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彼女の部屋
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部屋に戻るとみどりさんは無言のまま小走りにキッチンへ向かった。きっと吐くのだろう。介抱をしに彼女についていく。彼女はシンクの縁をつかみ顔を俯かせる。吐いたものが付いてしまわないように、髪の毛を後ろに束ねてあげて、背中をそっとさすると彼女は一度だけ吐いた。
「ごめんね、みっともないとこ見せちゃって」
「別に気にしなくていいよ。僕だって助けてもらったわけだし」
「明日は仕事なの?」
「残念ながら、仕事が入っていないんだ。今は暇な時期だからね。来月になればボチボチ忙しくなってくるんだけど。みどりさんは?」
彼女は質問に答えることなく、自分の吐いたものの後処理をしていた。ハンドソープで手を洗い、マグカップに水を注ぎ、二回うがいをする。暫く沈黙が続いた。
「じゃあ、ぼくはそろそろ……」
「ねえ」
みどりさんが遮る。
「泊まっていってよ」
こちらを向き決意を湛えたような視線を向けた。
「それでこそ、五分と五分ってもんでしょ?」
真剣な眼差しと「五分と五分」という言葉のギャップを可笑しく感じ、思わず笑ってしまった。昨日、介抱してくれたことをいっているのだろう。
「ねえ! 何がおかしいの!」
「ごめんごめん、とくに他意はないんだけどさ。じゃあ、ちょっとコンビニに行ってくるね。丸一日以上着替えていないから気持ち悪くてさ。着替えを買ってくるよ」
みどりさんは黙ってバッグから鍵を取り出し渡した。キッチンライトの薄明かりに照らされた彼女の顔は居酒屋で飲んでいた時とはうって変わって、だいぶ青ざめている。
「シャワー、使ってもいいから。あたし、先に浴びとくね」
落ち着きを取り戻したのかみどりさんは顔をあげてこちらを向く。少し怒っているようにもみえた。
「ありがとう。帰ったら遠慮なく使わせてもらうよ。じゃあ行ってくるね」
彼女がシャワーを浴びるならなるべく時間を空けてから帰るほうがいいのだろう、そう思いながら彼女の部屋を出た。
外に出ると、街の賑わいも幾分落ちつきを取り戻しているように感じた。パチンコ店とゲームセンターのネオンが消えていて、夜は少しだけ闇を取り戻していた。風が涼しくなっている。腕時計の針を確認すると十一時半を過ぎたところだった。終電はまだある。けれども、泊まっていこうと思った。
コンビニを探す足取りのなか、みどりさんと元彼のことを想う。八年の喪失。そんな風に捉えているのだろうか。長い年月の付き合いのなか、色が褪せるようにゆっくりと損なわれていく関係性。よくある話だ。けれども、よくある話だからといって、それを以って喪失感が和らぐわけではないだろう。確かにいえることは彼女は自暴自棄になっている。自分を不幸にしてしまいたい衝動。それは、例えば反抗期の子供の行動に似ている。愛情を求めるが故、愛情を拒み、結果自身を毀損してしまう。幸福を諦めた人間の眼前に現れるのは、甘美な破滅への誘惑。ただ、破滅の先は決して甘くも美しくもないことを自分は知っている。そのことを想うと胸がざわついた。酒を飲まなければならないような、そんな焦燥がまた、頭を擡げる。
激しく、頭を振った。何も考えないようにしよう。「あのこと」は自分ではどうしようもできなかったじゃないか、仕方のないことなんだ。何も考えないようにしようとするといつも弁解の言葉が頭に浮かんでくる。まるでその言葉さえ持ち出せば、自分がかつて産み出してしまった悪意をねじ伏せ、封じ込められるかのように。
深呼吸をして、空を見上げる。月を眺めようと思ったが、雲に隠れていた。
歩みを進めていると、夜に迷う人々を救済するかのように、ぽつりと佇むコンビニエンスストアをみつけた。トランクスと靴下とTシャツと歯ブラシ。買わなければならないもののリストを頭に浮かべる。タオルは借りようと思った。
時計を確認するとここまで凡そ七分。往復で十四分。女性がシャワーに費やす時間が分からなかったが、十四分では短い気がする。少し、時間を潰そう。コンビニに入り、そう思った。
みどりさんのアパートに戻り、借りた鍵を使ってドアを開くと、何だか後ろめたい気持ちになった。部屋はシャンプーと石鹸の匂いがする。明かりは相変わらずキッチンライトが点いているだけで薄暗かった。
「みどりさん、ただいま」
声を掛けたが返事がない。暗さに目が慣れ部屋を見渡すと、みどりさんはローテーブルに突っ伏して眠っているようだった。薄ピンク色のパジャマに着替え、髪の毛は濡れている。
「風邪引くよ、ベッドで寝ないと」
肩を叩いて呼び掛けるがやはり返事がない。本格的に眠っているようだ。
仕方なく、浴室へ行き、バスタオルと洗面器を持ってくる。枕が濡れないようにバスタオルをしき、夜中吐くことがあってもいいように枕の脇に洗面器を置いた。そして、酔い潰れているみどりさんをなんとか持ちあげてベッドに寝かせる。細身とはいえ、大人の女性を持ち上げるのに、なかなか力が要った。
男の力でも女性を運ぶのに骨が折れるのに、自分を運ぶときはきっと、もっと大変だったのだろうと思われる。明日、彼女に改めて礼をいう必要があるなと思った。
シャワーを浴びてコンビニで買ってきた缶ビールを空ける。プシュ、という音が、一瞬だけ静寂を破った。
みどりさんは突然現れた空虚を埋める必要があるのだろう。どんなに強くみえる人間でも、弱くなることがある。弱い人間と強い人間がいるのではなく、弱くなるときがあるのだ。かつて、あかねがそうであったように。
ビールを半分ほど飲む。昨日一日中眠っていたせいで少しも眠くはならなかった。
もし、彼女が自分の傷が癒える間だけでも、僕のことを必要とするならば、必要なだけそばにいよう。そうしなければならない気がした。
残りのビールを飲んでしまい、さて、朝までの時間をどうやって潰そうか、そう考えたとき、読みかけのカミュを思い出した。ローテーブルに置かれたままの本を手に、キッチンへ向かう。規則正しく寝息を立てるみどりさんの寝顔をチラリとみる。よく眠っている。誰も傷つけず、誰も傷つかず、そんな世界を生きられたら人生は満たされるのだろうか。あるいは、退屈を嫌いやがて元の傷付け合う世界に戻っていくのだろうか。
退屈な真夜中をキッチンライトの灯りを頼りに、昼間読むのを諦めた、カミュを読んで過ごした。
*
「あ、生きてた」
みどりさんの起きる気配を感じて彼女のもとへ行きそう話し掛ける。
「ねえ、大丈夫?」
微笑んでみせながらいう。彼女は瞼を開いてボーっとしている。「ここはどこだろう」と考えているのかもしれない。あるいは、ゆっくりと知覚されていく不快な現象をひとつひとつ辿っているのかもしれない。
「黒酢はちみつジュースでも飲む? 二日酔いにはよく効くんだって。ある酒飲みの女の子から教わったんだ」
そういうと、みどりさんは身体を起こし、あたりを見廻した。枕に敷いてあるバスタオル、その脇に置かれている洗面器に視線を落とす。
「ねえ、ずっと起きてたの?」
「ほら、一日中寝てたからさ、眠れなくなっちゃってね。本、借りちゃったよ。面白いね、あれ。ちょっと難しいけど」
彼女は大きなため息を吐いて、頭をかく仕草をする。
「ねえ。ちょっとこっちに来てくれない?」
「どうしたの? 気持ち悪いの?」
そういい、彼女に近づくと再び大きなため息を吐き、みどりさんは抱きついてきた。倒れ込むようにベッドに引き込まれて彼女の上に被さる。唇を重ね合い、視線を交わし合う。潤んでみえる瞳は、全部分かっているんでしょ? とも、何にも分かってないくせに、ともとれる、悲しみを湛えていた。彼女は黙ったまま力を込めて僕の身体を抱きしめる。抱きしめても抱きしめても埋まらない空虚を、それでも抱きしめることでしか埋められないのだと主張するかのように。
彼女の髪を撫で、額に唇をつけて、微笑んだ。君は何も悪くはないんだよと、優しく諭すように。
やがて僕らは彼女の求めるままに、ひとつに繋がり合った。
「ごめんね、みっともないとこ見せちゃって」
「別に気にしなくていいよ。僕だって助けてもらったわけだし」
「明日は仕事なの?」
「残念ながら、仕事が入っていないんだ。今は暇な時期だからね。来月になればボチボチ忙しくなってくるんだけど。みどりさんは?」
彼女は質問に答えることなく、自分の吐いたものの後処理をしていた。ハンドソープで手を洗い、マグカップに水を注ぎ、二回うがいをする。暫く沈黙が続いた。
「じゃあ、ぼくはそろそろ……」
「ねえ」
みどりさんが遮る。
「泊まっていってよ」
こちらを向き決意を湛えたような視線を向けた。
「それでこそ、五分と五分ってもんでしょ?」
真剣な眼差しと「五分と五分」という言葉のギャップを可笑しく感じ、思わず笑ってしまった。昨日、介抱してくれたことをいっているのだろう。
「ねえ! 何がおかしいの!」
「ごめんごめん、とくに他意はないんだけどさ。じゃあ、ちょっとコンビニに行ってくるね。丸一日以上着替えていないから気持ち悪くてさ。着替えを買ってくるよ」
みどりさんは黙ってバッグから鍵を取り出し渡した。キッチンライトの薄明かりに照らされた彼女の顔は居酒屋で飲んでいた時とはうって変わって、だいぶ青ざめている。
「シャワー、使ってもいいから。あたし、先に浴びとくね」
落ち着きを取り戻したのかみどりさんは顔をあげてこちらを向く。少し怒っているようにもみえた。
「ありがとう。帰ったら遠慮なく使わせてもらうよ。じゃあ行ってくるね」
彼女がシャワーを浴びるならなるべく時間を空けてから帰るほうがいいのだろう、そう思いながら彼女の部屋を出た。
外に出ると、街の賑わいも幾分落ちつきを取り戻しているように感じた。パチンコ店とゲームセンターのネオンが消えていて、夜は少しだけ闇を取り戻していた。風が涼しくなっている。腕時計の針を確認すると十一時半を過ぎたところだった。終電はまだある。けれども、泊まっていこうと思った。
コンビニを探す足取りのなか、みどりさんと元彼のことを想う。八年の喪失。そんな風に捉えているのだろうか。長い年月の付き合いのなか、色が褪せるようにゆっくりと損なわれていく関係性。よくある話だ。けれども、よくある話だからといって、それを以って喪失感が和らぐわけではないだろう。確かにいえることは彼女は自暴自棄になっている。自分を不幸にしてしまいたい衝動。それは、例えば反抗期の子供の行動に似ている。愛情を求めるが故、愛情を拒み、結果自身を毀損してしまう。幸福を諦めた人間の眼前に現れるのは、甘美な破滅への誘惑。ただ、破滅の先は決して甘くも美しくもないことを自分は知っている。そのことを想うと胸がざわついた。酒を飲まなければならないような、そんな焦燥がまた、頭を擡げる。
激しく、頭を振った。何も考えないようにしよう。「あのこと」は自分ではどうしようもできなかったじゃないか、仕方のないことなんだ。何も考えないようにしようとするといつも弁解の言葉が頭に浮かんでくる。まるでその言葉さえ持ち出せば、自分がかつて産み出してしまった悪意をねじ伏せ、封じ込められるかのように。
深呼吸をして、空を見上げる。月を眺めようと思ったが、雲に隠れていた。
歩みを進めていると、夜に迷う人々を救済するかのように、ぽつりと佇むコンビニエンスストアをみつけた。トランクスと靴下とTシャツと歯ブラシ。買わなければならないもののリストを頭に浮かべる。タオルは借りようと思った。
時計を確認するとここまで凡そ七分。往復で十四分。女性がシャワーに費やす時間が分からなかったが、十四分では短い気がする。少し、時間を潰そう。コンビニに入り、そう思った。
みどりさんのアパートに戻り、借りた鍵を使ってドアを開くと、何だか後ろめたい気持ちになった。部屋はシャンプーと石鹸の匂いがする。明かりは相変わらずキッチンライトが点いているだけで薄暗かった。
「みどりさん、ただいま」
声を掛けたが返事がない。暗さに目が慣れ部屋を見渡すと、みどりさんはローテーブルに突っ伏して眠っているようだった。薄ピンク色のパジャマに着替え、髪の毛は濡れている。
「風邪引くよ、ベッドで寝ないと」
肩を叩いて呼び掛けるがやはり返事がない。本格的に眠っているようだ。
仕方なく、浴室へ行き、バスタオルと洗面器を持ってくる。枕が濡れないようにバスタオルをしき、夜中吐くことがあってもいいように枕の脇に洗面器を置いた。そして、酔い潰れているみどりさんをなんとか持ちあげてベッドに寝かせる。細身とはいえ、大人の女性を持ち上げるのに、なかなか力が要った。
男の力でも女性を運ぶのに骨が折れるのに、自分を運ぶときはきっと、もっと大変だったのだろうと思われる。明日、彼女に改めて礼をいう必要があるなと思った。
シャワーを浴びてコンビニで買ってきた缶ビールを空ける。プシュ、という音が、一瞬だけ静寂を破った。
みどりさんは突然現れた空虚を埋める必要があるのだろう。どんなに強くみえる人間でも、弱くなることがある。弱い人間と強い人間がいるのではなく、弱くなるときがあるのだ。かつて、あかねがそうであったように。
ビールを半分ほど飲む。昨日一日中眠っていたせいで少しも眠くはならなかった。
もし、彼女が自分の傷が癒える間だけでも、僕のことを必要とするならば、必要なだけそばにいよう。そうしなければならない気がした。
残りのビールを飲んでしまい、さて、朝までの時間をどうやって潰そうか、そう考えたとき、読みかけのカミュを思い出した。ローテーブルに置かれたままの本を手に、キッチンへ向かう。規則正しく寝息を立てるみどりさんの寝顔をチラリとみる。よく眠っている。誰も傷つけず、誰も傷つかず、そんな世界を生きられたら人生は満たされるのだろうか。あるいは、退屈を嫌いやがて元の傷付け合う世界に戻っていくのだろうか。
退屈な真夜中をキッチンライトの灯りを頼りに、昼間読むのを諦めた、カミュを読んで過ごした。
*
「あ、生きてた」
みどりさんの起きる気配を感じて彼女のもとへ行きそう話し掛ける。
「ねえ、大丈夫?」
微笑んでみせながらいう。彼女は瞼を開いてボーっとしている。「ここはどこだろう」と考えているのかもしれない。あるいは、ゆっくりと知覚されていく不快な現象をひとつひとつ辿っているのかもしれない。
「黒酢はちみつジュースでも飲む? 二日酔いにはよく効くんだって。ある酒飲みの女の子から教わったんだ」
そういうと、みどりさんは身体を起こし、あたりを見廻した。枕に敷いてあるバスタオル、その脇に置かれている洗面器に視線を落とす。
「ねえ、ずっと起きてたの?」
「ほら、一日中寝てたからさ、眠れなくなっちゃってね。本、借りちゃったよ。面白いね、あれ。ちょっと難しいけど」
彼女は大きなため息を吐いて、頭をかく仕草をする。
「ねえ。ちょっとこっちに来てくれない?」
「どうしたの? 気持ち悪いの?」
そういい、彼女に近づくと再び大きなため息を吐き、みどりさんは抱きついてきた。倒れ込むようにベッドに引き込まれて彼女の上に被さる。唇を重ね合い、視線を交わし合う。潤んでみえる瞳は、全部分かっているんでしょ? とも、何にも分かってないくせに、ともとれる、悲しみを湛えていた。彼女は黙ったまま力を込めて僕の身体を抱きしめる。抱きしめても抱きしめても埋まらない空虚を、それでも抱きしめることでしか埋められないのだと主張するかのように。
彼女の髪を撫で、額に唇をつけて、微笑んだ。君は何も悪くはないんだよと、優しく諭すように。
やがて僕らは彼女の求めるままに、ひとつに繋がり合った。
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