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銀の森に入って二日後、俺はキャンプを満喫していた。
「やっぱいいな……アウトドア……」
現在地は銀の森の西端から奥に分け入った場所。中心部からは全然遠いが、狩人や冒険者が三日くらいかけて来る場所だ。
ここまで来ると人の手が入る余地もなく、森の中は鬱蒼としていて薄暗い。まだ木々や地面の草花が銀色になってはいないが、十分危険地帯といえるだろう。
俺はそこでテントを張ってキャンプしていた。
腰掛ける折りたたみ椅子は、転生前によく見たアウトドア用の椅子を真似たもの。そして、足下にはロケットストーブがある。
ロケットストーブというのは大きめの缶にL字の金属パイプを埋め込んで、隙間を砂利などの断熱材で覆ったものだ。金属パイプ内に木材を入れて火を付けると、煙が出ないくらい効率良く燃焼する。
はっきりいってとても楽しい。勢いよく燃え盛る火をいつまでも見ていられる。
この椅子とロケットストーブは、以前一緒に旅していたドワーフの手製だ。親友との思い出の品と言ってもいい。
「野外活動ばっかりの冒険者にアウトドアの魅力はわからないのは仕方ないけど、あんなに言うことないよなぁ……」
数年前のことを思い返して呟きながら、俺は拾ってきた細い木の枝をロケットストーブに投入する。
当時の仲間にアウトドアというレジャーを伝えた時、ちょっと凹むくらい冷めた反応をされたものだ。
「理解できない」「暖かいベッドと食事の方がいいじゃろ」「あとお風呂」「いつもやってるじゃん」、どれも正論過ぎて反論できなかった。
唯一同調してくれたのがドワーフだった。火と土に親しむ種族である彼らには野外活動を楽しむ心があったのだ。
それから忙しい戦いの合間をぬって色々なアウトドアグッズを製作し、今もこうして俺は役立てている。
「さて、そろそろやるか……」
木々の間から覗く太陽を見上げ、昼食の準備をすることに決める。
俺は何らかの理由で木が倒れていた場所を軽く整理して、テントを張っていた。
倒れていた樹木は切り刻んでそのまま燃料に。ストーブの火が危ないので一部の地面は軽く掘って剥き出しにしてある。
森の外ほど明るくないが、程よく光の差し込むこの場所はなかなかの場所に思えた。春先という気候もいいのだろう。
「せっかくだし肉にしよう」
呟きと共に、俺が軽く手を振ると、フライパンと小さな箱が出てきた。
いわゆる空間収納魔法の一種である。
魔法の力はたまに科学の領域を軽く飛び越える。
空間収納の魔法もその一つだ。魔法で別空間の倉庫に繋げたもの、内部にだだっ広い空間が確保されているマジックアイテム、別次元の空間を用意する特殊能力といくつか種類がある。
俺の扱うそれは神界で神々から授けられた特別なもので、自由意志で物が出し入れできる上、生ものが保存できる。広さの方もほぼ無尽蔵だ。
ロケットストーブの上部はゴトクになっていて、調理器具を置けるようになっている。
調理することも考えて火力は弱めに調節してある。大丈夫だろう。
今度は収納から取り出した箱を開く。
そこに入っていたのは拳くらいの大きさの肉が二切れ。
一つは赤身、もう一つは霜降り。
ビフロ王国のとある牧場でのみ生産されている、王侯貴族向けの高級牛肉である。
平和な農業国で歴史を重ねたおかげか、こういう食材も手に入るのだ。
地球のA5牛ほどじゃないだろうが、十分美味しい。まあ、実はA5牛なんて食べたことなかったから比べられないけど。
フライパンを火にかけ、収納から取り出した油をしき、肉を順番に焼きに掛かる。
じゅう、という肉の焼ける音がしてからしばらくすると、いかにも美味そうな肉汁がしみ出してきた。そして肉の焼ける何ともいえない匂いが、辺りに充満していく。
「最高だな……」
自然豊かな森の中でキャンプ。使うのは高級食材。完璧だ。
ここが普通の人は近寄らない、魔物が潜む危険地帯だという事実をのぞけばだが。
霜降りの肉は火を通しすぎると良くない。というか思ったより火力が強かったのか焦げ始めたので素速く皿を取り出してそちらに避難。
その時だった。
静かに、音も立てずに、森の奥からそれはやってきた。
俺の視線の先、直前までただ木々と草が並ぶだけだった景色の中に、銀色の獣が佇んでいた。
立ち上がれば成人男性くらいの背丈はあるだろう巨体、陽光を反射して輝く銀色の毛皮。精悍な顔つきと肉体は、見る者を圧倒させるに十分なほど。
目の前に現れたのは銀色の毛皮を持った狼だった。
目的のものと会えたことに満足しつつ、俺はステーキの載った皿を手にとって口を開く。
「あの、肉、食べますか?」
「やっぱいいな……アウトドア……」
現在地は銀の森の西端から奥に分け入った場所。中心部からは全然遠いが、狩人や冒険者が三日くらいかけて来る場所だ。
ここまで来ると人の手が入る余地もなく、森の中は鬱蒼としていて薄暗い。まだ木々や地面の草花が銀色になってはいないが、十分危険地帯といえるだろう。
俺はそこでテントを張ってキャンプしていた。
腰掛ける折りたたみ椅子は、転生前によく見たアウトドア用の椅子を真似たもの。そして、足下にはロケットストーブがある。
ロケットストーブというのは大きめの缶にL字の金属パイプを埋め込んで、隙間を砂利などの断熱材で覆ったものだ。金属パイプ内に木材を入れて火を付けると、煙が出ないくらい効率良く燃焼する。
はっきりいってとても楽しい。勢いよく燃え盛る火をいつまでも見ていられる。
この椅子とロケットストーブは、以前一緒に旅していたドワーフの手製だ。親友との思い出の品と言ってもいい。
「野外活動ばっかりの冒険者にアウトドアの魅力はわからないのは仕方ないけど、あんなに言うことないよなぁ……」
数年前のことを思い返して呟きながら、俺は拾ってきた細い木の枝をロケットストーブに投入する。
当時の仲間にアウトドアというレジャーを伝えた時、ちょっと凹むくらい冷めた反応をされたものだ。
「理解できない」「暖かいベッドと食事の方がいいじゃろ」「あとお風呂」「いつもやってるじゃん」、どれも正論過ぎて反論できなかった。
唯一同調してくれたのがドワーフだった。火と土に親しむ種族である彼らには野外活動を楽しむ心があったのだ。
それから忙しい戦いの合間をぬって色々なアウトドアグッズを製作し、今もこうして俺は役立てている。
「さて、そろそろやるか……」
木々の間から覗く太陽を見上げ、昼食の準備をすることに決める。
俺は何らかの理由で木が倒れていた場所を軽く整理して、テントを張っていた。
倒れていた樹木は切り刻んでそのまま燃料に。ストーブの火が危ないので一部の地面は軽く掘って剥き出しにしてある。
森の外ほど明るくないが、程よく光の差し込むこの場所はなかなかの場所に思えた。春先という気候もいいのだろう。
「せっかくだし肉にしよう」
呟きと共に、俺が軽く手を振ると、フライパンと小さな箱が出てきた。
いわゆる空間収納魔法の一種である。
魔法の力はたまに科学の領域を軽く飛び越える。
空間収納の魔法もその一つだ。魔法で別空間の倉庫に繋げたもの、内部にだだっ広い空間が確保されているマジックアイテム、別次元の空間を用意する特殊能力といくつか種類がある。
俺の扱うそれは神界で神々から授けられた特別なもので、自由意志で物が出し入れできる上、生ものが保存できる。広さの方もほぼ無尽蔵だ。
ロケットストーブの上部はゴトクになっていて、調理器具を置けるようになっている。
調理することも考えて火力は弱めに調節してある。大丈夫だろう。
今度は収納から取り出した箱を開く。
そこに入っていたのは拳くらいの大きさの肉が二切れ。
一つは赤身、もう一つは霜降り。
ビフロ王国のとある牧場でのみ生産されている、王侯貴族向けの高級牛肉である。
平和な農業国で歴史を重ねたおかげか、こういう食材も手に入るのだ。
地球のA5牛ほどじゃないだろうが、十分美味しい。まあ、実はA5牛なんて食べたことなかったから比べられないけど。
フライパンを火にかけ、収納から取り出した油をしき、肉を順番に焼きに掛かる。
じゅう、という肉の焼ける音がしてからしばらくすると、いかにも美味そうな肉汁がしみ出してきた。そして肉の焼ける何ともいえない匂いが、辺りに充満していく。
「最高だな……」
自然豊かな森の中でキャンプ。使うのは高級食材。完璧だ。
ここが普通の人は近寄らない、魔物が潜む危険地帯だという事実をのぞけばだが。
霜降りの肉は火を通しすぎると良くない。というか思ったより火力が強かったのか焦げ始めたので素速く皿を取り出してそちらに避難。
その時だった。
静かに、音も立てずに、森の奥からそれはやってきた。
俺の視線の先、直前までただ木々と草が並ぶだけだった景色の中に、銀色の獣が佇んでいた。
立ち上がれば成人男性くらいの背丈はあるだろう巨体、陽光を反射して輝く銀色の毛皮。精悍な顔つきと肉体は、見る者を圧倒させるに十分なほど。
目の前に現れたのは銀色の毛皮を持った狼だった。
目的のものと会えたことに満足しつつ、俺はステーキの載った皿を手にとって口を開く。
「あの、肉、食べますか?」
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