「お前が死ねばよかった」と言われた夜【新章スタート】

白滝春菊

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役目を果たせ※

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 夜になってもヴィクトル様は屋敷に帰ってくることはなかった。このまま顔を合わせずに済むならその方が気持ちは楽……
 朝まで帰ってこないのかな。仕事か、それとも女遊びが激しかった人だし浮気で今夜も帰ってこないのかも。
 今こうしてる間にはお姉様を失った悲しみを私じゃなくて他の女性で紛らわして。

 ヴィクトル様と顔を合わせることが無くなって安心したけれどベッドの中で一人考える時間があるとまたあの時の声が浮かんできて私を蝕んでいく。
 食事も喉を上手く通らないし、心臓もずっと苦しいから今日は早く寝よう……寝てもあまり眠れないけど……

 お風呂に入ってから昨日とは別の紫色のシルクの夜着に着替え、ベッドに潜り込んで身体を丸めて自分を守るような体制になって目を閉じていた。

 ◆

「ユミル」

 頑張って寝ようとして、ようやく眠ることが出来たと思っていたのに急に名前を呼ばれて意識が覚醒する。室内は暗くて誰なのかわからないけどこの声は嫌と言うほどに知っている。
 さっきまで胸が苦しくて上手く眠れなかったのにその人のおかげで完全に覚めてしまった。

「っ……お、おかえりなさいませ……」

 半身を起こしながら震える声でベッドの横に立つ人に向かって出迎えの言葉を無理矢理出すとベッドの上に乗り込んできたヴィクトル様によって私の体が押さえつけられた。また『お前が死ねばよかった』と言われるのではないかと恐怖で身体が固まる。

「あ、あの……うっ……」

 ヴィクトル様が私の顎を持って無理矢理顔を合わせさせると暗闇に目が慣れてきて、ギラリと光る青い瞳で私を見つめている。

「大人しくしていろ」

 鋭い目付きでそう言われ、私は怖くなってぎゅっと目を閉じるとヴィクトル様の手が私の夜着の胸元に伸びてくるとびっくりしてその手を掴んで抵抗するとヴィクトル様に睨まれた。

「……おやめ、ください……」

 目が合った瞬間に竦み上がる。怖くて仕方がないのだ。もしかしてぶたれたり蹴られたりするのかもしれないと思うと抵抗すらできない。
 ヴィクトル様は何も言わずに私の夜着の胸元を左右に引くとボタンが勢い良く外れ、露出した肌にヴィクトル様が触れてくる。

「や、やめて……おねが……」
「役目を果たせ」

 冷たい言葉を投げられながら私の首元にヴィクトル様が顔を埋めてきてざらりとした舌が這う。
 役目。子供を産むことだけを望まれている。子供を産む道具として抵抗する事を止めないと。

 ヴィクトル様が首元から顔を離したと思ったらまた唇にヴィクトル様の唇が重なった。嫌いな女とキス、できるんだ……私だったら嫌いな人とキスなんてできないけどヴィクトル様は我慢ができる大人なんだ。

「ん……っ……」

 口の中にヌルりと舌が入ってきて息が上手くできない。ヴィクトル様は何度も角度を変えては舌を絡ませてきて私から酸素を奪っていくように貪る。

 呼吸ができなくて苦しいはずなのに体がどんどんと熱くなって、なんで?こんなに怖いことをされているのに……私は自分の感覚が信じられずに戸惑うばかりだった。

 唇が離れると私の首筋にヴィクトル様が吸い付くように口付けをした後、肌を強く吸われてちりっとした痛みが襲ってきた。

 痛くて嫌なのにヴィクトル様の行為は終わる気配がない。この行為の意味がわからないけれどヴィクトル様の顔が見えないし聞くこともできなくて怖い。

「い、や……」

 胸に触れるヴィクトル様の手に反応をして自分の体の熱が増していく。僅かな膨らみしかない貧相な胸なんて触っても何も楽しくないよ……私が男の人だったらもっと大きい胸の方がいいと思う。
 それでもヴィクトル様は私の胸を両手で撫でるように触りながらまた首に顔を埋めている。触れられている場所が熱いし、吐息がかかってぞわぞわする。

「っ……!」

 このよくわからない行為が早く終わらないかなと、この感覚に気を取られていると今度は左の胸を口に含まれて熱い舌の感触が直に伝わってくる。音を立てて吸われてびくりと体が反応してしまう。
 異性に触られたのは勿論だけど赤ちゃんみたいに舐められたことなんてないからこんな時どうしたらいいのかわからない。
 柔らかかった胸の先はだんだん固くなって、それを唇で摘まれ、舌で舐られるとくすぐったいような変な感じがする。

「んんっ……」

 ある程度弄った後は口を離して終わるのかと思ったけどヴィクトル様はもう片方の右の胸に吸い付いた。
 左の胸と同じように吸われたり意地悪く軽く噛まれたりして声が出てしまうのが恥ずかしくて必死に歯を食いしばるしかなかった。

 怖いのか、嬉しいのか、気持ち悪いのか、気持ちいいのか、わからない。ただ、もっとしてほしいと思ってる自分がいるなんて、ヴィクトル様をほんの少し、まだ好きな私がいるなんて、認めたくなくて自分の感情なのにどうにかなりそう。
 嫌なのにヴィクトル様に触れられて感じている自分が意味がわからなくてしょうがない。内心、どこかで期待でもして……

『お前が死ねばよかった』

 今こうして二人きりでいるとあの時のヴィクトル様の言葉が頭に響いて胸が苦しい。
 もう触られたくないし、消えてしまいたいのに胸に触れていた手がお腹の辺りを撫で回した後にヴィクトル様が私に命じてくる。

「足を開け」

 よくわからないまま、素直に言うことを聞いてゆっくりと自分の足を開くとはしたなくも下着を何かで濡らしている感覚に顔に熱が集まった。
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