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第14話:狩りの成果
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三日で三百万シルバー稼いだ。
「マイス君。大変です、私の金銭感覚が崩壊しかけています……」
「奇遇だな。オレもだよ……」
『白い翼』亭の一室で、互いに通帳を見ながら、オレとフォミナは震えていた。
流血の宮殿におけるアンデッド狩りは、上手くいった。あそこは一階はモンスターとの遭遇率も低いし、強力だけど単体の敵が大半なのでオレ達と相性が良い。あのグラン・レイスのように不意打ちしてこないモンスターが多いのも助かった。
そんな感じで、あの後三日ほど、流血の宮殿一階のモンスターを二人で狩りまくった結果がこの通帳だ。
回復アイテムなどの経費を引いて、三百万シルバーの収入。単純にそれぞれ山分けした数値がオレとフォミナの通帳には刻まれている。
二万シルバーあれば一月それなりの生活ができる世界で、三日で六年以上暮らせる収入を稼いだことになる。
「さっき、ちょっと外に出てお店に入ったんですけれど、これまで我慢しようと思ってた物が全部「あ、買えるな」みたいになっちゃって、自分の価値観が脅かされてるんです」
「わかる。オレも思ったより収入が入っちゃったから、余計なもん買いそうになってた」
さすがはラストダンジョンよりも強い敵が出るおまけダンジョン。報酬も桁が違った。ゲームの時だと、あんまり意識してなかったけど、滅茶苦茶だ。使える金が簡単にドバドバ入って来てオレ達は取り乱していた。
とりあえず大量の現金は恐いので、必要分だけ手持ちにして、残りはギルド併設の銀行に預けたんだけれど、受付の人が震えていたのも印象的だ。
「とにかく、気を強く持って散財しないようにしよう。生活費として見れば凄いけれど、マジックアイテムを買ったりすればすぐ無くなる金額だし」
「そ、そうですね。装備品って、高いものが多いですし」
高難易度ダンジョンの報酬も天井知らずだが、冒険者向きの装備だって天井知らずなのだ。状態異常対策なんかの、使える装備品はおしなべて百万以上する。まだ慌てるような貯金じゃない。
「とりあえず、収入のことは一度置いておこう。豪遊は後回しだ。どうせこれからもっと増えるし」
「そ、そうですね。ちょっと取り乱しちゃいました。余裕があるのはいいことです」
どうにか金銭面の激変を飲み込めたので、オレは次の話題を振る。
「そろそろ行けると思うんだよね。二次職」
「それはさすがに……いえ、そうでもないのかな? あれだけ強力なモンスターを倒したんで、私達もかなり強くなってますもんね」
こちらの方は思った以上に素直に受け入れられた。
「どうしたんですか、マイス君?」
「いや、意外なほど素直な反応で驚いた」
「授業をちゃんと受けてなかったんですね。モンスターは倒されたとき魔石になりますが、それとは別に倒した者も魔力を取り込んで力に変えるんです。だから、私達は相当な魔力を手に入れたはずです」
「おぉ……。そうだったのか」
この世界では経験値をそう解釈しているらしい。文明レベルが歪なくせに、こういう所は細かく考えられている。
「それに、学園卒業生はすぐに二次職になれる人が多いともいいます。私達なら、確実でしょう」
たしかにゲームの流れとも合致する考え方だ。フォミナが疑問に思わないなら、ちょうどいい。
「じゃあ、今日は一日休みにして、転職と買い物にしようか」
「はい。楽しみです、転職も買い物も」
これでオレはメイジからウィザードへ。フォミナはクレリックからプリーストへと転職できる。とれる選択肢が増えるんで色々できるようになるぞ。装備品も考えないと……。
「では、私は着替えて準備して来ますので、一時間後に」
「ああ、よろしく」
そう言ってフォミナが退室した後に、オレは気づいた。
なんか自然と一緒に出かけることになってないか? 道に詳しくないから助かるけど。
「マイス君。大変です、私の金銭感覚が崩壊しかけています……」
「奇遇だな。オレもだよ……」
『白い翼』亭の一室で、互いに通帳を見ながら、オレとフォミナは震えていた。
流血の宮殿におけるアンデッド狩りは、上手くいった。あそこは一階はモンスターとの遭遇率も低いし、強力だけど単体の敵が大半なのでオレ達と相性が良い。あのグラン・レイスのように不意打ちしてこないモンスターが多いのも助かった。
そんな感じで、あの後三日ほど、流血の宮殿一階のモンスターを二人で狩りまくった結果がこの通帳だ。
回復アイテムなどの経費を引いて、三百万シルバーの収入。単純にそれぞれ山分けした数値がオレとフォミナの通帳には刻まれている。
二万シルバーあれば一月それなりの生活ができる世界で、三日で六年以上暮らせる収入を稼いだことになる。
「さっき、ちょっと外に出てお店に入ったんですけれど、これまで我慢しようと思ってた物が全部「あ、買えるな」みたいになっちゃって、自分の価値観が脅かされてるんです」
「わかる。オレも思ったより収入が入っちゃったから、余計なもん買いそうになってた」
さすがはラストダンジョンよりも強い敵が出るおまけダンジョン。報酬も桁が違った。ゲームの時だと、あんまり意識してなかったけど、滅茶苦茶だ。使える金が簡単にドバドバ入って来てオレ達は取り乱していた。
とりあえず大量の現金は恐いので、必要分だけ手持ちにして、残りはギルド併設の銀行に預けたんだけれど、受付の人が震えていたのも印象的だ。
「とにかく、気を強く持って散財しないようにしよう。生活費として見れば凄いけれど、マジックアイテムを買ったりすればすぐ無くなる金額だし」
「そ、そうですね。装備品って、高いものが多いですし」
高難易度ダンジョンの報酬も天井知らずだが、冒険者向きの装備だって天井知らずなのだ。状態異常対策なんかの、使える装備品はおしなべて百万以上する。まだ慌てるような貯金じゃない。
「とりあえず、収入のことは一度置いておこう。豪遊は後回しだ。どうせこれからもっと増えるし」
「そ、そうですね。ちょっと取り乱しちゃいました。余裕があるのはいいことです」
どうにか金銭面の激変を飲み込めたので、オレは次の話題を振る。
「そろそろ行けると思うんだよね。二次職」
「それはさすがに……いえ、そうでもないのかな? あれだけ強力なモンスターを倒したんで、私達もかなり強くなってますもんね」
こちらの方は思った以上に素直に受け入れられた。
「どうしたんですか、マイス君?」
「いや、意外なほど素直な反応で驚いた」
「授業をちゃんと受けてなかったんですね。モンスターは倒されたとき魔石になりますが、それとは別に倒した者も魔力を取り込んで力に変えるんです。だから、私達は相当な魔力を手に入れたはずです」
「おぉ……。そうだったのか」
この世界では経験値をそう解釈しているらしい。文明レベルが歪なくせに、こういう所は細かく考えられている。
「それに、学園卒業生はすぐに二次職になれる人が多いともいいます。私達なら、確実でしょう」
たしかにゲームの流れとも合致する考え方だ。フォミナが疑問に思わないなら、ちょうどいい。
「じゃあ、今日は一日休みにして、転職と買い物にしようか」
「はい。楽しみです、転職も買い物も」
これでオレはメイジからウィザードへ。フォミナはクレリックからプリーストへと転職できる。とれる選択肢が増えるんで色々できるようになるぞ。装備品も考えないと……。
「では、私は着替えて準備して来ますので、一時間後に」
「ああ、よろしく」
そう言ってフォミナが退室した後に、オレは気づいた。
なんか自然と一緒に出かけることになってないか? 道に詳しくないから助かるけど。
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