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しおりを挟む部室に入ってWIFIパスワードを教えて一時間と少し。
俺と先輩は一言も話さなかった。
俺は読書、二上先輩はゲーム。
それぞれ室内の椅子に座って、自分のしたいことをする。
余計な会話もない。一人増えても、いつもの放課後がそこにあった。
「ああ、もうこんな時間か。二上先輩……」
特に活動しているわけではないので部室は五時前には閉める。日も短くなっているし、二上先輩も早く帰った方がいいだろう。
そう思って声をかけようとした途中で言葉がとまった。
窓近くの席に座り、スマホの画面を操作する二上先輩。
外から淡く夕焼けが差し込み、髪と表情を軽く色づける姿が、はっとするほど絵になっていた。
端的に言って、綺麗だった。写真に取ってフォトフレームに納めれば、ちょっとした作品名でもつきそうなほどだ。
思わずじっと見つめてしまう俺を尻目に、二上先輩は一心不乱にスマホを操作する。
そして……
「あーーーーっ!」
いきなりガンッ、と額を机に打ち付けた。
「ど、どうしたんですか!?」
「ピックアップが仕事しないっ! 頑張って石集めたのに……。悲しい……」
ガチャかよ。
「先輩……結構残念なんですね」
「なによっ。私だってゲームくらいするし無料石をかき集めて爆死だってするわよ」
爆死だったのか。
「二上先輩って、結構面白い人ですね」
「貴方もね。納谷君」
俺はそんな面白みなんてないぞ。少なくとも放課後の学校で必死にWIFIを捉えてガチャで爆死なんてしない。
そんな不満が伝わったのか、先輩は小さく笑いながら、俺に言う。
「放課後の部室で一人でずっと読書してるだけ。でも、凄く落ちついてゆったりしてるように見えたよ。一応、私っていう普段はいないお客さんがいるのに」
「まあ、先輩の相手はしないで良さそうでしたから」
「それはひどいね。……いいね。納谷君。この部室も凄く良いと思う」
うんうんと何度か頷いたあと、遠慮がちに先輩は言う。
「よければたまに来てもいいかな? 体験入部に」
「……たまになら」
毎日来てくださいという言葉を、俺は何とか飲み込んだ。
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