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全滅した騎馬隊と戦車隊。
勝てないが・・・負けるわけには行かんのだ~~っ!
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「あれは、5年ほど前のことだと思うのですが・・・」と、今野少尉が話をはじめる。
もちろん、メモなんて見ない。
別に文章を暗記してるわけでもない。
戦車隊長の加藤中尉から、引継ぎ事に聴いた話を尾ヒレをつけて少し盛っただけだ。
「私は、そのころ士官学校を卒業(ビリに近いんだが、内緒だ。)して、内地から満州へ派遣軍として赴任したてだった。」
「大連港で陸軍のフネから降りたところだったのだ。」
「そこでは、加藤戦車隊長が交代するために、待っていてくれたんだ。」
「君らの歴史の教科書にも載ってる、加藤戦車隊長だ。」
聞いてた生徒らが、ざわつく。
そりゃあ、教科書では英雄と描かれている加藤戦車隊の隊長だ。(写真入りだぞ。)
「まあ、あの写真は隊長が若い時のヤツだから・・・今は、おじさんだぞ。」と、注釈を入れる今野君だ。
「その波止場には、戦車隊で戦った八九式戦車が修理などで内地送りの順番待ちだったのだが・・・」
「その戦車の敵からの砲弾の跡がすごかったんだ。」
「まるで、月面のように・・・穴が開くような跡が多数あったのだ。」
「敵砲弾が跳ね返った跡だよ。」
「いかに、ソ連軍の攻撃がすごかったか・・・想像できないくらいだった。」と、今野君が話を盛る。
「とにかく、ソ連軍は砲弾を多く撃てばいいと教えられてるそうだが・・・」
「狙って撃つなら、あれほどの無駄弾は、オレなら撃たないほどなのだ。」
「諸君は弱いヤツほど良く吠えるというコトワザを知ってるだろう。」
「え、え、ワンコのことですね。」と、生徒が答える。
「そうだ、弱い犬ほど吠えるもんだ。」「それと、同じで、やたらと撃ってくるのだ。」
「まあ、それでも数発は当たるやもしれないからな。」
「しかし、真の武人はやたらには撃たないものだ。」「そして、撃ったら外さないのだ。」
「では、本当なんですね。」
「1撃で、2両の戦車をやっつけたって話は?」と、生徒が聞く。
「あ、あ、そうだ、武人はウソはいわないからな。」と、話を盛り付ける。
まあ、そうなのだが・・・偶然にであり、狙ってやったわけではないんだが・・・そこは、ソレだ。
実際に、加藤戦車隊が鹵獲した敵のT26A型は砲弾がほとんど残っていなかったのだ。
逃げようと、めったやたらと砲撃したからだ。
まあ、ほとんど当たらなかったんだが・・・それでも、少しは八九式の装甲へ跳ね返ったんだが・・・
「戦車に乗っていて、敵の弾が当たると、どうなんですか?」と、生徒のひとりが聞く。
うん、うん、と頷く生徒が多いようだ。
「そうだな、君たちはお寺の釣鐘を知ってるかい。」
「え、え、あの釣鐘ですよね。」と、生徒が答える。
「その中に入って、鐘を叩かれるようなものだな。」
「オレも何度も経験したが、五月蠅くて気が狂いそうになるよ。」
「しかし、敵の砲弾が跳ね返るときは、それほどでも無いが、爆発したら耳がしばらく聞こえないくらいだ。」 「それで、最近は防音イヤフォンで耳を保護してるんだよ。」と、実感がこもった話である。
「しかし、戦ってると、いちいちそんなことは考えてはいられない。」
「もう、怖いとか、死ぬかもしれないなんて考える暇なんてないんだ。」
「もう、必死で戦うだけだ。」
「もちろん、敵の砲弾で装甲に穴が開いたら、お陀仏なんだ。」
「そう、戦死だな。」
生徒が、「死ぬのは、怖くないんですか。」と、恐る恐る聞いた。
「そうだな、怖くないかと聞かれれば、正直には怖いな。」
「でも、ソ連軍に負けたら、君らの国がなくなるんだぞ。」
「そうなったら、どうするんだ。」
「ソ連軍は君らの家も食事の面倒もみてはくれないぞ。」
「最悪、シベリアにある強制収容所送りだぞ。」
「そこで、死ぬまで働かされるんだぞ。」
「君らは、15歳くらいか。」「そうです。」
「なら、働かされるな。」
「働かないと、どうなるんですか?」と、生徒のひとりが聞く。
「うむ、聞いた話だが、働くまでムチ打たれるそうだ。」と、少尉が明かす。
「まさか・・・」と、数人の生徒が・・・
「いや、この話は、満州へ逃げてきた収容者から聞いたんだ。」
「うそではないよ。」と、マジ顔で少尉がいう。
「もちろん、ソ連邦政府は、そんなことはないと否定してるが。」
「オレは、逃げてきた収容者から聞いたんだ。」「だから、本当の話だ。」
「そうなりたくはないだろう。」と、生徒へ聞く少尉だ。
全員がウンウンと頷いた。
「そうなりたくはないだろう。」と、今野少尉が問う・・・
誰もが頷く。 ド、正論だからだ。
「じゃあ、誰がやるんだ。」「死ぬかもしれないんだが。」と、疑問を投げかける少尉だ。
「誰かが、やらねばならない。」
「相手は、話し合いが通じる相手ではない。」
「そうしたら君らは、どうする?」
「話し合いは通じない、敵が攻めてくる。」
「家も家族もなくなってしまう。」
「君らは、どうする。」
「家も財産もすべて投げ出して、許してもらうか。」
「その住んでる土地から出ていけと、言われたら?」
「どこか、行くところはあるかな。」
きびしい話を振る、今野少尉だ。
「シナへ逃げるか・・・」と、振る少尉だ。
ある生徒が、「シナとは4000年前からの敵同士です。」と、答える。
万里の長城の外側が満州国だ。
つまり、満州の地はシナではないのだ。
ここは、古代より女真族の住む土地なのだから。
「誰かが、やらねばならない。」
「だから、今現在は本職がやってるんだよ。」
「戦車で戦うことを、日本で訓練して、少しは役にたてるからな。」
「いつまで、できるかわからないが。」と、疑問を呈して今野少尉の講話は終了する。
「いろいろ、ありがとうございました。」と、教頭が告げる。
「いや、かなり残酷な話で、生徒に悪影響がでないか心配ですが・・・」と、少尉が答える。
「いえ、わが国のためです。」と、教頭だ。
「軍隊が絶対に必要ですから、それも負けない強い軍隊がですよ。」と、教頭先生が繰り返す。
内地の、平和に毒された教師どもに聴かせてやりたい言葉だ・・・と、思う今野少尉だった。
ちなみに、少尉の講演後・・・授業で居眠りする生徒が大幅に減ったと、学校から礼状が届いたとか・・・
もちろん、メモなんて見ない。
別に文章を暗記してるわけでもない。
戦車隊長の加藤中尉から、引継ぎ事に聴いた話を尾ヒレをつけて少し盛っただけだ。
「私は、そのころ士官学校を卒業(ビリに近いんだが、内緒だ。)して、内地から満州へ派遣軍として赴任したてだった。」
「大連港で陸軍のフネから降りたところだったのだ。」
「そこでは、加藤戦車隊長が交代するために、待っていてくれたんだ。」
「君らの歴史の教科書にも載ってる、加藤戦車隊長だ。」
聞いてた生徒らが、ざわつく。
そりゃあ、教科書では英雄と描かれている加藤戦車隊の隊長だ。(写真入りだぞ。)
「まあ、あの写真は隊長が若い時のヤツだから・・・今は、おじさんだぞ。」と、注釈を入れる今野君だ。
「その波止場には、戦車隊で戦った八九式戦車が修理などで内地送りの順番待ちだったのだが・・・」
「その戦車の敵からの砲弾の跡がすごかったんだ。」
「まるで、月面のように・・・穴が開くような跡が多数あったのだ。」
「敵砲弾が跳ね返った跡だよ。」
「いかに、ソ連軍の攻撃がすごかったか・・・想像できないくらいだった。」と、今野君が話を盛る。
「とにかく、ソ連軍は砲弾を多く撃てばいいと教えられてるそうだが・・・」
「狙って撃つなら、あれほどの無駄弾は、オレなら撃たないほどなのだ。」
「諸君は弱いヤツほど良く吠えるというコトワザを知ってるだろう。」
「え、え、ワンコのことですね。」と、生徒が答える。
「そうだ、弱い犬ほど吠えるもんだ。」「それと、同じで、やたらと撃ってくるのだ。」
「まあ、それでも数発は当たるやもしれないからな。」
「しかし、真の武人はやたらには撃たないものだ。」「そして、撃ったら外さないのだ。」
「では、本当なんですね。」
「1撃で、2両の戦車をやっつけたって話は?」と、生徒が聞く。
「あ、あ、そうだ、武人はウソはいわないからな。」と、話を盛り付ける。
まあ、そうなのだが・・・偶然にであり、狙ってやったわけではないんだが・・・そこは、ソレだ。
実際に、加藤戦車隊が鹵獲した敵のT26A型は砲弾がほとんど残っていなかったのだ。
逃げようと、めったやたらと砲撃したからだ。
まあ、ほとんど当たらなかったんだが・・・それでも、少しは八九式の装甲へ跳ね返ったんだが・・・
「戦車に乗っていて、敵の弾が当たると、どうなんですか?」と、生徒のひとりが聞く。
うん、うん、と頷く生徒が多いようだ。
「そうだな、君たちはお寺の釣鐘を知ってるかい。」
「え、え、あの釣鐘ですよね。」と、生徒が答える。
「その中に入って、鐘を叩かれるようなものだな。」
「オレも何度も経験したが、五月蠅くて気が狂いそうになるよ。」
「しかし、敵の砲弾が跳ね返るときは、それほどでも無いが、爆発したら耳がしばらく聞こえないくらいだ。」 「それで、最近は防音イヤフォンで耳を保護してるんだよ。」と、実感がこもった話である。
「しかし、戦ってると、いちいちそんなことは考えてはいられない。」
「もう、怖いとか、死ぬかもしれないなんて考える暇なんてないんだ。」
「もう、必死で戦うだけだ。」
「もちろん、敵の砲弾で装甲に穴が開いたら、お陀仏なんだ。」
「そう、戦死だな。」
生徒が、「死ぬのは、怖くないんですか。」と、恐る恐る聞いた。
「そうだな、怖くないかと聞かれれば、正直には怖いな。」
「でも、ソ連軍に負けたら、君らの国がなくなるんだぞ。」
「そうなったら、どうするんだ。」
「ソ連軍は君らの家も食事の面倒もみてはくれないぞ。」
「最悪、シベリアにある強制収容所送りだぞ。」
「そこで、死ぬまで働かされるんだぞ。」
「君らは、15歳くらいか。」「そうです。」
「なら、働かされるな。」
「働かないと、どうなるんですか?」と、生徒のひとりが聞く。
「うむ、聞いた話だが、働くまでムチ打たれるそうだ。」と、少尉が明かす。
「まさか・・・」と、数人の生徒が・・・
「いや、この話は、満州へ逃げてきた収容者から聞いたんだ。」
「うそではないよ。」と、マジ顔で少尉がいう。
「もちろん、ソ連邦政府は、そんなことはないと否定してるが。」
「オレは、逃げてきた収容者から聞いたんだ。」「だから、本当の話だ。」
「そうなりたくはないだろう。」と、生徒へ聞く少尉だ。
全員がウンウンと頷いた。
「そうなりたくはないだろう。」と、今野少尉が問う・・・
誰もが頷く。 ド、正論だからだ。
「じゃあ、誰がやるんだ。」「死ぬかもしれないんだが。」と、疑問を投げかける少尉だ。
「誰かが、やらねばならない。」
「相手は、話し合いが通じる相手ではない。」
「そうしたら君らは、どうする?」
「話し合いは通じない、敵が攻めてくる。」
「家も家族もなくなってしまう。」
「君らは、どうする。」
「家も財産もすべて投げ出して、許してもらうか。」
「その住んでる土地から出ていけと、言われたら?」
「どこか、行くところはあるかな。」
きびしい話を振る、今野少尉だ。
「シナへ逃げるか・・・」と、振る少尉だ。
ある生徒が、「シナとは4000年前からの敵同士です。」と、答える。
万里の長城の外側が満州国だ。
つまり、満州の地はシナではないのだ。
ここは、古代より女真族の住む土地なのだから。
「誰かが、やらねばならない。」
「だから、今現在は本職がやってるんだよ。」
「戦車で戦うことを、日本で訓練して、少しは役にたてるからな。」
「いつまで、できるかわからないが。」と、疑問を呈して今野少尉の講話は終了する。
「いろいろ、ありがとうございました。」と、教頭が告げる。
「いや、かなり残酷な話で、生徒に悪影響がでないか心配ですが・・・」と、少尉が答える。
「いえ、わが国のためです。」と、教頭だ。
「軍隊が絶対に必要ですから、それも負けない強い軍隊がですよ。」と、教頭先生が繰り返す。
内地の、平和に毒された教師どもに聴かせてやりたい言葉だ・・・と、思う今野少尉だった。
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