満州国馬賊討伐飛行隊

ゆみすけ

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操縦士とは

操縦士がとりあえず、できあがった。

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 「本日から飛行訓練だ。」 と鈴木教官だ。 やっと、飛行訓練か。 3人の訓練生は敬礼して聞いた。 答礼した鈴木教官は、「では、練習機に1番員からだ。」 練習機? 初期97式ではないのか。 「あれは、操縦席が1座席しかない。」 「後ろに2人まで詰め込めるが。」 「だから、座席が2個あるのが、練習機だ。」 そして、鈴木教官は後部座席に乗り込んだ。 「おい、前に乗れ。」 「ハイ。」 もう、無我夢中だ。 「エンジンスタート。」 エンジンの点火プラグのスイッチを入れる。 すると、整備員が2枚ペラに手をかける。 「コンタクト。」 と言いながら切り替える。  同時に、整備員が勢いよくペラを廻す。 「バリ、バリ、バリ、バリ。」 と8気筒サイドバルブエンジンがなんとか廻りだした。 後ろから教官は訓練員の頭をこずく。 振り返る訓練員。 教官は耳用の伝声官を出して耳に取り付ける。 訓練員はマネをする。 すると、教官は声用伝声官にしゃべった。 エンジン音の中でも教官の声は聞えた。 「いいか、いまから飛ぶ、機械にさわるなよ。」 訓練員は声用の伝声官を口につけて、「はい。」としゃべる。 飛行場は、ただの平坦な広っぱだ。 そこで、エンジンのスロットを上げる。 そして、地面では尾輪で方向をかえる。 それが、垂直尾翼と連動している。 そして、足元の2対のペダルの左右の踏み具合で垂直尾翼を操作するのだ。 操縦幹は主翼のエルロン(主翼の端についている舵)と尾翼の水平舵を操作する。 エンジンのスロット(馬力を上げるレバー)は、たいてい操縦席の左側にある。 「ベルトはOKだな。」 再度点検する訓練生だ。 訓練生は手でOKの合図だ。 同時に練習機は走り出した。 エンジンが、これでもかと回転する。 もう、いまにも壊れそうだ。 「ビーーーーン。」 唸りをあげてエンジンが、そして練習機は、ふわりと浮かぶ。 地面が速い。 だんだん、地面が遠くなる。 水平線が見えた。 満州平原は山が少ない。 「いま、速度は200キロくらいだ。」 え、これでか、すごく速く思うが。 飛行場を1周して、練習機は着陸した。 着陸は怖かった。 あんなの、自分ではできそうに無い。 地面に当れば、おそらく機体は壊れて、自身は生きてはいまい。 「キュル、キュル。」と車輪の音が聞える。 なんせ、エンジンは音がちいさくなってるからだ。 そして、「パラ、パラ。」とペラが廻り、「プッスン。」とエンジンが止まった。 「では、次だ。」 練習生は、あわててベルトをはずして、交代する。 その間、教官は舵を動かして、また点検をしている。 確か、飛ぶ前は必ずと聞いていた。 再度のエンジン始動はかんたんだった。 エンジンも調子よく、ある程度エンジンは動けば調子がわかるようだ。 地面を歩いた。 なんか、こう、うまく歩けない。 慣れだ、と教官は言うが。 これが、1番員、ワンの初飛行だった。
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