日本戦車を改造する。

ゆみすけ

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クラッチをつける。

機銃座の旋回装置。

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 甲型対空戦車の機銃座は、クランクを機銃座を旋回させる隊員が手動で、廻していた。 海軍艦艇の対空機銃と同じであった。 
 しかし、敵の戦闘機の速度に、ついていけないことも多々あったのである。 敵のグラマンやマスタングが対空機銃で墜ちる話を、あまり聞かないのだ。 戦艦大和の最期もそうである。 敵のアベンジャーやグラマンを対空機銃がハエ叩きの如く墜としていれば、沈まなかったのだ。 敵の戦艦の砲撃では無く、敵の航空魚雷で沈んだのだ。 
 いかに、機銃で敵機が墜ちなかったか・・・
 
 「えっ、甲型の対空戦車の機銃座の交換だって。」と、今野少尉が。
「つまり、1両の追加があったからだな。」と、納得する少尉だ。
 「それで、期間は?」と、聞く。 「工場からの話では、7日ほど欲しいらしい。」と、庶務が。
「そうだな、7日か、しゃあないな。」と、承諾する今野少尉だ。 「その間、戦車の4名の乗員は暇だな。」「そうですね。」「よし、乙型の新兵の特訓に付き合わせるぞ。」と、新兵が聞いたら、夜逃げしかねない話となった。
 7日間、先輩が手とり足とり教えてくれるのだ・・・・顔が引きつる・・・いや、ここは喜ぶところである。

 翌日、満州国の戦車工場から搬送車両が到着して、甲型を載せて帰っていった。 戦車用の車台は偉大な発明である。
 練兵場に馬賊が3騎、用意万端である。 まあ、半分ニヤニヤしてるが・・・ 今から、新兵のスパルタ教育が始まるからだ。
 標的の模型飛行機は3機に増えたのだ。 それで、馬賊も3騎である。
「まずは、君たちのお手並み拝見だな。」と、甲型対空戦車の車長の斎藤君が・・・・
 「標的の用意できました。」と、係員が叫んだ。
「よし、用意は?」と、斎藤君だ。 「ハァ。」と、冴えない返事の谷坂車長だ。 「ん、ん。」と、怪訝な顔の斎藤君だ。 あわてて、「ハイ。」と、言い直す。
 「では、はじめ。」と、片手で合図の斎藤車長である。 
同時に3機の標的機が飛びあがる。 「アレだ。」「どれだ。」「それだ。」「これか。」「あ、あ~。」「行っちゃったじゃないか。」と、混乱の極みの3名である。
 馬賊が、あわてて馬を走らせる。 見失うと、探すのに苦労するからだ。

 「あのな、回収の馬賊に笑われるぞ。」と、喝を入れる斎藤車長である。
「そもそも、日本陸軍軍人たるものは・・・・」と、長々と陸軍の軍人勅諭が・・・もちろん、直立不動で3名の新兵は聞かねばならない。
 馬賊が模型飛行機を3機、回収してくるまでである。
まあ、腕立て伏せをやらされるよりはマシなのだ。
 「せめて、3機とはいわん、1機の吹き流しにでも機銃を当てろ。」「これが、露スケなら、撃ってくるぞ。」
そうなのだ、標的機は撃ってはこないのだ。 ただ、単に飛んでるだけなのだ。
 今野少尉は、「やはり、経験者の指導が一番だな。」と、納得である。
新兵は、まだ敵戦闘機へ1発も撃ってないのだ。 敵の戦闘機を2機連続で撃ち墜としてから、ソ連軍も用心しているらしい。 つまり、対空戦車への対策をたてているのだ。
 必ず、ソ連軍は懲りずに攻めてくるのだ。 日本軍の様子見で、攻撃の機会を狙ってるのだ。
「いいか、ヤツらに勝てると思わせてはいかんのだ。」「絶対に負けると思わせねばならない。」「つまり、勝てないと思わせるほど強くなくてはならないのだ。」と、弁舌の先輩隊員である。
 やがて、馬賊が標的飛行機を回収して戻ってきた。
やれ、やれ、の顔の新兵たちである。 
 
 「よし、今度は外すなよ。」と、車長の谷坂君と、機銃員の辰野君へハッパを駆ける斎藤君である。
そして、片手で標的機へ合図だ。 
 3機の模型飛行機は、ブ~ンと飛び上がる。 なかなか、飛ばす係員もうまくなったものだ。 丁度いい、高度で3機の標的機は対空戦車の上へ・・・・
 「いまだ。」と、斎藤が叫んだ。
「ダ、ダ、ダ、ダ。」「ダ、ダ、ダ、ダ。」 と、今度は機銃が炸裂する。
 あっと言う間に、標的飛行機は視界から・・・ 馬賊が、あわてて後を追う。
やがて、馬賊が3機の模型飛行機を回収して帰ってきた。
 「さて、どうかな・・・」と、斎藤君が吹き流しを・・・
「なんや、1発も当たっとらんぞ。」と、「あ、あ、ここに、少し穴が開いとる。」と、1発がかすった跡が・・・
 「うむ、最初よりは、よかったぞ。」と、誉める斎藤君だ。
また、どやされると思っていた新兵らは、意外な顔だ。
 「まあ、2回目で1発でも当てれば、なかなかのモノだぞい。」と、先輩だ。
ここは、アメとムチなのだ。 誉めてばかりでもいけないし、叱ってばかりでもヤル気がでなくなるのだ。
 そこは、叱ったり誉めたりが効果があるのだ。
こうして、新兵の三名は、対空戦闘の訓練に汗水を流すのである。

 7日目ごろの新兵らは、もう新兵ではない。 3機同時に、飛びあがる標的飛行機の吹き流しには、かならず銃弾の穴が開くようになっていたのだ。  連日の訓練でコツと動態視力と、予測射撃が慣れてきたのだ。
 人間、慣れとは恐ろしいモノであるが、慣れることは、命中率があがるのだ。
ソ連軍の戦闘機への用意は、準備万端に整ったのである。
 「さあ、露スケめっ、来るなら来い。」と、3名の新兵は乙型対空戦車の4連装対空機関砲を北の空へ向けるのだった。


 
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