大東亜戦争を有利に

ゆみすけ

文字の大きさ
331 / 380
ロンメロの行動は?

フランス国鉄

しおりを挟む
 「ロンメロ将軍、お呼びでしょうか?」 「うむ、ハインリッヒ君。」 ロンメロの前に前線基地の斥候部隊のひとりが敬礼している。 ちなみに、敬礼は普通の右手を顔の斜め上にヤルやつだ。 制帽は前線基地は常時着帽であるからだ。 「君は鉄道に詳しいと聞いているが。」 「ハイ、少しは。」 「そう、謙遜するな、Eisenbahn(アイゼンバーン)君。」 うわ、オレのオタク名を将軍が・・・・・ 思わず、冷や汗のハインリッヒだ。 アイゼンバーンとは鉄道のドイツ語だ。 「君に折り入って頼みがある、斥候部隊(偵察の任務だ。)は、しばらく休んでくれ。」 「と、いいますと。」 「うむ、君をフランス国鉄監察官に任命する。」 「え、・・・・」 どういうことだ。 「さきの、総帥遭難事故を君はどう思うかね。」 「階級にとらわれずに意見を許す。」 ロンメロはハインリッヒに言った。 「では、遠慮なく。」 「え、まず保線、つまり線路の保守や点検ですが、これがなってないです。」 「人員もすくないし、教育など人夫レベルです。」 「予算が、とフランスは言いますが、これはいい訳です。」 「普通の教育のない、まったくの労務者を日雇いで、見張り員も置かずに保線区員としています。」 「うむ。」 「それで、専門の見張りがいないから、機関車に気づかずに轢かれるヤカラが跡を絶ちません。」 「そして、保線作業ですが、昼間に機関車の通過の合間では、満足に保線などできません。」 「機関車は、我が独逸帝国製で、文句ありませんが、線路は独逸帝国製ではありません。」 「ふむ。」 「優秀なランナーも足場が悪くては。」 「私は斥候です、双眼鏡で、前線の敵の動きを観察しますが、双眼鏡も使い方で、解像度が全く違います。」 それは、ロンメロも承知していた。 両手で持ち、脇を締めて、振れないように持たなければ、細かく観察できないからだ。 ロンメロはハインリッヒに総帥遭難の内偵などの話はしなかった。 ハインリッヒの人物が、まだわからなかったからだ。 使ってみて、使えるならと考えていた。 ロンメロは前線基地で、それなりにフランス政府にはツテもあり、独逸帝国の無双陸軍将軍であるから、ハインリッヒを監察官に指名することは可能なのだ。 ・・・・・ 「おい、今度の鉄道監察官のウワサを聞いたか。」 「なんでも、えらく鉄道に詳しくて保線にうるさくて、役員らが、次々と首になってるとか。」 「まあ、オレたち機関士は、幹部でもないし、直接の影響はないだろうが・・・」 考えが甘かった。 遅延の時間を計られて、理由を聞かれて、怠慢と判断されたら首だ。 それが、イヤなら保線区員に廻されるんだ。 速度や距離の目測訓練も、定期的に審査が・・・・ いままで、怠慢の温床であったフランス国鉄は、ハインリッヒの、フランス国鉄に対するコダワリが爆発して、怠けぐせは無くなったのだ。 利権で、あぐらをかいていたヤカラは首になり、とうぜん年金や退職金など無い。 (最初に首が、なんとフランス国鉄総裁だ。) そして、保線は監視員が線路を見張り、深夜の作業となった。 そして、保線作業のハインリッヒの検査が、なんと客車に紅茶のカップを置いて、走行中に紅茶がこぼれたら保線やり直しなのだ。 もちろん、速度は規定であり、遅れは許されない。 まさに、独逸陸軍の鉄の掟を押し付けたのである。 ハインリッヒは規則にうるさいが、規則を守る国鉄員には寛大であった。 時間の遅れが、1分以内ならボーナスが出たのだ。 定時運行があたりまえになるまで、ハインリッヒの鉄槌は止むことはなかった。 まさに、軍隊並みの扱いであったのだ。 数ヶ月で、雰囲気がフランス国鉄は替わってきたのだ。 ロンメロはそろそろ頃合だと観て、ハインリッヒを呼びつけた。  「ハインリッヒ君、よくやってくれた。」 「いいえ、いままでのウップンが飛びました。」 「今なら、総帥遭難事故の原因を探れるな。」 「え、・・・・」 「君を監察官に指名したのは、総帥遭難事故を探索してもらうためだ。」 「あれは、保線の怠慢の事故では。」 「それを、詳細に再捜査しろ。」 「ハイ。」 ハインリッヒは敬礼で返事をする。 「なお、結果や内容は保秘として、部内にも明かしてはならん。」 「了解しました。」 ロンメロの厳しい顔を見てハインリッヒは何かを悟ったのである。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

札束艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 生まれついての勝負師。  あるいは、根っからのギャンブラー。  札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。  時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。  そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。  亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。  戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。  マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。  マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。  高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。  科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

改造空母機動艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。  そして、昭和一六年一二月。  日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。  「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

天竜川で逢いましょう 〜日本史教師が石田三成とか無理なので平和な世界を目指します〜

岩 大志
歴史・時代
ごくありふれた高校教師津久見裕太は、ひょんなことから頭を打ち、気を失う。 けたたましい轟音に気付き目を覚ますと多数の軍旗。 髭もじゃの男に「いよいよですな。」と、言われ混乱する津久見。 戦国時代の大きな分かれ道のド真ん中に転生した津久見はどうするのか!!??? そもそも現代人が生首とか無理なので、平和な世の中を目指そうと思います。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

処理中です...