転生チートで英雄になったんですが、スローライフしたいです(切実)

みなかみしょう

文字の大きさ
49 / 58

49.

しおりを挟む
 妖樹の森と化した魔物の巣、その入り口付近で出くわした傭兵団の悲劇。
 彼らを木から下ろし、弔う余裕は俺達には与えられなかった。

 あまりの光景に立ち止まっている間に、魔物達の襲撃を受けたからだ。

「全員! 応戦を!」

 対応は早かった。クリスの声に応えて即座に戦闘態勢に入る精鋭達。その他の冒険者達もそれに釣られるように、それぞれの役目を果たすべく、行動に入る。

 俺とユニアの役割は中衛。前衛の後ろ、クリスを守るように立ち、魔法と弓で応戦する。
 持ち込んでいるのがレベルを落とした装備とはいえ、性能は悪くない。上手い具合に魔物を攻撃して、味方の撃破数に貢献するように動く。 

「ようやく向こうに動きがあったな。ユニア」

「はい。少々お待ちください……」

 奇襲を食らったが戦況は優勢。やはり、クリスとその仲間が頼もしい。
 襲いかかってくる魔物は、ゴブリン、オーク、オーガ。それに森の獣が魔物化したもので、どれも結構強めの個体だ。人間より二回りは大きいトロルまでいるが、それすらものともしない。さすが『魔王戦役』を生き抜いた戦士達だ。

 おかげでユニアが周囲の索敵に集中できる。
 妖樹の森が現れて以来、動きを見せなかった敵がようやく明確な行動に出てくれた。しかも、いかにも「お前達をここから出さないぞ」というメッセージを暗に込めたやつだ。
 俺達が傭兵団を発見した後、襲いかかってくるタイミングは完璧に近かった。

 つまり、指令を出している奴がここを見ている。
 
 この罠を準備した司令塔、それがこの近くにいる可能性は高い。
 傭兵隊長のボルグが元凶だと思っていたが、どうもそこは外れたらしい。彼の死体もまた、木にぶらさがっていた。すると、別物か……。

 傷ついた前衛に回復魔法を放ちながら、そんなことを考えていると、ユニアが口を開いた。
「いました。右前方。若干ですが霧が薄くなっている方向です」

「あっちか。言われてみれば……よし」

 たしかに、右側の方を見ると霧が薄くなっているように見える。微妙だが、違いは違いだ。 罠の可能性もあるが、それならそれで踏み潰すまで。

 俺は軽く下がってクリスの横に行く。

「どうかされましたか?」

 周囲の冒険者が怪訝な反応をする中、クリスは落ち着いていた。

「ユニアが右前方に何かあると言っています。あいつは勘がいい。調べてきていいですか?」

「この状況でか?」

 横にいた男性神官が疑問を挟む。まあ、たしかにそうだ。

「右前方……あちらですか。なるほど……」

 俺が指し示した方角をじっと見た後、クリスは力の籠もった瞳で俺を見る。

「イストさん、でしたね。お二人で行くつもりですか?」

「加護を頂ければ偵察してきます。ヤバそうだったら、すぐに逃げてきますよ」

「……わかりました。加護を祈りましょう」

「クリス様!」

 口を挟もうとした横の神官に対して、クリスは手で制す。

「この戦場ももうすぐ収まるでしょう。偵察を出す余裕はあります。むしろ、敵を撃退した後、近くにいるであろう黒幕に逃げられる心配をすべきです」

「……た、たしかに味方優勢ですが」

「見た限り、イストさんとユニアさんの動きは的確です。ここは頼って良いでしょう」

 そう言うなり、クリスは目を閉じて聖句を唱える。
 俺と少し離れた場所にいるユニア、それぞれの体が淡く輝いた。

「光の加護です。妖樹の霧は意に介さず進めるでしょう。今のうちに黒幕に迫り、足止めを」

「承知しました」

 言葉を受けて、俺は駆け出す。それを見ていたのか、ユニアも当たり前のようについてくる。冒険者達の防御の陣を二人で抜けて、俺達は駆け出す。

「ユニア、道案内を頼む」

「了解です。こちらへ」

 一足先も見えないくらい濃い霧の中、前を行くユニアの後を追いかける。
 その先にいる、この状況を作り出した黒幕に迫るために。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

処理中です...