日本戦車を改造する。

ゆみすけ

文字の大きさ
177 / 393
量産型の試験飛行。

1門の機銃も悪くないかも・・・

しおりを挟む
 ここは、お国の何百里、離れて遠い満州の~飛行場である。
そう、内地から遠い飛行場であるのだ。 奉天飛行場という名前だ。(まんま、だな。)
 やっと量産型が組み立てられて、試験飛行である。 つまり、飛ぶか1機1機試すのだ。
でないと、ソ連軍だーっ、飛ぶぞ・・・いかん、組み立て不良だ。 で、墜落はイヤだからである。
 試験飛行は陸軍を退官した空中勤務員の林大尉である。 大尉は退官時の階級だ。
つまり、予備役というヤツだ。 開戦になれば、部隊へ復帰という予備の軍人である。
 自衛隊と同じだ。 自衛隊も退官した隊員が予備役となっている。

 「いつでも、どうぞ。」と、管制塔から無線だ。 なんせ、満州国で空(うえ)を現在飛行している機は無いからだ。
 「では、発進する。」と、スロットを上げる。 
スルスルと、機体が動ごきだした。 タキシングも良好である。
 「うむ、操縦性は悪くないな。」 まだ、飛んでないから・・・・
「では、行くぞ。」と、フル・スロットルである。 (操縦席の左にある、スロットルレバーを全開だ。)
 「ブ~~~ン。」と、双発の爆音をあげて難なく地面を蹴る。
双発機は左右のペラが反対方向へ廻るのだ。  それで、モーメントを打ち消してるのだ。
 つまり、回転する力が、まっすく進むのを妨げるのだが、それを互いに反対へ廻して相殺してるのだ。
「ほう、なんなく上がったな。」と、試験官が・・・
 「ここで、墜落してもらっては、いかんですからね。」と、同期の技官が駄弁る。
飛行機は離陸時に事故率が多いのである。 まず、すんなり離陸するかが、大切なのだ。

 「武器の運用は?」「うむ、いちおう実弾で地上の標的を攻撃するんだが・・・」
「はたして、機銃員は空から撃つのが初回だからな。」と、心配する。
 つまり、斜め下機関砲が1門の量産型キー101の初めての試験飛行というわけなのだ。
もちろん、標的は地面に描いた✖印である。 なぜかって・・・予算の都合である。
 そう、軍は、まして派遣軍である。 無い袖は振れない。
「きたぞ。」と、試験官が上を見上げる。
 キー101は双発の爆音を響かせながら、地上攻撃コースへ乗る。
飛行機というものは、飛ぶコースをあらかじめ想像して操縦士がコースを取るのだ。
 空飛ぶ円盤まがいの、自由な飛行はできなのだ。
地上攻撃する低空飛行である。 狙うためには速度が遅くなるのだ。
 それで、フラップを下げて揚力を増す。 
飛行場の滑走路外の空き地へ描かれた標的へ・・・
 「ドン、ドン、ドン。」と、低い射撃音が数回、響いた。 腹の底へ染みわたる低音である。
なかなか、耳障りの無い砲撃音である。
 そして、急上昇や急旋回などの試験を・・・「あっ、インマルマン・ターンだぞ。」と、同期の技官が叫んだ。
インマルマン・ターンとは欧州の撃墜王が考案した技である。 
 なかなか出来るヤツはいないのだ。 だから、技の名前があるのだ。
ドイツの撃墜王のマックス・インマルマンが考案したらしい。
 それで、インマルマン・ターンというのだ。
敵に会敵したとき、宙返りして、180度ロールで機体を戻す。 これが、速度が乗ってないとできないのだ。
 そう、技が無いとできない。 人馬一体でないと、できない技でもあるのだ。
会敵して、すばやく宙返りして180度ロールで機体を戻す。 
 つまり、敵の背後を突けるのだ。
まずは、旋回性能が良い戦闘機でないと・・・・
 
 やがて、一連の試験を終えたキー101量産型は滑走路からエプロンへタキシングして試験官らの側へ付ける。
ハッチが、パカリと開く。 整備隊員らがタラップを機体の横へ・・・
 そして、エンジンが停止する。 早々に整備隊員らが機体の点検を始める。
エンジンからのオイル漏れや機関砲の射線の狂いがあるか、云々などだ。
 「いやぁ、これは、機関砲が1門の方が正解かもしれませんよ。」と、林大尉が開口一番だ。
「そうだな、印のど真ん中に命中だからな。」と、✖印の紙を検分する技官だ。
 「え、え、双発でエンジンのモーメントがブレないから、狙えるんですよ。」と、機銃員が付け加える。
機銃員は・・・なんと、今野少尉だ。 林大尉は先輩である。 それで、後背のよしみでごり押しして機銃員として乗り込んだらしい。
 試験飛行の操縦士以外は、いがいと無理がきくのだ。
「しかし、いきなり40ミリ機関砲で外れが無いとは・・」と、感心する具間らである。
 「いや、いや、1門で、三点バーストは最高に安定して射撃ができたぞ。」「これなら、君らでも命中でるぞ。」と、技官らの進言する今野少尉だ。
 つまり、素人でも命中射撃ができるというのだ。
「なぜなら、射撃ボタンを照準器どうりに撃てばあたるんだ。」「そこに、射撃のショックはないし、エンジン音がするから、いきなりの射撃音で射線が狂うことも無いからな。」と、付け加える。
 つまり、ゲームのボタンと同じなのである。 それも、連射をしなくてもである。
すこし、戦闘に慣れたヤツならできるのだ。 それで、戦車隊の今野少尉が試してみたのである。
 「これなら、機銃員というより、マジの航法や偵察員でも・・・」と、つまり安定した双発機の飛行がなせる技である。 
 「双発戦闘機が、意外に満州ではいけるかも・・・」と、夢は膨らむのである。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

札束艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 生まれついての勝負師。  あるいは、根っからのギャンブラー。  札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。  時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。  そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。  亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。  戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。  マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。  マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。  高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。  科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

処理中です...