日本戦車を改造する。

ゆみすけ

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戦車の集中運用だ。

歩兵支援をやめる・・・

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 加藤戦車隊の満州国での活躍が陸軍参謀部で討論されていた。
「いままでは、歩兵の支援が主だったが・・・」と、杉田参謀が続ける。
 「これからは、戦車の分散運用はヤメて、集中運用が・・・」と、持論を述べる。
「いや、数が集中運用できるほど無い、まだ時期が早い。」と、反論する佐藤参謀だ。
 討論は、すでに2時間ほど経過してるが・・・結論が・・・
議長の近藤中佐が・・・
 「まてまて、ここは双方に考えもあるだろうが・・・ここで、派遣軍だった中尉の意見を聞こうでは無いか。」と、場をまとめる。
 「加藤中尉、腹蔵ない発言を許す。」と、近藤中佐だ。
加藤中尉は・・・幹部連中のなかで蛇に睨まれたカエルだった。
 なんせ、雲の上の幹部ばかりの中で腹蔵なく・・・って言われても・・・言えないのである。
「うむ、それではソ連軍は、どうだったのだ。」と、話題を変える中佐だ。
 「ん、ん、それでは、お言葉に甘えて・・・ソ連軍は欧州の紛争で戦車の集中運用の実績があるようでした。」
「ドイツ帝国のグーデリアン将軍の電撃作戦に対抗するためと思われます。」と、中尉だ。
 電撃作戦、つまり歩兵部隊は本来は歩きだ。 それで、移動速度がしれている。
ところが、歩兵部隊の全員が装甲車や戦闘車などに同乗すれば移動速度は・・・電光石火だ。
 敵が反攻する暇を与えずに、速攻で攻めるのが電撃戦である。
 
 「つまり、機甲師団をドイツ帝国は造ったのですが、それの応用がソ連軍の戦車戦でした。」と、中尉だ。
「我が軍は、待ち伏せやら奇襲やらの奇想天外の作戦でソ連軍を翻弄できたのですが・・・」
 「それは、何度も使えません。」と、中尉だ。
納得の表情の幹部連中だ。
 「今回のソ連軍の侵攻は20両だったので・・・」
「欧州では、100両以上の侵攻だったそうです。」と、中尉だ。
 いづれも、ソ連軍の捕虜から聞いた話だ。
 捕虜をソ連との国境の河まで運ぶ途中に捕虜から聞いた話だそうだ。
銃殺されることもなく、解放されるとわかって油断したソ連兵が駄弁った話だ。
 ソ連兵にとれば自慢話である。
なんせ、天下のドイツ機甲師団と渡り合ったのだから・・・

 欧州諸国がドイツ機甲師団には、手も足もでなかったのだ。
冬将軍に助けられたとはいえ、いい勝負のソ連軍戦車隊だったのである。
 それで、ドイツ帝国とソ連邦は休戦となり、現在の均衡をたもっているのだ。
「そこで、ソ連兵が我が八九式を見て言ったんです。」
 「すべての戦車に無線機があるのはドイツと同じだな。」と・・・
「ソ連軍は1両の隊長車にしか無線はありませんでした。」
 「その差が、奇襲や待ち伏せを成功させたと、本職は思っています。」と、持論をいう加藤中尉だ。
「では、君は無線機運用が大きかったと言うのだな。」と、近藤中佐だ。
 「え、え、ソ連軍の無線機は貧弱で・・・正直、使えないモノでした。」
「装甲や砲身はソ連軍が優秀かもしれませんが・・・無線機は、我が方が優秀です。」
 「互いの意思疎通が大切だと、痛感したしだいです。」と、加藤中尉は意見を結んだ。

 「いや、実感のこもった意見だった。」と、近藤中佐が労う。
ほっとした表情の加藤中尉である。
 下手なことを言えば更迭されるか・・・軍法会議ものであるからだ。
幹部と揉めたくないのは、だれでも同じであるのだ。
 「しかし、満州に100両単位の戦車師団が必要ということだな。」と、幹部がこぼした。
「ううむ、100両か・・・」と、杉田参謀だ。
 「なら、少なくとも200両は無いと、戦えないな。」と、加える。
なんせ、整備や故障、修理で余分がないと、100両揃わないからだ。
 米軍も12隻も正規空母があるのは・・・整備や修理があるからだ。
「しかし、そんなに予算は組めないぞ。」と、佐藤参謀が・・・
 「満州国に造らせればいいんだ。」と、杉田君がいう。
「自国の防衛は自国でだ。」と・・・
 しかし、騎馬軍団しかない満州国だ。
戦車100両なんて、夢のまた夢だ。
 「なにも、最新の戦闘機や軍艦を造るわけではないんだ。」
「戦車なぞ、軍事機密は少ないと思うのだ。」と、杉田参謀だ。
 「装甲や大砲に機密は少ないし、あってもジーゼルエンジンくらいだ。」
「エンジンは日本製を輸出すればいいかと。」と、加える杉田君だ。
 「現在、満州国に製鉄所が出来つつあるからな。」と、皆の賛同を求める杉田君である。
こうして、九七式は魔改造されて・・・九七改として、満州戦車製造で組み立てが決まったのである。
 めでたし、めでたし・・・
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