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第13話:流血の宮殿
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「ほ、ほんとに来ちゃった……大丈夫かな」
「大丈夫だよ。……ヤバそうなら逃げるし」
「ほんとに大丈夫なんですよね!? 私、マイス君のこと結構信じてるんですよ!?」
本気で怯えるフォミナをなだめつつ、オレ達は歩く。
行き先はミレスの町の北。森の奥に突如現れる巨大な建築物に、オレ達は足を踏み入れるのだ。
ミレスの町と同じく白を基調としたその建物は流血の宮殿。
中には不死者の王と呼ばれる吸血鬼が住まうといわれる、非常に危険なダンジョンである。
ゲーム的には攻略レベル八〇の高難度ダンジョン。クリアとは関係ない場所で、訪れなくても良いけれど、挑戦すると色々と良いものが手に入る。
多分、今のオレ達のレベルは三〇台後半なので、レベル的には来ちゃいけない場所だ。ただ、やりようはあるし、上手くすればレベリングの時間を節約できる。
「聖職者として本能的な恐怖を覚えるんですけれど、マイス君は平気なんですか?」
「? 特になにも感じないけど」
「落ちついた人だと思ってたけど、もしかして恐怖という感覚が麻痺してるんじゃ……」
「さすがにそれはないぞ。ボス相手の時は緊張したし」
「ここにいるのはミノタウロスなんて比較にならないやつですよぅ」
入り口立っただけでこの怯えよう。なんか申し訳なくなるな。でもやめない。レベリングだけでなく、ここの攻略は必須なのだ。
「できれば、中にいる吸血鬼にも会いたいんだけどな」
「ひっ……。ほ、本気で言ってるんですか?」
「できれば、だよ。とりあえず、いってみよう。ほら、装備もつけたし」
「それなんですけど、聖印二つに本当に意味があるんですか?」
疑念の目でオレを見つつ、胸に乗った十字に円を組み合わせた聖印を見せてくるフォミナ。 胸の上に鎮座しているそれは、二つ並んでいた。しかし胸に乗るのすごいな。
「オレの調べたところ、聖印にはヒール以外にもターンアンデッドにも効果があるんだ」
「ほんとかなぁ?」
本当だ。ゲームにおいて聖印はヒールの効果10%アップだけでなく、隠しパラメーターとしてターンアンデッド成功率3%アップが設定されていた。
ターンアンデッドの成功率はレベルと魔力依存で、今のフォミナだと、ここのモンスター相手だと1%あるかないかだが、聖印二つを装備することでかなり底上げできる。
「本当だよ。多分、一〇〇回に七回くらいは成功するんじゃないかな」
「なんで具体的な数字が出てくるのか凄い不思議なんですけど……」
「とりあえず行ってみよう。他の手も考えてあるし」
「……わかりました。行きましょう」
覚悟を決めたのか、オレへの信頼なのか、フォミナは流血の宮殿に入ることを了承してくれた。
「うえっ」
「いきなり来たな」
「……ぅぉー……」
入り口から堂々と入ったら、いきなりモンスターと遭遇した。
グラン・レイス。怨霊の集合体でもとびきり危険な個体。流血の宮殿の主に引き寄せられ、成長した高レベルモンスターだ。
大きさは三メートルほどだろうか、うっすらとした青白い霊体から、複数の体や顔が湧き出ては消えている、あやふやな幽霊のような見た目だ。しかし、それは見た目だけ。こいつはちゃんと物理攻撃もできる。しかも強い。
怨霊であるため物理は無効。魔法耐性も極高。状態異常なんて通用しない。
クリア後パーティーが相応の準備をしなければ倒せない、そんな敵だ。
「スリープ!」
「……………ぐぉー……」
グラン・レイスは眠りについた。やっぱずるいわ、<貫通>。
「え、嘘……。スリープが効いた? どうして?」
「ちょっとだけ特別なんだよ。それより、寝てる間にターンアンデッドをかけてくれ」
「あ、はい! ターンアンデッド!」
杖を構えたフォミナの声に応えて、グラン・レイスが白い輝きに包まれる。
「……もう一回だな」
光っただけだった。失敗だ。
「ターンアンデッド! ………ターンアンデッド!」
二回連続でやったけど失敗した。
「あの、全然効く気がしないんですけど」
振り返ったフォミナはちょっと涙目だった。
「大丈夫、そのうち効くから。魔力回復ポーション、沢山買い込んであるから頑張って」
オレの言葉にもはや拒否はできないと判断したのだろう。フォミナは覚悟を決めて、グラン・レイスに向き直った。
ちなみに、オレがスリープを選んだ理由は、ターンアンデッドが失敗した場合でも攻撃判定にならず、目覚めないからだ。最早、グラン・レイスは物騒な案山子にすぎない。
「ターンアンデッド! ターンアンデッド! ……ターンアンデッドォ!!」
この後、三四回目でターンアンデッドは成功した。
「大丈夫だよ。……ヤバそうなら逃げるし」
「ほんとに大丈夫なんですよね!? 私、マイス君のこと結構信じてるんですよ!?」
本気で怯えるフォミナをなだめつつ、オレ達は歩く。
行き先はミレスの町の北。森の奥に突如現れる巨大な建築物に、オレ達は足を踏み入れるのだ。
ミレスの町と同じく白を基調としたその建物は流血の宮殿。
中には不死者の王と呼ばれる吸血鬼が住まうといわれる、非常に危険なダンジョンである。
ゲーム的には攻略レベル八〇の高難度ダンジョン。クリアとは関係ない場所で、訪れなくても良いけれど、挑戦すると色々と良いものが手に入る。
多分、今のオレ達のレベルは三〇台後半なので、レベル的には来ちゃいけない場所だ。ただ、やりようはあるし、上手くすればレベリングの時間を節約できる。
「聖職者として本能的な恐怖を覚えるんですけれど、マイス君は平気なんですか?」
「? 特になにも感じないけど」
「落ちついた人だと思ってたけど、もしかして恐怖という感覚が麻痺してるんじゃ……」
「さすがにそれはないぞ。ボス相手の時は緊張したし」
「ここにいるのはミノタウロスなんて比較にならないやつですよぅ」
入り口立っただけでこの怯えよう。なんか申し訳なくなるな。でもやめない。レベリングだけでなく、ここの攻略は必須なのだ。
「できれば、中にいる吸血鬼にも会いたいんだけどな」
「ひっ……。ほ、本気で言ってるんですか?」
「できれば、だよ。とりあえず、いってみよう。ほら、装備もつけたし」
「それなんですけど、聖印二つに本当に意味があるんですか?」
疑念の目でオレを見つつ、胸に乗った十字に円を組み合わせた聖印を見せてくるフォミナ。 胸の上に鎮座しているそれは、二つ並んでいた。しかし胸に乗るのすごいな。
「オレの調べたところ、聖印にはヒール以外にもターンアンデッドにも効果があるんだ」
「ほんとかなぁ?」
本当だ。ゲームにおいて聖印はヒールの効果10%アップだけでなく、隠しパラメーターとしてターンアンデッド成功率3%アップが設定されていた。
ターンアンデッドの成功率はレベルと魔力依存で、今のフォミナだと、ここのモンスター相手だと1%あるかないかだが、聖印二つを装備することでかなり底上げできる。
「本当だよ。多分、一〇〇回に七回くらいは成功するんじゃないかな」
「なんで具体的な数字が出てくるのか凄い不思議なんですけど……」
「とりあえず行ってみよう。他の手も考えてあるし」
「……わかりました。行きましょう」
覚悟を決めたのか、オレへの信頼なのか、フォミナは流血の宮殿に入ることを了承してくれた。
「うえっ」
「いきなり来たな」
「……ぅぉー……」
入り口から堂々と入ったら、いきなりモンスターと遭遇した。
グラン・レイス。怨霊の集合体でもとびきり危険な個体。流血の宮殿の主に引き寄せられ、成長した高レベルモンスターだ。
大きさは三メートルほどだろうか、うっすらとした青白い霊体から、複数の体や顔が湧き出ては消えている、あやふやな幽霊のような見た目だ。しかし、それは見た目だけ。こいつはちゃんと物理攻撃もできる。しかも強い。
怨霊であるため物理は無効。魔法耐性も極高。状態異常なんて通用しない。
クリア後パーティーが相応の準備をしなければ倒せない、そんな敵だ。
「スリープ!」
「……………ぐぉー……」
グラン・レイスは眠りについた。やっぱずるいわ、<貫通>。
「え、嘘……。スリープが効いた? どうして?」
「ちょっとだけ特別なんだよ。それより、寝てる間にターンアンデッドをかけてくれ」
「あ、はい! ターンアンデッド!」
杖を構えたフォミナの声に応えて、グラン・レイスが白い輝きに包まれる。
「……もう一回だな」
光っただけだった。失敗だ。
「ターンアンデッド! ………ターンアンデッド!」
二回連続でやったけど失敗した。
「あの、全然効く気がしないんですけど」
振り返ったフォミナはちょっと涙目だった。
「大丈夫、そのうち効くから。魔力回復ポーション、沢山買い込んであるから頑張って」
オレの言葉にもはや拒否はできないと判断したのだろう。フォミナは覚悟を決めて、グラン・レイスに向き直った。
ちなみに、オレがスリープを選んだ理由は、ターンアンデッドが失敗した場合でも攻撃判定にならず、目覚めないからだ。最早、グラン・レイスは物騒な案山子にすぎない。
「ターンアンデッド! ターンアンデッド! ……ターンアンデッドォ!!」
この後、三四回目でターンアンデッドは成功した。
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