銀髪が彼女の褐色の頬を優しく包み込み、その表情はまるで天使のようだ。
◆
数日後の昼下がり。シリウスは食堂の一角、窓際の席に腰を下ろし、同僚のアルムと共に食事を口に運びながら先日助けたエルフの少年、ケルヴィンのことを話し始める。
「へー、あの助けたエルフの小僧を弟子にしたのか」
「そうだ。素直で飲み込みも早いそうだ」
アルムが興味深そうに問いかけるとシリウスは淡々と答える。
「でも、あのエルフはダークエルフが嫌いだろ?大丈夫なのか?」
「それは問題ないそうだ」
シリウスは心配を振り払うように言った。アステルが大丈夫だと明言しているのだから信じていいはずだ。
だが、胸の奥に少しの不安が残る。「アステルに余計なことをしないだろうか?ステラと喧嘩しないだろうか?」とそんな考えが頭をよぎるが、もう全員が決めたことだ。後は見守るしかない。
(相手は子供だ……心配しすぎるのも良くないな)
「ところで、ステラは薬師になるのか?」
アルムが突然別の話題を切り出すので「わからない」とシリウスは正直に答えた。アステルによればステラは純血のエルフではないため母と同じような薬師にはなれないだろう。ただ、普通の薬剤師にはなれるかもしれない……と。
「ステラは愛らしいだけではなく、すこぶる頭が良いからな。薬師だけでは留まらないだろう」
「相変わらず親バカすぎて気持ち悪いな」
シリウスは普段は浮かべない笑みを浮かべながら娘を褒めるとアルムが引きつった顔でからかうように笑う。
「あのー……すみません」
それから食事が終わるまでステラの将来について熱く語っていると背後からふいに声をかけられた。
「あ、どうも」
振り向くと、先日出会った冒険者の男、リョウイチが立っていた。彼の隣には一見性別がわからない、淡いピンクのチュニックに身を包んでいる琥珀色の瞳に黒毛の兎獣人の子供が寄り添っている。
「この前は本当に失礼しました」
「いや……」
リョウイチが頭を下げるとシリウスは無表情で短く返事した。
「なんかあったのか?」
「妻が勝手に酷いことを言ってしまって……ああ、今はここにいませんからご安心を」
アルムが尋ねるとリョウイチは苦笑いを浮かべて答えた。彼の表情には申し訳なさが滲んでいる。前、会った時は彼の隣には妻のエルフいたが今日は彼女の姿が見当たらなかった。
「エルは宿屋で大人しく待ってるから……」
子供の兎獣人がぼんやりとした表情で大きな耳が揺らしながらシリウスにそう告げる。
「ああ、こっちは娘のコルルです」
「娘……?」
リョウイチがコルルの肩に手を置いて紹介する。それに対してシリウスは疑問を抱く。人間とエルフの間に獣人が生まれるわけがない……ということはこの兎獣人の少女は養女なのだろう。
「それとお尋ねしたいのですが、この国には獣人用の病院や医者はいますか?」
「一人いるけど今は隣国に行っているぜ」
「そうですか……」
リョウイチが不安そうに訊ねるとアルムが答えたがリョウイチの表情が曇る。獣人専門の医者は王都にいるが今は隣国で獣人の流行り病の救援に駆り出されているため、帰ってくるのはいつになるかわからない。
「何かあったのか?」
「コルルが体調を崩してしまいまして……僕達では理由がわからないんですよ」
獣人と人間では体の作りが全く違うため病気になった場合その対処法がわからないことが多い。
「そんなら手紙でも送ってやるよ。早く帰ってこいって」
「いえ、そこまで急いではいないので大丈夫です。ありがとうございました」
アルムが提案するがリョウイチは深々と頭を下げてコルルを連れて別の席へ向かっていった。その背中には、不安を抱えた父の思いが見え隠れしていた。
「よかったら夕飯、食べていく?」
そうアステルが声をかけるとケルヴィンは少し戸惑いながらも「いえ、結構です」と静かに答えた。彼の返事にアステルは少し残念な気持ちになりつつも今日の分の報酬を渡す。
「そう……じゃあ、また明日もよろしくね」
アステルはケルヴィンを家の外まで送ろうとしたが彼はさっさと一礼をして走り去ってしまった。
「お母さんただいま~!」
その直後、すれ違いでステラが帰宅すると元気な声が響き渡り、ステラは三つ編みを揺らし、母に向かって真っ先に飛びついてきた。送り迎えには馬車を雇っておりステラはそれに乗って学校に行って、帰ってくるのだ。
「おかえり、今日はどうだった?」
「うん!ちゃんとお勉強してきた!」
アステルが尋ねるとステラは目を輝かせながら今日の出来事を答える。その笑顔を見るだけでアステルは嬉しくなった。
「…………」
ふと、アステルはケルヴィンがじっとこちらを見ていたのに気がついて。「どうしたの?忘れ物?」と尋ねると彼は「なんでもありません」と言いながら後ろを向いて帰ってしまった。
「あの人……怒ってたの?」
「ううん、緊張していたのよ」
ステラは少し不安そうな顔をしたのでアステルは優しく微笑んで「大丈夫よ」と頭を撫でた。
「キャロ、遊んで!」
「はい。わかりました」
ステラは近くで庭の掃除をしていた兎獣人のキャロラインに声をかけると彼女は嬉しそうに返事と返し、ステラの荷物を持ちながら家の中に入っていく。
(仲良くなったのね……)
アステルはほほえましい気持ちでその様子を見つめた。以前は距離を置いていたはずのステラが今では自分からキャロラインに声をかけている。そんな娘の成長を見守ることができる喜びをアステルは心から喜びながら一緒に家の中へと入っていった。
◆
夜の静けさの中、家の扉が開く音と共にシリウスが帰ってきた。彼の帰りを待っていたかのように、アステルは心を躍らせる。
ソファの上ではステラが本を開いたままウトウトとまどろんでいる。彼女の長いまつげが微かに上下し、無邪気な寝顔が穏やかな時間を演出していた。
「新しく入った奴はどうだった?」
「うん、あのね」
アステルは今日の出来事を楽しげに話し始める。ケルヴィンの飲み込みの早さや人手が増えたことで仕事が楽になったこと……そして、ステラがキャロラインと仲良くなったことを一つ一つ大切そうに語る。
「それはよかった」
シリウスはその話をじっと聞き、安心したように大きく息を吐いた微笑むが彼の表情には、少しだけ影が差しているように見えた。
「最初は不安だったけど、これなら安定して薬を作り続けることができそう」
アステルがそう言うと、シリウスは穏やかに頷いた。しかし、その笑顔の裏に潜む何かをアステルは見逃さなかった。
「何かあった?」
不思議に思い問いかけるがシリウスはすぐに無表情に戻り「なんでもない」と言い残して荷物を置くために別の部屋に向かってしまった。
その後ろ姿を見送りながらアステルは心に疑問を抱く。何か悩み事でもあるのだろうか?最近、彼の様子に元気がないように感じていたがもう子供ではないし、大人の彼にあまり詮索するのも良くないだろう。
「お父さん……あのね……」
いつの間にかソファの上で横になって眠りに落ちていたステラが寝言をつぶやき、無邪気に寝返りを打った。
アステルは微笑みながら娘の頭を優しく撫でる。柔らかな銀髪が彼女の褐色の頬を優しく包み込み、その表情はまるで天使のようだ。
◆
数日後の昼下がり。シリウスは食堂の一角、窓際の席に腰を下ろし、同僚のアルムと共に食事を口に運びながら先日助けたエルフの少年、ケルヴィンのことを話し始める。
「へー、あの助けたエルフの小僧を弟子にしたのか」
「そうだ。素直で飲み込みも早いそうだ」
アルムが興味深そうに問いかけるとシリウスは淡々と答える。
「でも、あのエルフはダークエルフが嫌いだろ?大丈夫なのか?」
「それは問題ないそうだ」
シリウスは心配を振り払うように言った。アステルが大丈夫だと明言しているのだから信じていいはずだ。
だが、胸の奥に少しの不安が残る。「アステルに余計なことをしないだろうか?ステラと喧嘩しないだろうか?」とそんな考えが頭をよぎるが、もう全員が決めたことだ。後は見守るしかない。
(相手は子供だ……心配しすぎるのも良くないな)
「ところで、ステラは薬師になるのか?」
アルムが突然別の話題を切り出すので「わからない」とシリウスは正直に答えた。アステルによればステラは純血のエルフではないため母と同じような薬師にはなれないだろう。ただ、普通の薬剤師にはなれるかもしれない……と。
「ステラは愛らしいだけではなく、すこぶる頭が良いからな。薬師だけでは留まらないだろう」
「相変わらず親バカすぎて気持ち悪いな」
シリウスは普段は浮かべない笑みを浮かべながら娘を褒めるとアルムが引きつった顔でからかうように笑う。
「あのー……すみません」
それから食事が終わるまでステラの将来について熱く語っていると背後からふいに声をかけられた。
「あ、どうも」
振り向くと、先日出会った冒険者の男、リョウイチが立っていた。彼の隣には一見性別がわからない、淡いピンクのチュニックに身を包んでいる琥珀色の瞳に黒毛の兎獣人の子供が寄り添っている。
「この前は本当に失礼しました」
「いや……」
リョウイチが頭を下げるとシリウスは無表情で短く返事した。
「なんかあったのか?」
「妻が勝手に酷いことを言ってしまって……ああ、今はここにいませんからご安心を」
アルムが尋ねるとリョウイチは苦笑いを浮かべて答えた。彼の表情には申し訳なさが滲んでいる。前、会った時は彼の隣には妻のエルフいたが今日は彼女の姿が見当たらなかった。
「エルは宿屋で大人しく待ってるから……」
子供の兎獣人がぼんやりとした表情で大きな耳が揺らしながらシリウスにそう告げる。
「ああ、こっちは娘のコルルです」
「娘……?」
リョウイチがコルルの肩に手を置いて紹介する。それに対してシリウスは疑問を抱く。人間とエルフの間に獣人が生まれるわけがない……ということはこの兎獣人の少女は養女なのだろう。
「それとお尋ねしたいのですが、この国には獣人用の病院や医者はいますか?」
「一人いるけど今は隣国に行っているぜ」
「そうですか……」
リョウイチが不安そうに訊ねるとアルムが答えたがリョウイチの表情が曇る。獣人専門の医者は王都にいるが今は隣国で獣人の流行り病の救援に駆り出されているため、帰ってくるのはいつになるかわからない。
「何かあったのか?」
「コルルが体調を崩してしまいまして……僕達では理由がわからないんですよ」
獣人と人間では体の作りが全く違うため病気になった場合その対処法がわからないことが多い。
「そんなら手紙でも送ってやるよ。早く帰ってこいって」
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