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その3
すべての作業のあとで
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先に楓さんが夜の中に消え、次に灰色の人がかばんを持ち上げ、戸口に立った時私は
「これ、」
最後の作業の前に、私はそばにあったメモ帳にひとことだけなぐり書きして、灰色の人が帰る時に渡そう、と心に決めていたのだった。
なぜそんなことを?
理由は覚えていなかったけど、それだけはどうしても渡さなければ、と思っていたのだった。
「どうぞ」
突き返されるかと思ったが、彼は一瞥して
「ありがとう」
帽子のふちに軽く手を当て、夜の闇に溶けていった。
メモにはただ、
―― わすれないで
と書いただけだった。
楓さんは死んでしまった。
悲しい事実だけど、私は泣いて泣いて、それでも忘れずにまだ、心の中にそれを積もらせている。
「これ、」
最後の作業の前に、私はそばにあったメモ帳にひとことだけなぐり書きして、灰色の人が帰る時に渡そう、と心に決めていたのだった。
なぜそんなことを?
理由は覚えていなかったけど、それだけはどうしても渡さなければ、と思っていたのだった。
「どうぞ」
突き返されるかと思ったが、彼は一瞥して
「ありがとう」
帽子のふちに軽く手を当て、夜の闇に溶けていった。
メモにはただ、
―― わすれないで
と書いただけだった。
楓さんは死んでしまった。
悲しい事実だけど、私は泣いて泣いて、それでも忘れずにまだ、心の中にそれを積もらせている。
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