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ツィードアの叫びに反応したのは周辺の妖樹の森だ。枯れた枝が生き生きと、高速で俺達の方に伸びてくる。速度は速く、範囲は広く。だが、枝に鋭さはない。
俺達の動きを妨害するためのものだ。
「さあ、せいぜいあがきたまえ!」
死ぬほど嬉しそうにそう言ったツィードアが俺達目掛けて魔法を連続で放ってくる。魔族の魔法なのだろう。風とエネルギーを直接ぶつけるタイプが多い。
込められた魔力量は魔族を名乗るだけあって、なかなかの強さ。
俺とユニアは互いに防御魔法を張り、後退しつつ身を守る。
「ファイアランス!」
近くに来た枝を剣で切り落としつつ、ためしに妖樹本体に火の魔法を打ち込んでみた。
炎の槍が妖樹の一本に直撃したが、数秒燃えてから元気な姿を現した。効果が薄い。あんな見た目でも生木なのか。
「見た目は枯れ木みたいなのに、あんまり燃えないな……」
「ならば、地下からはどうでしょうか。……領域拡大。アイスカッター」
ユニアが地面に剣を突き立てると、一面に魔力が走った。
変化があったのは足下だ。猛烈な冷気が地面から立ち昇ってきた。それだけじゃない、見れば俺達が立っている場所以外には、無数の氷の刃が地面から生えている。
地上に見える長さは5センチもないが、地面の中はその数倍以上あるだろう。地中の根はズタズタに切り刻まれたはず。
「なかなかえげつない魔法を使うな……」
「効果的ですから。ほら」
見ればそれまで霧を出し、枝を伸ばしていた妖樹の動きが明らかに悪くなっていた。
魔物の樹木でも、根が弱点なんだな。覚えておこう。
「植物を殺すなら根からです。趣味が役に立ちました」
「勉強になります……」
日頃の畑仕事の成果に満足気なユニアだった。今度俺も手伝おう。
こうなると、気分が良くないのはツィードアである。
「君達、意外とやるな?」
両手に魔力の塊みたいなものを輝かせながら、不機嫌に言ってきた。今ので俺達を殺せるつもりだったんだろう。
まだ自信があるみたいだが、情報を得た以上、もうこいつに付き合う必要は無い。
「傭兵隊の人々の仇、とらせてもらうぞ」
「できるものなら……なごふぁああ!」
剣を向けた俺に、凄んで見せたところで、いきなりツィードアが吹き飛んだ。
「……光り輝くトゲ付きの鉄球が乱入して来ましたね」
さすがはワルキューレ。何が起きたかちゃんと見えていた。
魔族がいきなり吹き飛んだ攻撃に俺は心当たりがある。
「クリスか……」
思ったより早く片づけてきたな。
「ご無事なようで何よりでした。お二人を援護するため、急いできたんですよ」
声のした方を見ると、クリスがゆっくりとした足取りで、俺達の方にやって来ていた。
多分、他の面々を置いて走ってきたんだろう。射程内に入ったんで、歩いてるだけだ。態度も含めて余裕の現れ。強者の立ち振る舞いだ。
クリスが手にしてるのはマジックアイテムのモーニングスターで、中距離まで対応可能な一品だ。戦場では神聖魔法も乗せて振り回される、危険極まりない武器である。
「そこの魔物が元凶ですね。……終わらせましょう」
元々は武闘派と呼ばれていた現聖女は高らかに神に祈りを捧げる。
「偉大なる光の神リラよ、ここに魔を討つ力を……」
短い祈りの言葉に応えるように、俺とユニアの剣が輝いた。
ミスリルでも神具でもない、ただの上級品だが、聖女のもたらす加護はちょっと凄い威力を提供してくれる。
「ぐ……、聖女クリス……。もう来たのか」
ツィードアが自分を癒しながら立ち上がる。結構強いな、こいつ。
「終わりです、魔物よ。これ以上好き放題させません」
「どうかな。私にとっては好都合!」
声と同時、ツィードアが光り輝く刃を無数に打ち出す。
「光よ!」
しかし、クリスの一言でそれらは全て消滅した。
「馬鹿な! こんな非常識な力があるものか!」
非常識なまでに神に愛されてるから、聖女と呼ばれているんだよ。
選んだ相手が悪かったな、ツィードア。
「今です、二人とも!」
この戦いを終わりにすべく、声に応えて俺とユニアが駆け出す。
「くそ、来るな! その剣の光は!」
焦って魔法を連打してくるツィードアだが、クリスの加護のおかげで全て届く前に消える。 俺がいうのもなんだけど滅茶苦茶だな。
殆ど無理ゲーを強制されてるようなもんだ、向こうは。
俺とユニアは目の前に接近。二方向から加護の乗った剣で攻撃にかかる。
「おのれええ!」
ツィードアは魔力で作った剣を振るうも、ユニアがそれを受けた。それどころか、素速く返す刃で一撃が入る。どうやら、接近戦は苦手な模様。
「う、お……」
呻き声と共に、体勢が崩れたのを俺は見逃さない。
「終わりだ。魔族ツィードア」
多くは語らずに、その一言の後、加護を授かった剣で魔族の首を切り落とした。
あっさりした最後だった。
光の神の加護によるものか、十秒もしないうちに、ツィードアの首は霧のようになって消滅した。
「目標の消滅を確認。……周囲の妖樹も力を失っているようです」
「この森そのものがあいつの能力だったのかもな」
自由自在に迷いの森を使えるとは、恐ろしい奴だ。普通なら、全滅している。出自が植物だったりするのかもしれない。今となっては知るよしもないが。
徐々に視界が開けている森を眺めていると、クリスが歩み寄ってきた。
安心したような、晴れやかな笑顔は昔から見慣れた、彼女の魅力的な表情の一つだ。
「お疲れ様です。無事に退治できて良かったですね、フィル」
「ああ。でも傭兵団が全滅してしま……あ」
言葉の途中で俺は固まった。横のユニアが冷たい目でこちらを見ている。
今、フィルって言われたよな? しかもつい反応してしまった。
「帰ったら、ゆっくりお話しましょうか」
問題の発言をした人物。聖女クリスはあくまでも笑顔のままそう言いっ放った。
俺達の動きを妨害するためのものだ。
「さあ、せいぜいあがきたまえ!」
死ぬほど嬉しそうにそう言ったツィードアが俺達目掛けて魔法を連続で放ってくる。魔族の魔法なのだろう。風とエネルギーを直接ぶつけるタイプが多い。
込められた魔力量は魔族を名乗るだけあって、なかなかの強さ。
俺とユニアは互いに防御魔法を張り、後退しつつ身を守る。
「ファイアランス!」
近くに来た枝を剣で切り落としつつ、ためしに妖樹本体に火の魔法を打ち込んでみた。
炎の槍が妖樹の一本に直撃したが、数秒燃えてから元気な姿を現した。効果が薄い。あんな見た目でも生木なのか。
「見た目は枯れ木みたいなのに、あんまり燃えないな……」
「ならば、地下からはどうでしょうか。……領域拡大。アイスカッター」
ユニアが地面に剣を突き立てると、一面に魔力が走った。
変化があったのは足下だ。猛烈な冷気が地面から立ち昇ってきた。それだけじゃない、見れば俺達が立っている場所以外には、無数の氷の刃が地面から生えている。
地上に見える長さは5センチもないが、地面の中はその数倍以上あるだろう。地中の根はズタズタに切り刻まれたはず。
「なかなかえげつない魔法を使うな……」
「効果的ですから。ほら」
見ればそれまで霧を出し、枝を伸ばしていた妖樹の動きが明らかに悪くなっていた。
魔物の樹木でも、根が弱点なんだな。覚えておこう。
「植物を殺すなら根からです。趣味が役に立ちました」
「勉強になります……」
日頃の畑仕事の成果に満足気なユニアだった。今度俺も手伝おう。
こうなると、気分が良くないのはツィードアである。
「君達、意外とやるな?」
両手に魔力の塊みたいなものを輝かせながら、不機嫌に言ってきた。今ので俺達を殺せるつもりだったんだろう。
まだ自信があるみたいだが、情報を得た以上、もうこいつに付き合う必要は無い。
「傭兵隊の人々の仇、とらせてもらうぞ」
「できるものなら……なごふぁああ!」
剣を向けた俺に、凄んで見せたところで、いきなりツィードアが吹き飛んだ。
「……光り輝くトゲ付きの鉄球が乱入して来ましたね」
さすがはワルキューレ。何が起きたかちゃんと見えていた。
魔族がいきなり吹き飛んだ攻撃に俺は心当たりがある。
「クリスか……」
思ったより早く片づけてきたな。
「ご無事なようで何よりでした。お二人を援護するため、急いできたんですよ」
声のした方を見ると、クリスがゆっくりとした足取りで、俺達の方にやって来ていた。
多分、他の面々を置いて走ってきたんだろう。射程内に入ったんで、歩いてるだけだ。態度も含めて余裕の現れ。強者の立ち振る舞いだ。
クリスが手にしてるのはマジックアイテムのモーニングスターで、中距離まで対応可能な一品だ。戦場では神聖魔法も乗せて振り回される、危険極まりない武器である。
「そこの魔物が元凶ですね。……終わらせましょう」
元々は武闘派と呼ばれていた現聖女は高らかに神に祈りを捧げる。
「偉大なる光の神リラよ、ここに魔を討つ力を……」
短い祈りの言葉に応えるように、俺とユニアの剣が輝いた。
ミスリルでも神具でもない、ただの上級品だが、聖女のもたらす加護はちょっと凄い威力を提供してくれる。
「ぐ……、聖女クリス……。もう来たのか」
ツィードアが自分を癒しながら立ち上がる。結構強いな、こいつ。
「終わりです、魔物よ。これ以上好き放題させません」
「どうかな。私にとっては好都合!」
声と同時、ツィードアが光り輝く刃を無数に打ち出す。
「光よ!」
しかし、クリスの一言でそれらは全て消滅した。
「馬鹿な! こんな非常識な力があるものか!」
非常識なまでに神に愛されてるから、聖女と呼ばれているんだよ。
選んだ相手が悪かったな、ツィードア。
「今です、二人とも!」
この戦いを終わりにすべく、声に応えて俺とユニアが駆け出す。
「くそ、来るな! その剣の光は!」
焦って魔法を連打してくるツィードアだが、クリスの加護のおかげで全て届く前に消える。 俺がいうのもなんだけど滅茶苦茶だな。
殆ど無理ゲーを強制されてるようなもんだ、向こうは。
俺とユニアは目の前に接近。二方向から加護の乗った剣で攻撃にかかる。
「おのれええ!」
ツィードアは魔力で作った剣を振るうも、ユニアがそれを受けた。それどころか、素速く返す刃で一撃が入る。どうやら、接近戦は苦手な模様。
「う、お……」
呻き声と共に、体勢が崩れたのを俺は見逃さない。
「終わりだ。魔族ツィードア」
多くは語らずに、その一言の後、加護を授かった剣で魔族の首を切り落とした。
あっさりした最後だった。
光の神の加護によるものか、十秒もしないうちに、ツィードアの首は霧のようになって消滅した。
「目標の消滅を確認。……周囲の妖樹も力を失っているようです」
「この森そのものがあいつの能力だったのかもな」
自由自在に迷いの森を使えるとは、恐ろしい奴だ。普通なら、全滅している。出自が植物だったりするのかもしれない。今となっては知るよしもないが。
徐々に視界が開けている森を眺めていると、クリスが歩み寄ってきた。
安心したような、晴れやかな笑顔は昔から見慣れた、彼女の魅力的な表情の一つだ。
「お疲れ様です。無事に退治できて良かったですね、フィル」
「ああ。でも傭兵団が全滅してしま……あ」
言葉の途中で俺は固まった。横のユニアが冷たい目でこちらを見ている。
今、フィルって言われたよな? しかもつい反応してしまった。
「帰ったら、ゆっくりお話しましょうか」
問題の発言をした人物。聖女クリスはあくまでも笑顔のままそう言いっ放った。
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