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第39話:告白
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オレとフォミナは領主の別邸に住み込むことになった。
別邸といっても立派な屋敷だ。広い倉庫に庭まで備えている。こうして思うと、戦時も想定しての作りな気がする。塀がやたら高いし、町からの脱出路まである。
オレとフォミナは屋敷の隅に部屋をもらい、そこに落ちついた。部屋の位置はオレ達の希望だ。周りに人が来にくい場所の方が気楽だし、秘密の話をしやすい。
そんなわけで、別邸に引っ越しを済ませた初日、オレは部屋にフォミナを呼んでいた。
「マイス君……大切なお話があるって……」
「ああ、オレ達にとって、とても大切なことを伝えたい」
緊張した面持ちで、オレ達は机を挟んで向かい合っていた。
フォミナは屋敷で用意してくれた上等な部屋着に身を包み、なんか良い匂いが漂ってくる。石鹸にかぎらず、風呂に色々並んでいたから、それを使ったんだろう。
そんな彼女は伊達眼鏡をかけていて、今日も良く似合っている。
「……ど、どうぞ。覚悟はできています」
「…………」
ちょっと思った。もしかして、告白とかするタイミングだと思われてるんだろうか。
大変申し訳ないが、ちょっと違う。告白という意味では正しいんだけれど、言うのは全然違うことだ。
「フォミナ、これからのオレの話を聞いて、決めて欲しい。今後もオレと一緒に行動するかを」
「今更ですよ、マイス君。私は……って、なんですこれ?」
オレは机の上に大量の書類を置いた。
それは、転生以降書いている、『茜色の空、暁の翼』についての攻略情報だ。最初は雑に書き散らしていたが、今はちょっとした書物になっている。いうなれば、手書きの攻略本だ。
「これは、オレが知ってるこの世界についての情報だ」
「情報……これって……学園の人達のこと? エリアさんも?」
フォミナが、ページをいくつかめくり、ヒロインについてまとめた項目に目を通す。
「……なんか、物語みたいに、私達のことがまとめられてますね。それに、妙に詳しいですし」
どういうことですか? と動揺しながらフォミナがこちらを見る。その目は、これまで一度もオレに見せたことのない感情が乗っていた。
未知のものを見る、怯えの感情だ。
こういう目で見られるのは辛いな。
「オレには別の世界の記憶がある。それで、この世界のことを知っている。これから話すことを聞いて、フォミナが決めてくれ」
オレは彼女に全てを話すことにした。
このまま行けば、フォミナは本格的に戦乱に巻き込まれる。それは、ゲームでの彼女には無かった展開だ。普通に生き残れるのに危険な最前線に同行させてしまうのは本意じゃない。
これから起こることを知った上で、判断して欲しい。
その上で、オレとのパーティーを解散することになっても構わない。
なにも知らずについてきて命の危険に晒すことは、オレが許容できなかった。
「……わかりました。全部聞いてから、決めます」
落ちつくためか、深呼吸した後、しっかりとこちらを見てフォミナが言った。
フォミナへの説明は、結構早く終わった。以前、クラム様に話した経験があるおかげで、要点を掴むのが上手くなったのかもしれない。それと、目の前に資料もあるし、フォミナは素直に聞いてくれるのが助かった。
それでもたっぷり二時間かけて、オレは自身についての説明を終えた。
「一応、把握はしました。色々と理解は追いつきませんが、マイス君に別世界の記憶があって、それを頼りに行動していたんですね」
「そう。なんでこうなったか、元のマイスがどうなったかはわからないけどな」
話を聞いてるうち、ずっと難しい顔をしていたフォミナが、むーんと唸る。
「そういえば、卒業の少し前に行方不明になってましたね。大怪我して治療されてたとか……」
「そんなことがあったのか……」
ゲームだと普通に卒業してたはずだけど、なんかあったのかな。実家から縁切りされたから、それ関連かもしれない。
「オレを気持ち悪いと思うなら、遠慮無くパーティー解散にしてくれていい。それで、安全な所に逃げるといい。できることなら国外に……」
「馬鹿にしないでください」
にっこりと笑いながら、フォミナははっきりとオレに言った。
「今さら私に、マイス君と別れる選択肢なんてないですよ。一緒にいるうちに、覚悟なんて決まっちゃってます」
「しかしな、ここにあるように状況はオレの記憶と違って来てるんだ。だから、フォミナの安全は保証できないんだよ」
「だからこそ、力になりたいんです。それとも、私の協力はいりませんか?」
フォミナの決意は固そうだった。あと、笑顔が恐い。もしかして、ちょっと怒ってるかもしれない。
「実をいうと、かなり助かる。フォミナがいると心強い」
これは事実だ。不測の事態があった時、フォミナの能力はかなり頼りになる。
「この本によると、メイクベのダンジョンで放っておいても私は助かったんですよね。でも、マイス君は見捨てなかった。だから、同じです」
「気持ち悪くないのか? 別人だぞ?」
「むしろ納得しました。学園の頃と別人みたいになってましたし」
なるほど、そうくるか。
「と、いうわけでこれからも宜しくお願いしますね、マイス君」
「ああ、こちらこそ、よろしく。フォミナ」
ようやくだけど、本当のパーティになれたって感じだな。
「ふふっ、これは二人だけの秘密ですね、マイス君」
「いや、クラム様に会った時に話してあるんだけど」
「…………マイス君」
なんか、急に雰囲気が恐くなった。
「明日もお話しましょうね。前の世界の話を聞きたいです。あと、他にも色々と話したいことがあります」
「はい」
下手なことをいうと恐そうだったので、オレは素直に応じておいた。
別邸といっても立派な屋敷だ。広い倉庫に庭まで備えている。こうして思うと、戦時も想定しての作りな気がする。塀がやたら高いし、町からの脱出路まである。
オレとフォミナは屋敷の隅に部屋をもらい、そこに落ちついた。部屋の位置はオレ達の希望だ。周りに人が来にくい場所の方が気楽だし、秘密の話をしやすい。
そんなわけで、別邸に引っ越しを済ませた初日、オレは部屋にフォミナを呼んでいた。
「マイス君……大切なお話があるって……」
「ああ、オレ達にとって、とても大切なことを伝えたい」
緊張した面持ちで、オレ達は机を挟んで向かい合っていた。
フォミナは屋敷で用意してくれた上等な部屋着に身を包み、なんか良い匂いが漂ってくる。石鹸にかぎらず、風呂に色々並んでいたから、それを使ったんだろう。
そんな彼女は伊達眼鏡をかけていて、今日も良く似合っている。
「……ど、どうぞ。覚悟はできています」
「…………」
ちょっと思った。もしかして、告白とかするタイミングだと思われてるんだろうか。
大変申し訳ないが、ちょっと違う。告白という意味では正しいんだけれど、言うのは全然違うことだ。
「フォミナ、これからのオレの話を聞いて、決めて欲しい。今後もオレと一緒に行動するかを」
「今更ですよ、マイス君。私は……って、なんですこれ?」
オレは机の上に大量の書類を置いた。
それは、転生以降書いている、『茜色の空、暁の翼』についての攻略情報だ。最初は雑に書き散らしていたが、今はちょっとした書物になっている。いうなれば、手書きの攻略本だ。
「これは、オレが知ってるこの世界についての情報だ」
「情報……これって……学園の人達のこと? エリアさんも?」
フォミナが、ページをいくつかめくり、ヒロインについてまとめた項目に目を通す。
「……なんか、物語みたいに、私達のことがまとめられてますね。それに、妙に詳しいですし」
どういうことですか? と動揺しながらフォミナがこちらを見る。その目は、これまで一度もオレに見せたことのない感情が乗っていた。
未知のものを見る、怯えの感情だ。
こういう目で見られるのは辛いな。
「オレには別の世界の記憶がある。それで、この世界のことを知っている。これから話すことを聞いて、フォミナが決めてくれ」
オレは彼女に全てを話すことにした。
このまま行けば、フォミナは本格的に戦乱に巻き込まれる。それは、ゲームでの彼女には無かった展開だ。普通に生き残れるのに危険な最前線に同行させてしまうのは本意じゃない。
これから起こることを知った上で、判断して欲しい。
その上で、オレとのパーティーを解散することになっても構わない。
なにも知らずについてきて命の危険に晒すことは、オレが許容できなかった。
「……わかりました。全部聞いてから、決めます」
落ちつくためか、深呼吸した後、しっかりとこちらを見てフォミナが言った。
フォミナへの説明は、結構早く終わった。以前、クラム様に話した経験があるおかげで、要点を掴むのが上手くなったのかもしれない。それと、目の前に資料もあるし、フォミナは素直に聞いてくれるのが助かった。
それでもたっぷり二時間かけて、オレは自身についての説明を終えた。
「一応、把握はしました。色々と理解は追いつきませんが、マイス君に別世界の記憶があって、それを頼りに行動していたんですね」
「そう。なんでこうなったか、元のマイスがどうなったかはわからないけどな」
話を聞いてるうち、ずっと難しい顔をしていたフォミナが、むーんと唸る。
「そういえば、卒業の少し前に行方不明になってましたね。大怪我して治療されてたとか……」
「そんなことがあったのか……」
ゲームだと普通に卒業してたはずだけど、なんかあったのかな。実家から縁切りされたから、それ関連かもしれない。
「オレを気持ち悪いと思うなら、遠慮無くパーティー解散にしてくれていい。それで、安全な所に逃げるといい。できることなら国外に……」
「馬鹿にしないでください」
にっこりと笑いながら、フォミナははっきりとオレに言った。
「今さら私に、マイス君と別れる選択肢なんてないですよ。一緒にいるうちに、覚悟なんて決まっちゃってます」
「しかしな、ここにあるように状況はオレの記憶と違って来てるんだ。だから、フォミナの安全は保証できないんだよ」
「だからこそ、力になりたいんです。それとも、私の協力はいりませんか?」
フォミナの決意は固そうだった。あと、笑顔が恐い。もしかして、ちょっと怒ってるかもしれない。
「実をいうと、かなり助かる。フォミナがいると心強い」
これは事実だ。不測の事態があった時、フォミナの能力はかなり頼りになる。
「この本によると、メイクベのダンジョンで放っておいても私は助かったんですよね。でも、マイス君は見捨てなかった。だから、同じです」
「気持ち悪くないのか? 別人だぞ?」
「むしろ納得しました。学園の頃と別人みたいになってましたし」
なるほど、そうくるか。
「と、いうわけでこれからも宜しくお願いしますね、マイス君」
「ああ、こちらこそ、よろしく。フォミナ」
ようやくだけど、本当のパーティになれたって感じだな。
「ふふっ、これは二人だけの秘密ですね、マイス君」
「いや、クラム様に会った時に話してあるんだけど」
「…………マイス君」
なんか、急に雰囲気が恐くなった。
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「はい」
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