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出会い
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1月14日
人間が起きない。
あまりに心配で医者を呼んだところ、衰弱しているだけなので問題はないということだった。
そう言われても私の心の中から不安は消えず、念の為に人間用の栄養剤の点滴をして貰った。
もう深夜になるのだが、まだ起きる気配はない。
とにかく心配なので水を含ませた脱脂綿で口元を拭くなどを20分毎ぐらいに行っているのだが、ちゃんと効果はあるのだろうか。
人間は私達と違い、とても弱い生き物なのだ。
もしものことがあったら…と思うと、ハラハラして仕方がない。
私のあまりの心配ぶりを医者は笑っていたが、本当に不安なのだよ私は。
このままでは心配のあまり私が倒れてしまいそうなので、今日はこの子との出会いについて書き記して気持ちを落ち着かせようと思う。
この子と出会ったのは、私が先月山にモンスターを狩りに行った時だ。
この子と一緒にいたもう一人の人間が、誤ってモンスター用の罠にかかってしまっていたのだ。
こういった痛ましい事故が多発していることは知っていたのだが、人間がかかっているのを見るのは初めてだった。
特に昨今は、人間はペットとして非常に人気がある。愛らしい生き物の無残な姿に、私は驚き胸を痛めた。
最初は2人とも死んでいるのではないかと思い恐る恐る近づいたのだが、虫の息ではありながらもこの子は生きていた。
痛ましいことに、左腕と左耳はモンスターに囓られて無くなってしまっていた。人間には再生能力がないのに。
すぐにでも死んでしまいそうな彼だったが、罠にかかり蜂の巣になってしまっていたもう1人の人間をその小さな身体で必死に守ろうとしていた。
今となっては本当のことを知る術はないが、きっと兄弟か何かだったのだろう。凄惨な表情で絶命しているもう1人の人間は、彼に目元がそっくりだった。
すぐさま人間保護団体に緊急の連絡を入れた。
私は戦士である為高度な回復魔法を使うことはできないが、何度も何度も私が唯一使える最も低級の回復魔法を必死にかけ続けた。
その甲斐もあってか救援に間に合い、彼は一命をとりとめた。
それから暫く人間保護団体による医療機関で治療され、まずは飼い主がいないか確認することになった。調査の結果、飼い主はいるようだった。私はそれを聞いて安堵した。だが、恐ろしいことに彼の身体には虐待の跡があり、以前の飼い主の元へ返すのは危険だと判断されてしまった。私はそれを聞き、激しい怒りを覚えた。
恐らく、もう1人の人間と一緒に飼育され、虐待から逃れようとしてあの山にいたのではないだろうか。あまりに痛ましく、想像しただけで涙が溢れた。
そういった事情の為に、保護団体の職員さんが信頼できる知人の数人に声をかけ里親を探してくれたのだが、残念ながら引き取り手が見つからなかったらしい。
このままでは殺処分されてしまう可能性が高いので、彼を発見した私が里親に名乗り出たということだ。
元々人間は好きだし、私ももう370歳で独り身という少々寂しい状況であった。
この人間と共に過ごすのも悪くないだろう。
医療機関で適切な治療を受けているので安心とはいえ、彼の身体のことは何かと心配だ。
ちゃんと守ってやりたい。
人間が起きない。
あまりに心配で医者を呼んだところ、衰弱しているだけなので問題はないということだった。
そう言われても私の心の中から不安は消えず、念の為に人間用の栄養剤の点滴をして貰った。
もう深夜になるのだが、まだ起きる気配はない。
とにかく心配なので水を含ませた脱脂綿で口元を拭くなどを20分毎ぐらいに行っているのだが、ちゃんと効果はあるのだろうか。
人間は私達と違い、とても弱い生き物なのだ。
もしものことがあったら…と思うと、ハラハラして仕方がない。
私のあまりの心配ぶりを医者は笑っていたが、本当に不安なのだよ私は。
このままでは心配のあまり私が倒れてしまいそうなので、今日はこの子との出会いについて書き記して気持ちを落ち着かせようと思う。
この子と出会ったのは、私が先月山にモンスターを狩りに行った時だ。
この子と一緒にいたもう一人の人間が、誤ってモンスター用の罠にかかってしまっていたのだ。
こういった痛ましい事故が多発していることは知っていたのだが、人間がかかっているのを見るのは初めてだった。
特に昨今は、人間はペットとして非常に人気がある。愛らしい生き物の無残な姿に、私は驚き胸を痛めた。
最初は2人とも死んでいるのではないかと思い恐る恐る近づいたのだが、虫の息ではありながらもこの子は生きていた。
痛ましいことに、左腕と左耳はモンスターに囓られて無くなってしまっていた。人間には再生能力がないのに。
すぐにでも死んでしまいそうな彼だったが、罠にかかり蜂の巣になってしまっていたもう1人の人間をその小さな身体で必死に守ろうとしていた。
今となっては本当のことを知る術はないが、きっと兄弟か何かだったのだろう。凄惨な表情で絶命しているもう1人の人間は、彼に目元がそっくりだった。
すぐさま人間保護団体に緊急の連絡を入れた。
私は戦士である為高度な回復魔法を使うことはできないが、何度も何度も私が唯一使える最も低級の回復魔法を必死にかけ続けた。
その甲斐もあってか救援に間に合い、彼は一命をとりとめた。
それから暫く人間保護団体による医療機関で治療され、まずは飼い主がいないか確認することになった。調査の結果、飼い主はいるようだった。私はそれを聞いて安堵した。だが、恐ろしいことに彼の身体には虐待の跡があり、以前の飼い主の元へ返すのは危険だと判断されてしまった。私はそれを聞き、激しい怒りを覚えた。
恐らく、もう1人の人間と一緒に飼育され、虐待から逃れようとしてあの山にいたのではないだろうか。あまりに痛ましく、想像しただけで涙が溢れた。
そういった事情の為に、保護団体の職員さんが信頼できる知人の数人に声をかけ里親を探してくれたのだが、残念ながら引き取り手が見つからなかったらしい。
このままでは殺処分されてしまう可能性が高いので、彼を発見した私が里親に名乗り出たということだ。
元々人間は好きだし、私ももう370歳で独り身という少々寂しい状況であった。
この人間と共に過ごすのも悪くないだろう。
医療機関で適切な治療を受けているので安心とはいえ、彼の身体のことは何かと心配だ。
ちゃんと守ってやりたい。
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