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20 生きていくという事(※ジョゼル視点)
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俺の名前はジョゼル・ルーク。
ルーク子爵家の嫡男として生まれた俺は、今は王宮騎士団に入り日々鍛錬を続けている。
我が家は子爵家なのだが、偶然にも俺の母親が、王妃殿下と同時期に俺を出産したこともあって、出産したばかりのディミトリ殿下の乳母として王家に召喚されたのだ。
生まれたばかりのディミトリ殿下のお世話をする為に王宮で日々を暮らす母親と離され、生まれたばかりの俺を子爵家の屋敷で使用人が育てるという図式は王妃殿下のお気に召さなかったらしい。
程なくして、俺もディミトリ殿下と兄弟のように王宮で一緒に育てられることとなった。
勿論、臣下としての立場を忘れないようにと母親からは口を酸っぱくして『立場をわきまえる』ことを言われ続けた。しかし、同じように王宮で暮らす大勢の臣下の子供たちとは一線を画して、ディミトリ殿下は俺を優遇し、お傍に置いていただいたのだから、感謝しかない。
俺にとって――というか、このアーデルハイド王国の国民にとって幸いなことに、ディミトリ殿下は幼いながらも非常に聡明で優秀な子供だった。
常に平等で真摯に物事に当たる姿勢や、学力の高さといった内面の素晴らしさもさることながら、王妃殿下に似た金髪碧眼の輝く美貌は、全ての国民を虜にしたと言っても過言では無いだろう。
これ程に素晴らしい殿下を目の当たりにして、将来のアーデルハイド国王陛下となられる方なのだと思えば、俺も将来は殿下の御身をお傍で守る王宮騎士になりたいと願うのは必然だったのだ。
だから俺は苦手な座学よりも得意な剣術にどんどんのめり込んでいった。
いつかは殿下のお傍で、王宮の騎士団長となって、彼の為だけにこの身を捧げることが出来たら…なんて、夢見るぐらいは許されるだろう?
そんな夢に支えられて、厳しい鍛練を熟していたある日、市井から一人の少年が入団してきた。
「初めまして、コリンです。王都にあるイッシャ―通りの鍛冶屋が僕の家です」
貴族令息のように、日頃から剣術を学んでいる者以外が、騎士団の厳しい入団試験に合格できることは稀で、その少年が如何に努力を重ねて入団してきたのかを、本人の口からではなく掌にある無数の血豆が教えてくれた。
「俺は王宮騎士団に入って、この国も家族も守りたいんだ。そしていつかは王宮騎士団の団長になってみせる」
大口を叩くだけあって、コリンは努力家で鍛錬が終わっても自主練習を夜遅くまで続けるような奴だったから、俺たちは直ぐに意気投合して仲良くなった。
馬が合った俺たちは『いつか二人で騎士団長と副団長になって殿下をお守りしような』と夢を語り合う――心友ともいえる存在だった。
だから、騎士団の模擬試験で俺がコリンの未来を奪ってしまった時の絶望感は凄まじかった。
王宮騎士団に入って、初めての真剣を使った実戦形式の模擬試験は、通常使用している木剣などとは、けた違いの緊張感と不安感をはらんでいた。
致命傷を与えないために、胴体と頭には防御材を着用していたが、いくら急所が守られていたとしても当たりどころが悪ければ死ぬことはある。
そんな当たり前の事を目の当たりにした俺たちは、動揺を隠しながら正々堂々と戦った――つもりだった。
大きな傷を付けずに倒したいと、足元ばかり狙っていた俺は、コリンが体勢を崩した瞬間を除けることが出来ず、彼の右足の腱に深く刃を突き立ててしまったのだ。
その時のコリンの絶叫と、彼の足から流れ出る鮮血が、瞼を閉じても忘れられない程に鮮明で、俺はその場で情けなくも昏倒したのだった。
その後、何度も繰り返しコリンの命が消える悪夢を見続けた俺は、一時期恐怖のあまり騎士団から距離を置いて――その間に、コリンが騎士団を退団したのだと後で聞かされた。
(何で…俺たちは一緒に殿下を支えるって約束したじゃないか…⁈)
呆然とする俺に、指南役が告げた現実は『模擬戦で受けた足の傷が酷く、彼はもう騎士として戦うことが出来ない』という残酷なもので、コリンは俺に恨みごと一つ言わずに、忽然と姿を消してしまったのだ。
(コリンにとって俺は疫病神なんだ。アイツの夢も未来も全部俺が奪ってしまった…)
絶望から、今更コリンの元へ謝罪に向かうことも出来ず “一緒に殿下をお守りしよう”と二人で語った夢を諦める事も出来なかった俺は、一層鍛練に励んだが、真剣を使って戦う事を極度に恐れるようになってしまった。
またコリンのような不幸な目に遭う者が現れたらと思うだけで、冷たい汗が噴き出し、激しい動悸にみまわれる。
何度戦っても慣れる事の無い真剣の重さと、鈍く光る刃を見ているだけで、自分が如何にあの事件に囚われているのかを戦うたびに再確認させられるのが辛い。
瞼を切られ、鮮血がほとばしるのを感じても、コリンはあの時もっと痛く、苦しかったのだと思えば、俺をもっと傷つけて苦しめて欲しいといっそ懇願したいくらいだった。
模擬戦で優勝したと周りに囃し立てられても、只々虚しさが募るだけで、俺は一人になりたかった。――コリンに贖罪するために…。
ぼんやり空を見上げながら気に凭れて、悔やみ続けていた俺の目の前に、いきなり現れたのはカールだった。こいつは男のくせに妙に綺麗な顔をしていて、ディミトリ殿下のお気に入りの男だ。
(不味い…泣いているのが見られたか…?)
薄く膜の張った瞳を見られたくなくて、慌てて顔を背けると、カールは何故か苛立ったように瞼の血を拭って治療を施した後で、『泣くほど腹が減っているんだろ?』と自分の手作りだというクッキーを口にねじ込んで来たから驚いた。
コイツの飄々とした雰囲気に流されるように、結局、俺は全ての事情を話してしまった。
でも、カールは慰めるどころか、無言で隣に座ったきりいつまでも話しかけてこない。
(…コイツは何を考えているんだろう…?)
上手いクッキーを咀嚼しながら、心地いい日差しを浴びていると、俺の涙もいつの間にか止まっていた。すると、カールは大きなため息を吐いてから「これはおせっかいだから」と口を開いた。
「ジョゼル様はさ、人を怪我させたくないと怯えるのは自分の心の弱さだと言ったけれど、そんなの当たり前の話だろう?自分のせいで友人が怪我をして、傍から姿を消したのなら、お優しいジョゼル様が気にならないはずが無い。たとえ、それが身勝手な後悔だったとしてもさ」
(…普通、傷心で苦しんでいる友人の傷口に塩を塗り込むような事を言うか?)
「…身勝手な後悔だと…?」
そのキツイ物言いに、思わず怒りに震えながら睨むと、カールは平気な顔をして頷いている。
「実際、自分勝手に悔やんでいるだけじゃないか。じゃあその友人が逆の立場になって、ジョゼル様に致命的な傷を負わせた時、『お前のせいで俺の一生は台無しになった』と相手を詰り苦しませたいと思うのか?そんな風にしか相手の心に残ることが出来ない程、ジョゼル様は心の弱い人間なのかって聞いているんだよ」
そう…本当の俺は心の弱い人間なのだ。普段は騎士然として虚勢を張っているけれど、一度の傷を恐れて、いつまでも前に進めない臆病者だ。
そんな俺にカールは「コリンに謝れよ」とあっさり告げる。
「いつまで逃げ続けているんだ?清廉潔白で勇猛果敢な騎士様の名折れじゃないの?
今のコリンが不幸なのか、幸せなのかをしっかりと見極めて来い。もしコリンから詰られて土下座する羽目になったとしたら、私も一緒に土下座してやるから心配するな」
そうか…俺はずっとコリンに目の前で詰られるのが怖くて逃げていたんだな…そう思うと、何故かしっくりきた気がする。
「止まった時間を動かすために、ジョゼル様はコリンに会いに行くんだよ。彼が今困っていたなら手を差し伸べてやれば良いし、勝手な妄想で傷つくよりも余程、建設的だと思うけどな」
妄想か――俺が恐れていたコリンは“俺の想像の産物”なのだ。そう考えると、俺は長い事何を恐れていたのかと馬鹿馬鹿しくなってくる。
カールと話した後、気持ちが吹っ切れてからの俺の行動は早かった。
コリンが自己紹介していた時に言っていた、王都のイッシャ―通りには確かに鍛冶屋が存在していて、そこでコリンと俺は無事に感動の再会を果たすことが出来たのだ。
「この馬鹿野郎‼俺はずっとジョゼルが会いに来てくれるのを待っていたのに、来るのが遅いんだよ‼」と理不尽極まりない事情で殴られた俺は、平身低頭コリンに怪我をさせたことを詫びた。
それに対するコリンの反応は「えっ?今更?確かにあの時は絶望したけどさぁ、怪我は自己責任だし、今は親父以上の鍛冶師になって凄い武器を作ることが俺の目標だから」と笑われたのだから、俺の衝撃は計り知れないだろう?
「俺は平民でジョゼルは貴族様だから、お前が来てくれないと王宮に伝手も無いし、邸宅にも行けないから会えないんだよな。本当はもっと早くお前と話をしたかったんだからな」
“だから今日は最高の日だ”と笑うコリンを見ていたら、自分のバカさ加減に呆れるしかない。
「俺、いつか鍛冶屋を継ぐのが夢なんだ。何れ、凄い武器を打てたら、ジョゼルに使って欲しいんだ。俺の剣でジョゼルが王太子殿下をお守りすれば、いつかの夢だって叶うだろう?」
身振り手振りで夢を語るコリンは新しい夢まで手に入れて、しかも昔の夢まで叶えようとする強欲な努力家だった。…本当にあの場で立ち止まっていたのは俺だけだったのだ。
“何だよ、本当に俺の妄想だったのかよ”と空を見上げれば、カールと話した日のような青空が広がっていて、思わず笑いが込み上げてくる。
「コリン、俺達幸せになろうな」
『過去に囚われて立ち止まるのではなく、前を向いて歩いて行こう』
そう教えてくれた友人の為にも…。
ルーク子爵家の嫡男として生まれた俺は、今は王宮騎士団に入り日々鍛錬を続けている。
我が家は子爵家なのだが、偶然にも俺の母親が、王妃殿下と同時期に俺を出産したこともあって、出産したばかりのディミトリ殿下の乳母として王家に召喚されたのだ。
生まれたばかりのディミトリ殿下のお世話をする為に王宮で日々を暮らす母親と離され、生まれたばかりの俺を子爵家の屋敷で使用人が育てるという図式は王妃殿下のお気に召さなかったらしい。
程なくして、俺もディミトリ殿下と兄弟のように王宮で一緒に育てられることとなった。
勿論、臣下としての立場を忘れないようにと母親からは口を酸っぱくして『立場をわきまえる』ことを言われ続けた。しかし、同じように王宮で暮らす大勢の臣下の子供たちとは一線を画して、ディミトリ殿下は俺を優遇し、お傍に置いていただいたのだから、感謝しかない。
俺にとって――というか、このアーデルハイド王国の国民にとって幸いなことに、ディミトリ殿下は幼いながらも非常に聡明で優秀な子供だった。
常に平等で真摯に物事に当たる姿勢や、学力の高さといった内面の素晴らしさもさることながら、王妃殿下に似た金髪碧眼の輝く美貌は、全ての国民を虜にしたと言っても過言では無いだろう。
これ程に素晴らしい殿下を目の当たりにして、将来のアーデルハイド国王陛下となられる方なのだと思えば、俺も将来は殿下の御身をお傍で守る王宮騎士になりたいと願うのは必然だったのだ。
だから俺は苦手な座学よりも得意な剣術にどんどんのめり込んでいった。
いつかは殿下のお傍で、王宮の騎士団長となって、彼の為だけにこの身を捧げることが出来たら…なんて、夢見るぐらいは許されるだろう?
そんな夢に支えられて、厳しい鍛練を熟していたある日、市井から一人の少年が入団してきた。
「初めまして、コリンです。王都にあるイッシャ―通りの鍛冶屋が僕の家です」
貴族令息のように、日頃から剣術を学んでいる者以外が、騎士団の厳しい入団試験に合格できることは稀で、その少年が如何に努力を重ねて入団してきたのかを、本人の口からではなく掌にある無数の血豆が教えてくれた。
「俺は王宮騎士団に入って、この国も家族も守りたいんだ。そしていつかは王宮騎士団の団長になってみせる」
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馬が合った俺たちは『いつか二人で騎士団長と副団長になって殿下をお守りしような』と夢を語り合う――心友ともいえる存在だった。
だから、騎士団の模擬試験で俺がコリンの未来を奪ってしまった時の絶望感は凄まじかった。
王宮騎士団に入って、初めての真剣を使った実戦形式の模擬試験は、通常使用している木剣などとは、けた違いの緊張感と不安感をはらんでいた。
致命傷を与えないために、胴体と頭には防御材を着用していたが、いくら急所が守られていたとしても当たりどころが悪ければ死ぬことはある。
そんな当たり前の事を目の当たりにした俺たちは、動揺を隠しながら正々堂々と戦った――つもりだった。
大きな傷を付けずに倒したいと、足元ばかり狙っていた俺は、コリンが体勢を崩した瞬間を除けることが出来ず、彼の右足の腱に深く刃を突き立ててしまったのだ。
その時のコリンの絶叫と、彼の足から流れ出る鮮血が、瞼を閉じても忘れられない程に鮮明で、俺はその場で情けなくも昏倒したのだった。
その後、何度も繰り返しコリンの命が消える悪夢を見続けた俺は、一時期恐怖のあまり騎士団から距離を置いて――その間に、コリンが騎士団を退団したのだと後で聞かされた。
(何で…俺たちは一緒に殿下を支えるって約束したじゃないか…⁈)
呆然とする俺に、指南役が告げた現実は『模擬戦で受けた足の傷が酷く、彼はもう騎士として戦うことが出来ない』という残酷なもので、コリンは俺に恨みごと一つ言わずに、忽然と姿を消してしまったのだ。
(コリンにとって俺は疫病神なんだ。アイツの夢も未来も全部俺が奪ってしまった…)
絶望から、今更コリンの元へ謝罪に向かうことも出来ず “一緒に殿下をお守りしよう”と二人で語った夢を諦める事も出来なかった俺は、一層鍛練に励んだが、真剣を使って戦う事を極度に恐れるようになってしまった。
またコリンのような不幸な目に遭う者が現れたらと思うだけで、冷たい汗が噴き出し、激しい動悸にみまわれる。
何度戦っても慣れる事の無い真剣の重さと、鈍く光る刃を見ているだけで、自分が如何にあの事件に囚われているのかを戦うたびに再確認させられるのが辛い。
瞼を切られ、鮮血がほとばしるのを感じても、コリンはあの時もっと痛く、苦しかったのだと思えば、俺をもっと傷つけて苦しめて欲しいといっそ懇願したいくらいだった。
模擬戦で優勝したと周りに囃し立てられても、只々虚しさが募るだけで、俺は一人になりたかった。――コリンに贖罪するために…。
ぼんやり空を見上げながら気に凭れて、悔やみ続けていた俺の目の前に、いきなり現れたのはカールだった。こいつは男のくせに妙に綺麗な顔をしていて、ディミトリ殿下のお気に入りの男だ。
(不味い…泣いているのが見られたか…?)
薄く膜の張った瞳を見られたくなくて、慌てて顔を背けると、カールは何故か苛立ったように瞼の血を拭って治療を施した後で、『泣くほど腹が減っているんだろ?』と自分の手作りだというクッキーを口にねじ込んで来たから驚いた。
コイツの飄々とした雰囲気に流されるように、結局、俺は全ての事情を話してしまった。
でも、カールは慰めるどころか、無言で隣に座ったきりいつまでも話しかけてこない。
(…コイツは何を考えているんだろう…?)
上手いクッキーを咀嚼しながら、心地いい日差しを浴びていると、俺の涙もいつの間にか止まっていた。すると、カールは大きなため息を吐いてから「これはおせっかいだから」と口を開いた。
「ジョゼル様はさ、人を怪我させたくないと怯えるのは自分の心の弱さだと言ったけれど、そんなの当たり前の話だろう?自分のせいで友人が怪我をして、傍から姿を消したのなら、お優しいジョゼル様が気にならないはずが無い。たとえ、それが身勝手な後悔だったとしてもさ」
(…普通、傷心で苦しんでいる友人の傷口に塩を塗り込むような事を言うか?)
「…身勝手な後悔だと…?」
そのキツイ物言いに、思わず怒りに震えながら睨むと、カールは平気な顔をして頷いている。
「実際、自分勝手に悔やんでいるだけじゃないか。じゃあその友人が逆の立場になって、ジョゼル様に致命的な傷を負わせた時、『お前のせいで俺の一生は台無しになった』と相手を詰り苦しませたいと思うのか?そんな風にしか相手の心に残ることが出来ない程、ジョゼル様は心の弱い人間なのかって聞いているんだよ」
そう…本当の俺は心の弱い人間なのだ。普段は騎士然として虚勢を張っているけれど、一度の傷を恐れて、いつまでも前に進めない臆病者だ。
そんな俺にカールは「コリンに謝れよ」とあっさり告げる。
「いつまで逃げ続けているんだ?清廉潔白で勇猛果敢な騎士様の名折れじゃないの?
今のコリンが不幸なのか、幸せなのかをしっかりと見極めて来い。もしコリンから詰られて土下座する羽目になったとしたら、私も一緒に土下座してやるから心配するな」
そうか…俺はずっとコリンに目の前で詰られるのが怖くて逃げていたんだな…そう思うと、何故かしっくりきた気がする。
「止まった時間を動かすために、ジョゼル様はコリンに会いに行くんだよ。彼が今困っていたなら手を差し伸べてやれば良いし、勝手な妄想で傷つくよりも余程、建設的だと思うけどな」
妄想か――俺が恐れていたコリンは“俺の想像の産物”なのだ。そう考えると、俺は長い事何を恐れていたのかと馬鹿馬鹿しくなってくる。
カールと話した後、気持ちが吹っ切れてからの俺の行動は早かった。
コリンが自己紹介していた時に言っていた、王都のイッシャ―通りには確かに鍛冶屋が存在していて、そこでコリンと俺は無事に感動の再会を果たすことが出来たのだ。
「この馬鹿野郎‼俺はずっとジョゼルが会いに来てくれるのを待っていたのに、来るのが遅いんだよ‼」と理不尽極まりない事情で殴られた俺は、平身低頭コリンに怪我をさせたことを詫びた。
それに対するコリンの反応は「えっ?今更?確かにあの時は絶望したけどさぁ、怪我は自己責任だし、今は親父以上の鍛冶師になって凄い武器を作ることが俺の目標だから」と笑われたのだから、俺の衝撃は計り知れないだろう?
「俺は平民でジョゼルは貴族様だから、お前が来てくれないと王宮に伝手も無いし、邸宅にも行けないから会えないんだよな。本当はもっと早くお前と話をしたかったんだからな」
“だから今日は最高の日だ”と笑うコリンを見ていたら、自分のバカさ加減に呆れるしかない。
「俺、いつか鍛冶屋を継ぐのが夢なんだ。何れ、凄い武器を打てたら、ジョゼルに使って欲しいんだ。俺の剣でジョゼルが王太子殿下をお守りすれば、いつかの夢だって叶うだろう?」
身振り手振りで夢を語るコリンは新しい夢まで手に入れて、しかも昔の夢まで叶えようとする強欲な努力家だった。…本当にあの場で立ち止まっていたのは俺だけだったのだ。
“何だよ、本当に俺の妄想だったのかよ”と空を見上げれば、カールと話した日のような青空が広がっていて、思わず笑いが込み上げてくる。
「コリン、俺達幸せになろうな」
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