173 / 380
4号VSマークⅢ
戦車試験走行会
しおりを挟む
ここは、独逸帝国だ、新型戦車の総帥へのお披露目会の会場だ。 4号ではない、5号戦車だ。 総帥は戦車好きでも知られていた。 軍事予算も戦車開発には潤沢に対応したのだ。 それで、戦車は独逸帝国との評判まで聞えるようになった。 戦車開発者のひとり、ポルソン博士が総帥に説明だ。 「5号は4号の欠点であった、重さを克服した戦車です。」 「うむ、55トンは重いからな。」 4号は重さ55トンだ。 「で、5号は10トンの軽量化に成功しました。」つまり重さが45トンだ。 「そうか、期待しておるぞ。」 「では、試験走行のお披露目です。」 博士が手で合図だ。 ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・と4号より、すこし小さい戦車が顔を出す。 「戦車砲は88ミリライフル砲ですが、以前より速く装填できます。」 「つまり、速く撃てるのか。」 「ハイ、以前は1分間2発が5号は3発撃てます。」 博士が胸を張る。 さらに、「戦車の前面は角度を斜めにして対弾性能を高めました、それで装甲を軽くできました。」 早い話が薄くしたのだ。 10センチを8センチにした。 しかし斜め装甲で以前より対弾性能があがったのだ。 「エンジンは12気筒のガソリン700PSです。」 総帥が「4号と同じかな。」 「お言葉ですが、車体が軽い分、速度がでます。」 「それに、エンジンの信頼性が以前より増しました。」 独逸帝国も兵器のツボを心得ている。 いざ、で故障では負けてしまう。 博士は続ける、「最高速度は50キロです、巡航は40キロで、ガソリン1リットルで160メートル走行できます。」 4号はガソリン1リットルで、80メートルだ。 2倍の燃費向上だ。 博士は自信満々であった。 総帥がふと思ったことを口にした。 「日本のトヨス戦車にシナでヤラれたが。」 博士は、「シナの戦車運用の不慣れが原因であると、わが国の兵器省が結論を出しました。」 「それは、我輩もきいているが。」 「ご心配には及びません、それにアレは旧タイプの4号でした。」 「当然だ、最新なぞ渡せないからな。」 さきの日本海でのシナ潜水艦の沈没事故は記憶に新しいのだ。 総帥は続ける、「日本が陸戦で強大になる前に、何とかせねば勝てないからな、博士には大いに期待しておる。」 「ハイ、総帥 わが国に栄光を。」 ・・・・・その戦車お披露目会をコックがソーセージを焼きながら、何食わぬ顔で見ていた。 会場で飲み物やツマミが将校や見学している有力者に振舞われるのだ。 わが世の春を謳歌する独逸帝国だ。 ・・・・ここは、英国情報部だ。 ダブルオーなんとかがいるところだ。 「独逸のエージェントから写真が届いた。」 「うむ、新型戦車だな。」 「えーっ、と5号と書いてあります。」 「ここに写っているのは独逸帝国のゲッペルンじゃないか。」 「くそ、もう新型を造りやがった。」 「シナでヤラれたのが余程こたえたのでしょう。」 「これを、焼き増しして米国と日本に廻せ。」 「わが国の戦車も相手がこれでは危ないぞ。」 「あ、あ、陸軍工廠に、この写真を渡して、対策をだ。」・・・・民主主義陣営も、うかうかしてはいられない。 まだ、マークⅢは生産ラインには載っていないのだ。
1
あなたにおすすめの小説
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
札束艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
生まれついての勝負師。
あるいは、根っからのギャンブラー。
札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。
時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。
そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。
亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。
戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。
マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。
マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。
高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。
科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
改造空母機動艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。
そして、昭和一六年一二月。
日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。
「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
天竜川で逢いましょう 〜日本史教師が石田三成とか無理なので平和な世界を目指します〜
岩 大志
歴史・時代
ごくありふれた高校教師津久見裕太は、ひょんなことから頭を打ち、気を失う。
けたたましい轟音に気付き目を覚ますと多数の軍旗。
髭もじゃの男に「いよいよですな。」と、言われ混乱する津久見。
戦国時代の大きな分かれ道のド真ん中に転生した津久見はどうするのか!!???
そもそも現代人が生首とか無理なので、平和な世の中を目指そうと思います。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる