「お前が死ねばよかった」と言われた夜【新章スタート】

白滝春菊

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裏切り者※

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 夜、寝室の窓から見える月はいつもと変わらず静かに輝いていた。その穏やかな光が部屋に差し込み、私はその光に包まれるようにしばらく静かに窓辺に立っていた。心の中は色々な思いでいっぱいだった。

 本当はヴィクトル様に愛されることを望んでいた。
 あの夜にミーティアお姉様の代わりに死ねばよかったと言われて、その言葉を受け止めることができなかった。あの時、私の心は深く傷つき、どうしていいのかわからなくなってしまった。

 でも、今は新しい道を歩み始めている。マクセル様はヴィクトル様とは全く違う人だ。まるでミーティアお姉様のように優しく、思いやりを持って接してくれる。マクセル様となら過去を乗り越えようとする気持ちが、少しずつ芽生えてきている。

 窓から見える月の光が、静かに私を見守っているように感じられた。月は何も言わずにただ照らしてくれる。私も、この先どうすればいいのか答えを見つけることができるのだろうか?

 ◆

 私はベッドの上でキスを交わしていた。キスは優しくて甘い味がする。
 彼に触れられ、次第に身体の力が抜けていくのを感じた。指先が私の肌を優しく撫で、そのたびに声が漏れてしまう。

「ユミル……」

 彼の囁き声が耳元で聞こえ、私の身体はさらに熱を帯びている。彼は私の首筋に口づけをし、頬を撫でていた手は少しずつ下の方へと移動していく。そして、その手が私の胸に触れた瞬間、私は身体をよじりそうになった。

「あ……んっ」

 彼の手が私の胸の先端に触れた瞬間、全身が震えあがるほどの快感に襲われた。その強い刺激に私は両手を口に当て、漏れそうになる声を必死に抑えた。

「ユミル……声聞かせろ」

 彼は耳元に顔を近づけて囁いた。その声は切なげで、どこか妖艶な雰囲気さえ漂わせて、自然と頷きたくなってしまい、彼の求めに応じてあげたいという気持ちが強くなり、ゆっくりと口から手を放した。

 彼は私の胸に顔を近づけ、先端を口に含んだ。舌で優しく愛撫し続け、そのたびに私は声で応えてしまった。彼の愛撫はとても丁寧でまるで壊れ物を扱うかのように優しかった。

 それから彼は私を強く抱きしめた。その温もりを感じながら、私は彼の広い背中に手を回した。そして、彼の胸の中で目を閉じた。私は彼に触れられることで、自分が女であることを実感できる。

「ユミル……」

 名前を呼ぶ声に私はただ静かに応じたくなる。身体の奥深くで何かが震えるような感覚が広がり、息を呑んでその声に耳を傾けた。
 ふと目を閉じると身体がどこか懐かしい感覚を押し込まれて、心の奥で忘れかけていたあの感情が蘇ってきた。

「ヴィクトル様……私は……んぁっ……」

 私に覆い被さるヴィクトル様の重みと熱を感じる。身体は忘れていなかった。この感覚を。その熱さを感じながら、私は身を委ねた。

 またヴィクトル様は私に早く俺の子を孕めと言って、腰を動かす。
 早く妊娠して、ヴィクトル様に捨てられないようにしないと、ミーティアお姉様の代わりになれない。

 お姉様の代わりなんだから……だから……もっと頑張らないと……

 私は必死にヴィクトル様を受け入れた。少しでもこの人を満足させるために。
 奥深くに突き立てられる感覚と、内側からこみ上げてくる快感を忘れることができない。ヴィクトル様が喜んでくれるようにもっと気持ちよくなってもらえるように頑張るんだ。

 私は……ミーティアお姉様の代わりになれるよう……頑張らないと……

 ◆

 目を覚ますと部屋の中は真っ暗で、まだ夜の気配が漂っていた。でも、隣を見ても誰もいない。
 私はぼんやりと目を細め、空気の冷たさに身をすくめながら、ふと窓のカーテンの隙間を見た。
 そこから、柔らかな光が差し込み、外はすでに明るくなっているのがわかる。鳥の鳴き声が心地よく響き、朝が始まっていることを知らせていた。

 再び目を閉じ、深い息をつく。すぐに浮かんだのはあの夢のことだった。ヴィクトル様に抱かれる夢。
 私の心のどこかがそれを求めていたからだろうか。私はもうマクセル様の婚約者でもうすぐ結婚するというのにどうしてこんな夢を見てしまうのだろう。

 胸の中に答えの出ない疑問が渦巻く。私はゆっくりと起き上がり、ベッドの端に座った。膝を抱えて、顔を伏せる。
 どうしてこんなに自分の中で迷っているのか、どうしてこんなにも欲深いのか。
 酷い言葉を投げつけてくるヴィクトル様のことを忘れて、マクセル様と幸せな家庭を築かねばならないのに私の心は未だに彼の影に囚われている。

「裏切り者」

 そう呟いて、自分を責める気持ちが湧き上がる。
 まだヴィクトル様に縛られている。彼に抱かれることを夢に見てしまう自分が醜くて、情けなくてたまらない。

 顔を上げ、窓の外を眺める。朝の光が少しずつ強くなり、日差しが部屋の中に差し込んでくるのを感じた。その光を受けて、私は心を少しだけ落ち着けようとする。
 マクセル様の妻になるという現実が近づいているのに、それを素直に受け入れられずにいる自分が、大嫌いだ。
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