ゲームの世界に転生したら、いきなり全滅ルートに突入した件〜攻略知識を活かして、なんとかして生き延びる〜

みなかみしょう

文字の大きさ
14 / 51

第14話:狩りの成果

しおりを挟む
 三日で三百万シルバー稼いだ。

「マイス君。大変です、私の金銭感覚が崩壊しかけています……」
「奇遇だな。オレもだよ……」

 『白い翼』亭の一室で、互いに通帳を見ながら、オレとフォミナは震えていた。
 流血の宮殿におけるアンデッド狩りは、上手くいった。あそこは一階はモンスターとの遭遇率も低いし、強力だけど単体の敵が大半なのでオレ達と相性が良い。あのグラン・レイスのように不意打ちしてこないモンスターが多いのも助かった。

 そんな感じで、あの後三日ほど、流血の宮殿一階のモンスターを二人で狩りまくった結果がこの通帳だ。

 回復アイテムなどの経費を引いて、三百万シルバーの収入。単純にそれぞれ山分けした数値がオレとフォミナの通帳には刻まれている。
 二万シルバーあれば一月それなりの生活ができる世界で、三日で六年以上暮らせる収入を稼いだことになる。

「さっき、ちょっと外に出てお店に入ったんですけれど、これまで我慢しようと思ってた物が全部「あ、買えるな」みたいになっちゃって、自分の価値観が脅かされてるんです」
「わかる。オレも思ったより収入が入っちゃったから、余計なもん買いそうになってた」

 さすがはラストダンジョンよりも強い敵が出るおまけダンジョン。報酬も桁が違った。ゲームの時だと、あんまり意識してなかったけど、滅茶苦茶だ。使える金が簡単にドバドバ入って来てオレ達は取り乱していた。

 とりあえず大量の現金は恐いので、必要分だけ手持ちにして、残りはギルド併設の銀行に預けたんだけれど、受付の人が震えていたのも印象的だ。

「とにかく、気を強く持って散財しないようにしよう。生活費として見れば凄いけれど、マジックアイテムを買ったりすればすぐ無くなる金額だし」
「そ、そうですね。装備品って、高いものが多いですし」

 高難易度ダンジョンの報酬も天井知らずだが、冒険者向きの装備だって天井知らずなのだ。状態異常対策なんかの、使える装備品はおしなべて百万以上する。まだ慌てるような貯金じゃない。

「とりあえず、収入のことは一度置いておこう。豪遊は後回しだ。どうせこれからもっと増えるし」
「そ、そうですね。ちょっと取り乱しちゃいました。余裕があるのはいいことです」

 どうにか金銭面の激変を飲み込めたので、オレは次の話題を振る。

「そろそろ行けると思うんだよね。二次職」
「それはさすがに……いえ、そうでもないのかな? あれだけ強力なモンスターを倒したんで、私達もかなり強くなってますもんね」

 こちらの方は思った以上に素直に受け入れられた。

「どうしたんですか、マイス君?」
「いや、意外なほど素直な反応で驚いた」
「授業をちゃんと受けてなかったんですね。モンスターは倒されたとき魔石になりますが、それとは別に倒した者も魔力を取り込んで力に変えるんです。だから、私達は相当な魔力を手に入れたはずです」
「おぉ……。そうだったのか」

 この世界では経験値をそう解釈しているらしい。文明レベルが歪なくせに、こういう所は細かく考えられている。

「それに、学園卒業生はすぐに二次職になれる人が多いともいいます。私達なら、確実でしょう」

 たしかにゲームの流れとも合致する考え方だ。フォミナが疑問に思わないなら、ちょうどいい。

「じゃあ、今日は一日休みにして、転職と買い物にしようか」
「はい。楽しみです、転職も買い物も」

 これでオレはメイジからウィザードへ。フォミナはクレリックからプリーストへと転職できる。とれる選択肢が増えるんで色々できるようになるぞ。装備品も考えないと……。

「では、私は着替えて準備して来ますので、一時間後に」
「ああ、よろしく」

 そう言ってフォミナが退室した後に、オレは気づいた。
 なんか自然と一緒に出かけることになってないか? 道に詳しくないから助かるけど。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

処理中です...