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第12話:白の町ミレス
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白の町ミレス。メイナス王国のほぼ中央に位置する大きな町であり、この国の神殿の中心地でもある。
町はその呼び名の通り、白い建物が多く、中心部に行くほど高く、白い光景が広がる。その町並みの美しさに惹かれて、観光客も多く訪れる。
町の中心に聳えるのはミレスの大聖堂。白と黒、二色の塔が際立つ巨大な建物で、多くの聖職者がそこで暮らす。
この世界では、白の神と黒の神を奉じられている。それぞれ昼と夜を司り、世界を創造し、多くの生命を生み出した神様だ。白神が人前に出てきて試練や祝福を与え、黒神が魂や魔法の管理など裏方のような仕事をしているらしい。
町が白いのは派手好きの白神のためで、奥ゆかしい黒神は塔だけで十分と言ったからと、伝承にはある。
二神といってはいるが、神話によっては場面で入れ替わっていたりするなど、実は同一存在なのではと言われる、ちょっとはっきりしない神様であるとのこと。
そんなことを、ミレスへの道すがら、オレはフォミナに教えて貰った。
「ようやくついたな。メイクベを出るのに手間がかかるとは思わなかった」
高所に作られた公園から、白い町並みを見下ろして、感慨深くオレは言った。
白い建物とそこらじゅうを流れる水路はとても綺麗だ。確かに一見の価値はある。実際、公園には多く男女が、仲睦まじい様子で景色を眺めていた。
「マイス君、結構好かれてましたもんね。あの受付嬢さん、本気で泣いてましたよ」
次の行き先が決まった俺達は、すぐにミレスに向かうことにした。荷物はすぐにまとまるので、あとは世話になった人の挨拶だ。
これがちょっと大変だった。事前に伝えてた魔法屋のおばちゃんは問題なかったが、冒険者ギルドで引き留められたのだ。特にあの受付さんに。
「本気で引き留められるとは思わなかったよ。ちょっと恐かった」
「マイス君、他の方とはあまり関わってなかったけど、目立ってましたからね。学園出身だからエリートに違いないって、狙ってる人も多かったみたいですよ」
「マジか……。全然気づかなかった」
もっと周りにも注意した方がいいな。
そんなことを考えるオレを見て、フォミナが呆れ顔をしていた。
「あの受付さん、よくマイス君を食事に誘ってたらしいですよ。頑張ってアプローチしても全然手応えがないって、たまに近くで飲みながら嘆いてました」
「そうだったのか……」
てっきり社交辞令だと思ってた。「今度飲みましょう」とかの、大人の世界の挨拶みたいなもんかと。
愕然としているオレを見て、フォミナがふふっと軽く笑った。
「マイス君がそういう人でちょっと安心です。女性関係で身を滅ぼす冒険者って多いですから。たまに大怪我する人もいますからね」
「それは勘弁してもらいたいな」
「それと、受付さんには注意ですよ。どこかに『新人喰い』なんてあだ名のとんでもない人がいるらしいですから」
「肝に銘じておきます」
知ってる。『新人喰い』は人間世界に潜伏しているサキュバスだ。引っかかった時にステータスが低いと、そのままバッドエンドになる。恐い。気を付けよう。
「とりあえず、宿を探そうか」
「そうですね。できれば、中心部から遠いところが有り難いです」
何でも、ここでは彼女の姉が聖騎士として務めているらしい。身内での立場がちょっと微妙なフォミナは会いたくないようだった。
「わかった。町外れ……はちょっと心配だから。少し離れたところで探そう」
「助かります。ダンジョンとか、お店との距離も考えた方が良いですよね」
「たしかに。早めに行こうか」
景色を堪能したオレ達は、和やかに話しながら宿探しへと移行した。
宿は結構簡単に決まった。町の北側、白い城壁よりの中心から離れた場所。大通りから一本入った先にある、静かな通り沿いにある『白い翼』亭という小綺麗な宿を、オレ達は拠点とした。
この町の店、白のなんとかという名前が本当に多い。たしかにどれも壁が白いけどさ。
『白い翼』亭で取った部屋は、以前よりもちょっと広い。室内のテーブルの横には椅子が二つ置かれている。おかげでちょっと宿代も高いんだけれど、それはこれから稼ぐから何とかなるはずだ。
「いい宿が見つかって良かった。落ちついてるから、しっかり休めそうだ」
「平気なんですか? もっと安い宿もありましたよ?」
経済感覚がしっかりしているフォミナが言う。先にここが気に入ったのは彼女だが、値段を聞いて諦めてるところをオレが押したという流れだった。
「金の方は大丈夫だよ。ここならフォミナが頼りになるしね」
「そうですね。ここのダンジョンと言えば、旧大聖堂。聖職者の私が頑張れば、宿代くらい心配ないはずです」
この地の主なダンジョンは、町外れにある旧大聖堂。かつての姿は失われ、アンデッドの巣窟になっている場所だ。
「いや、行くのはそこじゃないよ」
「え?」
ターンアンデッドを使えるフォミナの出番というのは確かにあっている。
ただし、行き先が違う。これから行くのはもっと実入りのいいところだ。
「オレ達が行くのは流血の宮殿だよ」
「…………」
高レベル向けダンジョンの名前を聞いた瞬間、フォミナが表情を白くして固まった。
町はその呼び名の通り、白い建物が多く、中心部に行くほど高く、白い光景が広がる。その町並みの美しさに惹かれて、観光客も多く訪れる。
町の中心に聳えるのはミレスの大聖堂。白と黒、二色の塔が際立つ巨大な建物で、多くの聖職者がそこで暮らす。
この世界では、白の神と黒の神を奉じられている。それぞれ昼と夜を司り、世界を創造し、多くの生命を生み出した神様だ。白神が人前に出てきて試練や祝福を与え、黒神が魂や魔法の管理など裏方のような仕事をしているらしい。
町が白いのは派手好きの白神のためで、奥ゆかしい黒神は塔だけで十分と言ったからと、伝承にはある。
二神といってはいるが、神話によっては場面で入れ替わっていたりするなど、実は同一存在なのではと言われる、ちょっとはっきりしない神様であるとのこと。
そんなことを、ミレスへの道すがら、オレはフォミナに教えて貰った。
「ようやくついたな。メイクベを出るのに手間がかかるとは思わなかった」
高所に作られた公園から、白い町並みを見下ろして、感慨深くオレは言った。
白い建物とそこらじゅうを流れる水路はとても綺麗だ。確かに一見の価値はある。実際、公園には多く男女が、仲睦まじい様子で景色を眺めていた。
「マイス君、結構好かれてましたもんね。あの受付嬢さん、本気で泣いてましたよ」
次の行き先が決まった俺達は、すぐにミレスに向かうことにした。荷物はすぐにまとまるので、あとは世話になった人の挨拶だ。
これがちょっと大変だった。事前に伝えてた魔法屋のおばちゃんは問題なかったが、冒険者ギルドで引き留められたのだ。特にあの受付さんに。
「本気で引き留められるとは思わなかったよ。ちょっと恐かった」
「マイス君、他の方とはあまり関わってなかったけど、目立ってましたからね。学園出身だからエリートに違いないって、狙ってる人も多かったみたいですよ」
「マジか……。全然気づかなかった」
もっと周りにも注意した方がいいな。
そんなことを考えるオレを見て、フォミナが呆れ顔をしていた。
「あの受付さん、よくマイス君を食事に誘ってたらしいですよ。頑張ってアプローチしても全然手応えがないって、たまに近くで飲みながら嘆いてました」
「そうだったのか……」
てっきり社交辞令だと思ってた。「今度飲みましょう」とかの、大人の世界の挨拶みたいなもんかと。
愕然としているオレを見て、フォミナがふふっと軽く笑った。
「マイス君がそういう人でちょっと安心です。女性関係で身を滅ぼす冒険者って多いですから。たまに大怪我する人もいますからね」
「それは勘弁してもらいたいな」
「それと、受付さんには注意ですよ。どこかに『新人喰い』なんてあだ名のとんでもない人がいるらしいですから」
「肝に銘じておきます」
知ってる。『新人喰い』は人間世界に潜伏しているサキュバスだ。引っかかった時にステータスが低いと、そのままバッドエンドになる。恐い。気を付けよう。
「とりあえず、宿を探そうか」
「そうですね。できれば、中心部から遠いところが有り難いです」
何でも、ここでは彼女の姉が聖騎士として務めているらしい。身内での立場がちょっと微妙なフォミナは会いたくないようだった。
「わかった。町外れ……はちょっと心配だから。少し離れたところで探そう」
「助かります。ダンジョンとか、お店との距離も考えた方が良いですよね」
「たしかに。早めに行こうか」
景色を堪能したオレ達は、和やかに話しながら宿探しへと移行した。
宿は結構簡単に決まった。町の北側、白い城壁よりの中心から離れた場所。大通りから一本入った先にある、静かな通り沿いにある『白い翼』亭という小綺麗な宿を、オレ達は拠点とした。
この町の店、白のなんとかという名前が本当に多い。たしかにどれも壁が白いけどさ。
『白い翼』亭で取った部屋は、以前よりもちょっと広い。室内のテーブルの横には椅子が二つ置かれている。おかげでちょっと宿代も高いんだけれど、それはこれから稼ぐから何とかなるはずだ。
「いい宿が見つかって良かった。落ちついてるから、しっかり休めそうだ」
「平気なんですか? もっと安い宿もありましたよ?」
経済感覚がしっかりしているフォミナが言う。先にここが気に入ったのは彼女だが、値段を聞いて諦めてるところをオレが押したという流れだった。
「金の方は大丈夫だよ。ここならフォミナが頼りになるしね」
「そうですね。ここのダンジョンと言えば、旧大聖堂。聖職者の私が頑張れば、宿代くらい心配ないはずです」
この地の主なダンジョンは、町外れにある旧大聖堂。かつての姿は失われ、アンデッドの巣窟になっている場所だ。
「いや、行くのはそこじゃないよ」
「え?」
ターンアンデッドを使えるフォミナの出番というのは確かにあっている。
ただし、行き先が違う。これから行くのはもっと実入りのいいところだ。
「オレ達が行くのは流血の宮殿だよ」
「…………」
高レベル向けダンジョンの名前を聞いた瞬間、フォミナが表情を白くして固まった。
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