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卒業
しおりを挟むそれから二週間後。
卒業式に、母は結局来なかった。
正門付近で皆が思い思いに記念写真を撮り合う中、私はひとり、春霞の空を見上げていた。
と、グラウンドの反対側に白いバンが停まり、少ししてから誰かが降りて来るのが見えた。
背広姿だが、髪がボサボサだ。
気づいて、私は駆け寄った。
「山田さん!」
すっかりやつれた顔をそれでもほころばせ、彼はおめでとう、と言いながら小さなメモを金網の隙間から押し込んだ。
「俺の方は、ちょっと」
頭をかく。
「卒業遅くなりそうだけど、助けてくれる所が見つかって、これからそこに行くよ」
後ろのバンの脇に、トレーナー姿の人がこちらを見て、軽くおじぎした。
「何年かかるか分からないけど……」
「待ってるから」
涙声の私に焦ったように手をふる。
「待ってなくていい、それよか、困ったことあったら必ず誰かに相談してくれ、そこに、役に立ちそうな所の連絡先書いといた、だから我慢なんかせずに、そんで、勇気出して」
「うん」
「前を向いて行けよ」
白いバンが見えなくなってもまだ、私はずっとそこに立ち尽くしていた。
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