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第15話:二次職
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この世界において、冒険者の転職は基本的に神殿で行う。なんでも、冒険者の職業は神の祝福がどうとかいう理屈があり、神殿が生業としているとのことだ。
通常は町にある神殿が仕事の一環として取り扱っていて、転職用の部屋が用意されている。 ここ、ミレスの町は少し特殊で、大聖堂がある宗教都市でもある関係で、転職専用の施設が別に設けられていた。
転職堂と呼ばれるその場所は、オレからするといかにも教会めいた、こじんまりとした建物だった。町の通り沿いにあるが、人の出入りは少なめ。表に聖印をあしらった白い建物は、悪くない印象だった。
「結構空いてるな……」
「大聖堂でも転職できますから。観光がてらそちらで済ませる人も多いようです」
「なるほど」
混んでいないのはありがたい。オレ達がわざわざこちらを選んだのは、フォミナが大聖堂に近づくのを嫌がったためだ。親族と接触する確率が跳ね上がるらしい。
「じゃあ、入るか。なんかちょっと緊張するな、こういうの」
「マイス君。事前に言っておきます。がっかりしないでくださいね」
「?」
謎の忠告を受けつつ、オレ達は転職堂の中に足を踏み入れた。
転職堂の中は、見た目通りだ。入ってすぐに礼拝するための広間。それは教会みたいな見た目と変わらない。ただ、奥の方に用意されているのが聖職者が話すための場所ではなく、転職用の祭壇であることが大きく違った。
「ようこそ、転職堂へ。お一人ずつ中にお進みください。冒険者の方は身分証明書をこちらへ。はい、メイジの方ですね、どうぞ」
「あ、はい」
中に入るなり、クレリックの女の人が事務的なことを言って、オレの冒険者証をチェック。書類に書き込むと、「順路」と書かれた通路に誘導された。
ちなみに、この冒険者証、ステータスこそ見えないが、職業や経歴が魔法的に記録されているという優れものである。こういう便利アイテムを用意してるなら、もうちょっと頑張ってレベルくらい表記しておいて欲しい。
「順路に沿ってお進みください。すぐに順番が来ますので。では、次の方」
オレに続いてフォミナが受付をするのを背後に感じつつ、順路を進む。
「ようこそ。転職堂へ。まずこの書類を見て間違いがないか確認してください」
順路を進むと最初に見えた祭壇の前に出た。
そこには多分プリーストと思われる中年男性が待っていて、書類を一枚、手渡された。
そこにはオレの氏名と現在の職業、転職後の職業の他、一度転職すると戻せないことなどの注意事項が書かれていた。
最後の方に『上記の事項に同意します』とまで書いてある。
「なんかお役所みたいだな……」
「そう言わないでください。厳かにいきたいけれど、我々も仕事でね……」
穏やかにいう男性プリースト。一応神様の祝福で二次職になるはずだけれど、組織的にそれを行うとなると、色々事情があるんだろう。なんだか現代的で微妙な気持になるな。
とにかく、二次職にならなきゃ話にならないので、同意のサインをする。
「はい。承りました。では、こちらにどうぞ」
プリーストが書類を確認すると、いよいよ祭壇の前に通された。
祭壇はオレの胸くらいの高さの石でできた台だ。その上部には複雑な紋様の魔法陣が刻まれている。
「これは祝福の法陣、貴方がそちら側に手の平を置き、私が祈ることで神から新たな力を授かることが出来ます。さあ、手をどうぞ」
「おお、これが……」
祝福の法陣には、二カ所対になるように手を置くための四角形があった。促されるまま、オレは目の前のそこに右手の平を置く。
プリーストのほうも手を置き、こちらからわかるくらい大きく息を吸った。
「偉大なる二神よ、ここなる者に、新たなる力を授けん! はい、終わりです」
「え、もう?」
特にエフェクトとか発生することも無く、儀式が終わった。一瞬、台座の表面が光ってそれだけだ。
「問題ありませんよ。ほら、法陣が光っているでしょう。あの瞬間、神の祝福で貴方の力が解放されたのです。今の貴方はメイジではなく、ウィザードですよ。はい、証明書」
「あ、はい。ありがとうございます」
流れるような動作で転職証明書と書かれた書類を受け渡された。ちゃんとオレがウィザードになりましたという書面になっている。なんとも実感のない転職だ。
「そうそう。希望があれば二次職用の服を受付で貰えますので良ければ受け取っていってください。最近は自作する人が多くて余ってるんです」
「そうなんですか。ありがたく頂戴します」
最後まで事務的な上に、なんか寂しい話まで聞いてしまった。オレもそのうち自作しようかな、服。
とにもかくにも、オレは無事に転職を完了した。なんか、役場に書類を提出するみたいな手順だったけど、とりあえずは良しとしておこう。
通常は町にある神殿が仕事の一環として取り扱っていて、転職用の部屋が用意されている。 ここ、ミレスの町は少し特殊で、大聖堂がある宗教都市でもある関係で、転職専用の施設が別に設けられていた。
転職堂と呼ばれるその場所は、オレからするといかにも教会めいた、こじんまりとした建物だった。町の通り沿いにあるが、人の出入りは少なめ。表に聖印をあしらった白い建物は、悪くない印象だった。
「結構空いてるな……」
「大聖堂でも転職できますから。観光がてらそちらで済ませる人も多いようです」
「なるほど」
混んでいないのはありがたい。オレ達がわざわざこちらを選んだのは、フォミナが大聖堂に近づくのを嫌がったためだ。親族と接触する確率が跳ね上がるらしい。
「じゃあ、入るか。なんかちょっと緊張するな、こういうの」
「マイス君。事前に言っておきます。がっかりしないでくださいね」
「?」
謎の忠告を受けつつ、オレ達は転職堂の中に足を踏み入れた。
転職堂の中は、見た目通りだ。入ってすぐに礼拝するための広間。それは教会みたいな見た目と変わらない。ただ、奥の方に用意されているのが聖職者が話すための場所ではなく、転職用の祭壇であることが大きく違った。
「ようこそ、転職堂へ。お一人ずつ中にお進みください。冒険者の方は身分証明書をこちらへ。はい、メイジの方ですね、どうぞ」
「あ、はい」
中に入るなり、クレリックの女の人が事務的なことを言って、オレの冒険者証をチェック。書類に書き込むと、「順路」と書かれた通路に誘導された。
ちなみに、この冒険者証、ステータスこそ見えないが、職業や経歴が魔法的に記録されているという優れものである。こういう便利アイテムを用意してるなら、もうちょっと頑張ってレベルくらい表記しておいて欲しい。
「順路に沿ってお進みください。すぐに順番が来ますので。では、次の方」
オレに続いてフォミナが受付をするのを背後に感じつつ、順路を進む。
「ようこそ。転職堂へ。まずこの書類を見て間違いがないか確認してください」
順路を進むと最初に見えた祭壇の前に出た。
そこには多分プリーストと思われる中年男性が待っていて、書類を一枚、手渡された。
そこにはオレの氏名と現在の職業、転職後の職業の他、一度転職すると戻せないことなどの注意事項が書かれていた。
最後の方に『上記の事項に同意します』とまで書いてある。
「なんかお役所みたいだな……」
「そう言わないでください。厳かにいきたいけれど、我々も仕事でね……」
穏やかにいう男性プリースト。一応神様の祝福で二次職になるはずだけれど、組織的にそれを行うとなると、色々事情があるんだろう。なんだか現代的で微妙な気持になるな。
とにかく、二次職にならなきゃ話にならないので、同意のサインをする。
「はい。承りました。では、こちらにどうぞ」
プリーストが書類を確認すると、いよいよ祭壇の前に通された。
祭壇はオレの胸くらいの高さの石でできた台だ。その上部には複雑な紋様の魔法陣が刻まれている。
「これは祝福の法陣、貴方がそちら側に手の平を置き、私が祈ることで神から新たな力を授かることが出来ます。さあ、手をどうぞ」
「おお、これが……」
祝福の法陣には、二カ所対になるように手を置くための四角形があった。促されるまま、オレは目の前のそこに右手の平を置く。
プリーストのほうも手を置き、こちらからわかるくらい大きく息を吸った。
「偉大なる二神よ、ここなる者に、新たなる力を授けん! はい、終わりです」
「え、もう?」
特にエフェクトとか発生することも無く、儀式が終わった。一瞬、台座の表面が光ってそれだけだ。
「問題ありませんよ。ほら、法陣が光っているでしょう。あの瞬間、神の祝福で貴方の力が解放されたのです。今の貴方はメイジではなく、ウィザードですよ。はい、証明書」
「あ、はい。ありがとうございます」
流れるような動作で転職証明書と書かれた書類を受け渡された。ちゃんとオレがウィザードになりましたという書面になっている。なんとも実感のない転職だ。
「そうそう。希望があれば二次職用の服を受付で貰えますので良ければ受け取っていってください。最近は自作する人が多くて余ってるんです」
「そうなんですか。ありがたく頂戴します」
最後まで事務的な上に、なんか寂しい話まで聞いてしまった。オレもそのうち自作しようかな、服。
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