日本戦車を改造する。

ゆみすけ

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燃費が違う!

3両とも同じではないのか・・

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 「少尉、これが燃費表です。」と、車長が3両の訓練での燃費消費を表にしたグラフを提出した。 
「うむ、ごくろう・・・てっ、こんなに違うんかい。」と、驚く今野だ。 
見ると、今野の戦車が一番燃費消費が多い。 
3両とも同じエンジンで同じコースを訓練走行したるはずだ。 
それなのに、燃費の差が3割強だ。 
「速度も、ほぼ同じなのに、この差は・・」 
すると、車長が、「個性じゃないですか、微妙な差が積もれば大きくなりますから。」 
「そうかな、しかし、作戦で支障がでやしないかな。」 
「じゃあ、操縦手を替えてみますか。」 
「うむ、そうだな、試にやってみよう。」・・・ 次の日に試した。 
「ううむ、差が同じだ。」 「では、車両を替えてみますか。」 
「うむ、そうするか。」・・・で、次の日である。 軽油の消費を計測する。 
「やはりか、同じだ。」 「これは、戦車の個性ですかね。」と車長がいう。 
「操縦手が、戦車の機嫌を取りながら、やってますから。」 
「そうなのか?」 「え、え、おい、伊藤君。」 「ハイ。」 
車長は自身の操縦手を呼んだ。 
「燃費ですか、運転技量も関係しますが、主にクルマの性格ですね。」 
「性格?」 「え、え、ヒトと同じですよ。」 
「この戦車は、試作でしょ、技師らの性格を受け継いでるんですよ。」 
「同じ、エンジンだが。」と、少尉だ。 
「いえ、試作エンジンですから、個々の個性はありますよ。」 
「うむ、では、技師に聞いてみるか・・」 少尉は組み立て工場まで足を運んだ。 
主任へ、聞いた。「そうですか、エンジンは燃料ポンプが機械で、とても精密ですから、造った工員の個性がでるんじゃないですか。」という。 
「いまは、日本の工業力が手作業の域をでていないからですよ。」と結論付ける。 
「あまり、燃費の差があると、作戦に響くんだが。」と少尉だ。 
「わかりますが、まだ試作段階です、そこは広い心で観て欲しいんですが。」と、なんか惑わされたような少尉だった。 
「あ、そして、戦車ですが部品に番号が打ってあります。」 「あ、あ、知ってるが。」 
「そいで、頭の番号は同じにしてください。」 
「なぜ?」 「その、頭の番号が試作戦車の部品番号ですから。」 
「合わせろと・・」 「え、え、なんせ、手造りですから、他の戦車部品は同じところでも、使えませんよ。」 「えっ、では故障したら?」 
「整備技師なら知ってるからいいんですが、現場では注意したください。」 
「そこまでは、知らなかった・・」と今野だ。 
米国の自動車は部品が規格で統一されていた。 
まだ、黎明期の日本の技術だ。 大量生産の工業力は、まだまだなのだ。 
日本の職人が部品を、すり合わせて機器に取り付けていたのである。 
まあ、日本製の欠点だが、「ネジ、1本でもか?」と少尉が聞いた。 
「そうです、ネジ1本でもですよ。」・・・・ 
これで、熊のソ連軍に勝てるのか、不安になった戦車隊の隊長であった・・・・・・
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