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第33話:接触
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オレ達の心配をよそに、転職の儀式室は無事に準備が終わった。
「おお……これは凄いな」
極めて事務的だった二次職の時とは大きく違う部屋を見て、オレは正直に驚いた。
白黒二色を配された薄暗い儀式室では、複雑な法陣がうっすらと白く発光している。室内の光景からは恐怖や不気味さは感じない、むしろ荘厳な気配すら感じる。
「なんか、空気が綺麗というか、不思議な感じがする」
「あの、もしかしてこれって……」
「あなたの感じているとおりですよ。お若いプリースト」
老プリーストが厳かに頷いた。
「今、この部屋は二神のおわす場所近くにあります。神聖な気配が流れ込んでおり、部屋自体が浄化されているようなもの……ふぅ」
「あの、大丈夫ですか?」
なんかちょっと顔色が悪くなってる。この短時間でなにを。
「ご心配なく。この法陣を使うのに、少々頑張りすぎただけですので」
なるほど。神の近くにいくんだから、それなりに大変なものなんだな。二次職の時とは全然違う。
「あの、オレがどんな三次職になれるかわからないんですか?」
「ご安心ください。儀式が始まると、貴方は神の側にいき、直接そのお言葉を賜ることができます。聞くところによると、そこで三次職についての詳細を聞けるとか」
私が体験したわけではないんですがね、と言いながら老プリーストが教えてくれた。
「ちょ、直接言葉を交わせるんですか? 二神様とですか?」
横のフォミナが滅茶苦茶驚いている。そりゃそうだ、信仰の対象と直接対話できるなんて夢にも思ってなかったろう。
「残念ながら、会話というより、一方的に語りかけられるようです。また、白神様と黒神様のどちらかが現れると聞いております」
対話ではなく、お告げみたいな感じらしい。残念だ。もし話せるなら、オレがここに転生した理由とかを聞いてみたかった。
「では、お二方、お好きな方からどうぞ」
「じゃあ、オレからお願いします」
順番にこだわりがあるわけでもないので、フォミナも反対せず、オレが法陣の上に立つことになった。
「では、これより儀式を始めます。大いなる二つ神よ、ここなるものに、大いなる祝福を、その貴き場所より新たなる託宣を……」
老プリーストの祈りのような詠唱に会わせて、足下の法陣が激しく輝き。ついには部屋全体が真っ白になるほど光が満ちた。
オレの視界も白く染まり、気づけば儀式室とは別の場所にいた。
「ここが神様のいるところか……、なんもないな」
足下も含めて、全体が白く輝く空間だ。床に立ってる感触はあるけど、下を見ればなにもない。浮遊感も恐怖も感じない、不思議と安心する場所だった。
『外より招きし者よ』
辺りを見回していると、突然頭の中に声が響いた。空間に強烈な気配が満ちる。上下左右、あらゆる場所から圧迫感を感じる。
「これが……神様……か」
声だけで畏怖を感じさせる強烈な存在感だ。会話が成立しないというのもわかる。気配だけで、言葉のやり取りをしようなんで気が起きなくなる。
『外より招きし者よ。我は黒神と呼ばれし者。汝に運命を打ち砕く力を与えよう』
どうやら、オレの場合は黒神が三次職にしてくれるようだ。もしかしたら、招いたのもこの神様なのかもしれない。
「黒神様、あなたがオレをこの世界に招いたんですか? なにをさせようとして?」
どうにか頑張って、それだけ言葉を絞り出した。どうしても確かめたかった。確定したからといって、どうなるもんでもないけど。
『汝ならば、滅びの運命に抗えよう。最早、外なる者に命運を託すしかない故に』
いきなり話が大きくなった。世界の命運とか託されても困るんですけど。もしかして、完全にバッドエンドルートに突入してるのか、この世界?
考え込むオレをよそに、黒神は更に言葉を続ける。
『汝の魂に刻む新たな力は『エトランジェ』、外より来たりし者、この世の外に理を置く者、運命を覆す力』
「エトランジェ……?」
聞いたことのない職業だった。ゲームにない完全なオリジナル職だ。ちゃんと三次職になれるのは嬉しいけど、使い勝手がわからないのは困るぞ。
『汝の魂に、その力を刻もう。行くが良い、外なる者よ』
エトランジェについて詳しく伺いたかったが、黒神は一方的に話を打ち切った。
気がつくと、元の儀式室にいた。法陣は相変わらず薄く光り輝く、黒神に会う前と同じ場所に老プリーストとフォミナがいる。
「おかえりなさい。マイス君、どうでしたか?」
「ただいま。とりあえず、エトランジェっていうのになったらしいよ」
服装も含めて、特に変わっていない。いや、体から力が溢れてる感覚はある。三次職になるとステータスが大幅アップするはずだから、それだろう。
「上手くいったようですな。神の祝福を受けし新たな三次職の誕生を目に出来たことを光栄に思います」
疲れた顔の老プリーストがにこやかにオレを見て言った。この人、何人くらいの三次職を見れたんだろうな。
「マイス君、どうでしたか? 本当に二神様に会えるんですか?」
「いけばわかるよ。大丈夫、危険は無いから」
これは言葉より実際に体験して欲しいので、曖昧な返答をしておいた。
「では、フォミナさん。貴方もどうぞ。どんなものか、すぐにわかりますよ」
「は、はい!」
老プリーストに促されて、フォミナも法陣の上に乗る。
再び祈りの詠唱が聞こえたと思うと、部屋全体が輝き、今度は彼女が白い世界へと旅立っていく。
とりあえずは、これで目標を一つ達成できそうだ。
「おお……これは凄いな」
極めて事務的だった二次職の時とは大きく違う部屋を見て、オレは正直に驚いた。
白黒二色を配された薄暗い儀式室では、複雑な法陣がうっすらと白く発光している。室内の光景からは恐怖や不気味さは感じない、むしろ荘厳な気配すら感じる。
「なんか、空気が綺麗というか、不思議な感じがする」
「あの、もしかしてこれって……」
「あなたの感じているとおりですよ。お若いプリースト」
老プリーストが厳かに頷いた。
「今、この部屋は二神のおわす場所近くにあります。神聖な気配が流れ込んでおり、部屋自体が浄化されているようなもの……ふぅ」
「あの、大丈夫ですか?」
なんかちょっと顔色が悪くなってる。この短時間でなにを。
「ご心配なく。この法陣を使うのに、少々頑張りすぎただけですので」
なるほど。神の近くにいくんだから、それなりに大変なものなんだな。二次職の時とは全然違う。
「あの、オレがどんな三次職になれるかわからないんですか?」
「ご安心ください。儀式が始まると、貴方は神の側にいき、直接そのお言葉を賜ることができます。聞くところによると、そこで三次職についての詳細を聞けるとか」
私が体験したわけではないんですがね、と言いながら老プリーストが教えてくれた。
「ちょ、直接言葉を交わせるんですか? 二神様とですか?」
横のフォミナが滅茶苦茶驚いている。そりゃそうだ、信仰の対象と直接対話できるなんて夢にも思ってなかったろう。
「残念ながら、会話というより、一方的に語りかけられるようです。また、白神様と黒神様のどちらかが現れると聞いております」
対話ではなく、お告げみたいな感じらしい。残念だ。もし話せるなら、オレがここに転生した理由とかを聞いてみたかった。
「では、お二方、お好きな方からどうぞ」
「じゃあ、オレからお願いします」
順番にこだわりがあるわけでもないので、フォミナも反対せず、オレが法陣の上に立つことになった。
「では、これより儀式を始めます。大いなる二つ神よ、ここなるものに、大いなる祝福を、その貴き場所より新たなる託宣を……」
老プリーストの祈りのような詠唱に会わせて、足下の法陣が激しく輝き。ついには部屋全体が真っ白になるほど光が満ちた。
オレの視界も白く染まり、気づけば儀式室とは別の場所にいた。
「ここが神様のいるところか……、なんもないな」
足下も含めて、全体が白く輝く空間だ。床に立ってる感触はあるけど、下を見ればなにもない。浮遊感も恐怖も感じない、不思議と安心する場所だった。
『外より招きし者よ』
辺りを見回していると、突然頭の中に声が響いた。空間に強烈な気配が満ちる。上下左右、あらゆる場所から圧迫感を感じる。
「これが……神様……か」
声だけで畏怖を感じさせる強烈な存在感だ。会話が成立しないというのもわかる。気配だけで、言葉のやり取りをしようなんで気が起きなくなる。
『外より招きし者よ。我は黒神と呼ばれし者。汝に運命を打ち砕く力を与えよう』
どうやら、オレの場合は黒神が三次職にしてくれるようだ。もしかしたら、招いたのもこの神様なのかもしれない。
「黒神様、あなたがオレをこの世界に招いたんですか? なにをさせようとして?」
どうにか頑張って、それだけ言葉を絞り出した。どうしても確かめたかった。確定したからといって、どうなるもんでもないけど。
『汝ならば、滅びの運命に抗えよう。最早、外なる者に命運を託すしかない故に』
いきなり話が大きくなった。世界の命運とか託されても困るんですけど。もしかして、完全にバッドエンドルートに突入してるのか、この世界?
考え込むオレをよそに、黒神は更に言葉を続ける。
『汝の魂に刻む新たな力は『エトランジェ』、外より来たりし者、この世の外に理を置く者、運命を覆す力』
「エトランジェ……?」
聞いたことのない職業だった。ゲームにない完全なオリジナル職だ。ちゃんと三次職になれるのは嬉しいけど、使い勝手がわからないのは困るぞ。
『汝の魂に、その力を刻もう。行くが良い、外なる者よ』
エトランジェについて詳しく伺いたかったが、黒神は一方的に話を打ち切った。
気がつくと、元の儀式室にいた。法陣は相変わらず薄く光り輝く、黒神に会う前と同じ場所に老プリーストとフォミナがいる。
「おかえりなさい。マイス君、どうでしたか?」
「ただいま。とりあえず、エトランジェっていうのになったらしいよ」
服装も含めて、特に変わっていない。いや、体から力が溢れてる感覚はある。三次職になるとステータスが大幅アップするはずだから、それだろう。
「上手くいったようですな。神の祝福を受けし新たな三次職の誕生を目に出来たことを光栄に思います」
疲れた顔の老プリーストがにこやかにオレを見て言った。この人、何人くらいの三次職を見れたんだろうな。
「マイス君、どうでしたか? 本当に二神様に会えるんですか?」
「いけばわかるよ。大丈夫、危険は無いから」
これは言葉より実際に体験して欲しいので、曖昧な返答をしておいた。
「では、フォミナさん。貴方もどうぞ。どんなものか、すぐにわかりますよ」
「は、はい!」
老プリーストに促されて、フォミナも法陣の上に乗る。
再び祈りの詠唱が聞こえたと思うと、部屋全体が輝き、今度は彼女が白い世界へと旅立っていく。
とりあえずは、これで目標を一つ達成できそうだ。
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