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総帥死すⅡ
まさか、本当では無いといってくれ。
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独逸帝国精鋭の近衛バイク隊は、テロか、何らかの襲撃か、と思い急ぐ。 V型2気筒1300ccのエンジンがドドドドドドドッと吼える。 ハンドルを握る手に、力が入るのはやむをえない。 側車の機銃員は、いつでも射撃できるように、身を乗り出して機関砲を構えている。 くそっ、最近はテロや反対分子の活動がなかった。 油断した、まさか、総帥を狙うとは身の程知らずが。 あそこの角を廻れば確か鉄道の高架があるほずだが。 近衛機動連隊の本日の待機番である、シュミット少尉は機銃員に、「角を廻る、振り落とされないように。」と警告してコーナーをターンした。 精鋭近衛連隊は独逸帝国の陸軍の頂点である。 誇りも高いが技も高いのだ。 「え、え、え、え、なんだ、どうしたんだ。」 シュミットは叫んだ。 角を廻り、視界がひろがった。 そこには、そこには、瓦礫が散乱していた。 敵の弾が飛んでくるのではなく。 鉄道の高架が崩れて、機関車が横倒しで、、あたり一面に丸太が転がり。 さながら、隕石か巨大砲弾が落ちた跡のようであった。 機関車の側に鉄道員が倒れている。 近寄り、「オイ、だいじょうぶか。」 と声を掛けるが気配がない。 どうやら、死んでいるようだ。(眼球の瞳孔が開いたままだ。) シュミットは鉄道員の開いた両眼を閉じてやった。 バイク隊が次々と到着した。 すると、鐘を鳴らして消防車がやってきた。(現代ではない、それなりに時間がかかるのだ。) 救急車も到着した。 遅れて、フランス警察のシトロエンが到着する。 シュミットは独逸帝国近衛連隊の名で、現場責任と指揮を宣言する。 まさか、まさか、ではあるが、総帥の捜索をしなければならない。 そのころには、現場は混乱のきわみであった。 眼に入る倒れているヒトは運んだ、しかし瓦礫を掘れば出てくる可能性もある。 シャベルで、手作業で掘り進む。 シュミットも、近衛連隊も作業に加わる。 (火砲は集めて見張りを立てている。) 時間がたてば、臨場する作業員も増える。 最悪を考えて、シュミット少尉は独逸帝国関係者のみで、捜索活動をすることとした。 万一の場合、まず、ないとは思うが、フランス側に最悪の事態が独逸帝国より先にバレルのはまずいと考えたからだ。 最悪の事態、まさか、ないとは思うが、最悪の事態。 たとえ、瓦礫の下であれ、独逸帝国ご自慢の装甲リムジンだ。 屋根には、苦労して捕獲した米軍のマークⅡ戦車の装甲補助板を組み込んで、まず潰れはしないはずだ。 生きて、いらっしゃるに違いないのだ。 シュミットは自身に問いかけて納得していた。 近衛連隊のいち個人の自分にまで、気さくに声を掛けてくださり、シュミットは総帥を尊敬と独逸帝国の希望であると思っていた。 第一次大戦で、負けて、超インフレに悩まされて、国民は疲弊していた。 戦勝国は正義の味方のように振る舞い、ドイツを悪の権化と見下した。 戦争に正義は無いのだ。 まして、善悪など無い。 著者も、そう思う。 そして、総帥はドイツを再興して、かつての栄光を取り戻したのだ。 ドイツ国民にとり、総帥は希望の星なのだ。 絶対に、大丈夫だ、あってはナラナイことである。 シュミットは、泣きながら瓦礫を掘っていた。 眼が涙でボーとして満足に見えないが、手が棒になり、汗でベタベタになりながら瓦礫をどけて堀進んだ。 どん、と抵抗がある。 さらに突いた。 なんか平たい硬い板みたいなモノにシャベルが当たる。 手で、砂や泥を退ける。 クロの色の板だ。 「オイ、ここだ。」 シュミットは叫んだ。 皆がまわりに集まる。 もう、必死に手で掘る。 だんだん、リムジンの屋根が出てきた。 「あれ、これは、装甲リムジンじゃない。」 シュミットは掘り進む内に、いつもの装甲リムジンの屋根にしては、薄い感じがしたのだ。 「え、まさか、まさか、なんで普通のリムジンなんだ。」 絶望が、失望が、混濁が、ありえないとシュミット少尉を襲った。
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