シークレットベイビー~エルフとダークエルフの狭間の子~【完結】

白滝春菊

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ダークエルフの誘惑編

二度目の祝福

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 誕生日の祝いの宴はまるで色とりどりの花が咲き誇るような活気に満ちていた。家の中には笑い声が響き渡り、テーブルには美味しそうな料理が並べられ、楽しげな会話が交わされている。今日の主役のステラはひときわ輝いていた。

 成長した彼女の笑顔はいつも以上に無邪気で、心からの喜びが溢れていた。学校の友人たちが集まり、プレゼントを渡しては一緒に笑い合い、時折照れながらも誕生日の祝福を受けるその姿はまさに愛される存在そのものだ。

「おめでとう」

 ケルヴィンが大きな袋から人形を取り出し、それをステラに手渡した。その人形は銀色の長い髪を持ち、目はまるで宝石のように赤く輝き、表情はどこか柔らかく穏やかなものであった。ステラはその人形を手に取ると、目を輝かせる。

「わぁ、お姫様みたい! ありがとう、ケルヴィン!」

 その嬉しそうな笑顔を見て、ケルヴィンも穏やかな微笑みを浮かべる。

「妹が欲しいって言っていたからね」
「あ、本当に『妹』を買ってきたんだ」

 息子を抱いているカレンが軽く笑いながら、他の参加者たちと共にその微笑ましいやりとりを見守っていた。

「あらら、ケルヴィンさんと被っちゃいました」

 次にキャロラインが美しい箱から金髪の人形を取り出し、ステラに手渡す。その人形は輝く金色の髪を持ち、澄んだ青い瞳が印象的だ。金色の髪が、まるで太陽のように眩しく輝いている。ステラはその人形を両手で受け取ると、顔をほころばせながら言った。

「キャロ、ありがとう! この人形もかわいい!」

 その言葉を聞いてキャロラインは満足げに微笑み、ステラが喜ぶ姿に安心した様子でうなずく。二つの美しい人形を大切そうに抱きしめながら、ステラの目はきらきらと輝いていた。

 その様子を見守るアステルはしばし立ち尽くしていた。ステラに愛情を注がれ、笑顔でいるその姿を見て、心からの幸せが自分の中にも広がっていくのを感じていた。
 どんなに辛くても、どんな困難が待っていようとも、こうした瞬間があるからこそ希望を失わずに前に進めるのだ。

 ◆

 誕生日の宴が終わり、招待客たちが帰った後、家の中は静けさを取り戻していた。空気が冷たく感じられる夜、アステルはひとり庭に出て、満天の星空を見上げていた。彼女の周りには、柔らかな月明かりが降り注ぎ、まるで世界全体が静かに息を呑んでいるかのような穏やかなひとときが広がっていた。

 庭の木々の間にひときわ目立つ枝があり、そこにはフクロウのヴァンが静かに止まっている。アステルはその姿を見上げながら、優しく声をかけた。

「ヴァン、おいで」

 すると、ヴァンは羽を広げると、静かにその身を空に浮かせ、音もなくアステルの足元に降り立った。その動きはまるで、夜の風のように滑らかで神秘的だ。

「最初に報告するならやっぱりあなたがいいのかしら、それとも……」

 アステルは静かに呟きながら、ヴァンの頭を撫でていた。彼女の心に浮かぶ思いはまだ整理できていないのだろう、言葉が静かに漏れる。それに答えるように背後から声が響いた。

「アステル」

 その声に振り返るとシリウスが立っていた。彼の顔にはほんの少しの不安が浮かんでいたが、すぐにその表情は柔らかなものに変わる。

「何かあったの?」
「いや、ステラを寝かしつけた後、アステルがいないことに気がついただけだ」

 心配をするシリウスに微笑みかけ、アステルはゆっくりと立ち上がった。彼女の目には穏やかな気持ちが宿っている。

「少しだけ、空を見て落ち着きたかっただけよ。まだ緊張しているの?」

 アステルの言葉に、シリウスはほんの少し照れたように笑うと、彼女の隣に静かに立った。その姿は、すでに安堵と安心の色を帯びていた。
 だが、シリウスはしばらく黙っていた後、思いを込めるように口を開いた。

「誕生日が苦手だったんだ」
「え……?」

 その言葉にアステルは驚き、シリウスを見つめた。シリウスは一瞬、言葉に詰まりながら、静かに空を見上げる。そこには大きな満月が輝き、彼の顔に憂いを帯びた影を落としていた。

「俺の誕生日を祝っていた時に……両親が殺された」

 その言葉にアステルは目を見開いて息を呑んだ。思いもよらない過去の痛みがシリウスの言葉の中に感じられ、アステルも辛くなる。彼の表情はどこか遠くを見つめるようで過去に縛られたように感じられた。

「ごめんなさい、気づかなくて……」

 思い返すと昔からシリウスの誕生日を祝う度に彼は遠慮している様子があった。今までは恥ずかしがっているのかと思っていたが、悲しい過去を聞いてしまったアステルは己の無神経さに今さら後悔をする。

「俺が黙っていただけだ。アステルは何も悪くない」

 シリウスはふう……と息をついた。満月の輝きが彼の肩に優しくかかる。しばらくの沈黙の後、シリウスは静かに話を続けた。

「今日は嬉しい日だった。ステラが喜んでくれて、誰かに祝ってもらえる姿を見られたことが本当に嬉しかった」 

 シリウスの表情には間違いなく喜びが浮かんでいた。ステラがこの世に生を受け、無事に成長していることを共に祝える。それだけでシリウスは心から幸せになれた。

 アステルはしばらくその顔を見つめた後、ゆっくりと静かな声で話しかけた。

「私も言わないといけないことがあるの」

 シリウスはその言葉に反応し、アステルの方をじっと見つめた。彼女は深く息を吸い、そして、決意を固めたように言葉を続けた。

「妊娠、したの」

 シリウスはその言葉に驚き、目を大きく見開いた。しばらくその場に立ち尽くし、言葉を探すようにアステルの顔を見つめていた。
 やがて、彼の顔に驚きとともに、嬉しさが広がり始める。そして、アステルを優しく抱きしめながら、柔らかな笑みを浮かべた。

「ありがとう……」

 その言葉に込められた喜びと安堵は、シリウスの胸をいっぱいにしていた。ステラを授かったことを知ったとき、彼はアステルの隣にはいなかった。もし知っていれば、片時も離れずにアステルの傍にい続けたかったと、彼は深く航海をしていた。
 しかし、今は違う、今度は常にアステルの傍で、支え、守ることができる。
 そして何よりも子供が授かったことを聞かされることはこんなにも嬉しいことなのかと改めて実感したのだった。

 しばらくそのままお互いに寄り添った後、シリウスは静かに体を離し、アステルのお腹を優しく撫でた。その手のひらに伝わる温もりにアステルも微笑んだ。これから新しい命が育まれるのだと思うとシリウスの胸の中には幸せが溢れ、全身が満たされていくようだった。

「これからも、一緒に頑張っていきましょうね」

 アステルがその言葉を柔らかな笑顔で告げるとシリウスは何も言わずに頷いた。二人は再び肩を寄せ、並んで夜空を見上げた。
 満天の星々が輝く中、彼らの未来にもまた、たくさんの希望の光が差し込んでいるように感じられた。
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