隣近所の山田さん

柿ノ木コジロー

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決裂

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 キッチン前に仁王立ちになっている。
 仁王立ちとはこのことだろう。顔も仁王そのものだった。

「どこに行ってたの」

 答えを知っている、と顔は語っていた。
 黙っている私に母は続けた。
「お店ですっかり噂だった……うちの娘が同じアパートのアル中オヤジとデキてる、って」
「誤解だよ」
 声が震えてしまう。
「その人、算数教えてくれた先生でさ……」
 ぐい、と腕を掴まれた。
「いいって言うまで家から出るな」
 命令には逆らえないのは、分かっていた。


 私が外に出られたのは一週間後だった。

 山田さんちの玄関ドアはかたく閉ざされ、何回呼んでも、彼が姿を現すことはなかった。
 窓側に回ってみる。
 ベランダには以前のように、ゴミ袋が溜まっていた。
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