大東亜戦争を回避する方法

ゆみすけ

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ここで、切り札を出すのか。

敵もサルもの引っ掻くモノ。

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 「魚雷の方向は?」 とヨコイ艦長だ。 「まっすぐに向かってきます。」 とソナー員だ。 浮遊機雷対策で、動きが・・・ とても避ける時間は無い。 フネというものは、瞬間に動けないのである。 いくら馬力があっても動きは遅いのである。 見張り員が魚雷の方向を示した。 つまり、このままでは間違いなく当たるのだ。 もちろん、訓練だから模擬魚雷である。 それで、撃沈はないが・・・ しかし、ヨコイ艦長は退役とはいえ日本海軍である。 ここで、ショボイ独逸帝国海軍のUボートに負けるわけにはいかない。 なぜなら、日本海軍の誇りとメンツが乗っているからである。 メンツなんて、というなかれ。 負けてたまるか、のメンツはあるのだ。 「避ける時間がない、デゴイだ。」 と、艦長が・・ 「わかりました。」 と副官がデゴイのスイッチを入れた。(部下に伝達する時間が惜しいからである。) 「バゥン。」 と軽い爆発音がして、デゴイが魚雷が向かってくる方向に放出された。 デゴイとは駆逐艦の代わりに魚雷の的になってくれるモノである。 形は金属の網が横になって広がりながら展開するのだ。 両端にロケットがついていて、それで広げるのである。 ロケットは固形燃料が尽きたら浮き輪となり、海中に金網が展開されるのだ。 これに、魚雷を絡めとるのである。 魚を獲る網の原理である。 魚雷の直前に展開しないと効果が無い。 使いどころが難しい兵器である・・・ しかし、駆逐艦にとり、1発の魚雷が当たれば沈没は免れない。 厚い防護壁に守られた戦艦ではないからだ。 速度が速い分、艦の重量は軽いのだ。 つまり、駆逐艦は防護壁が薄いのである。 最大船速40ノットの日本の駆逐艦である。 時速なら約80キロだ。 それでも、いきなりの移動は無理である。 手漕ぎボートではないのである。 それで、切り札のデゴイの放出となってのである。 それで、Uボートの放った魚雷は、危ういところでデゴイの網に絡まったのである。 「ふう、魚雷は?」 「艦長、寸前のところで・・・」 「そうか、今度はこちらの番だな。」 「え、え、ヤラれてばかりですからね。」 と副官だ。 「位置は判明したか?」 「まだです。」 とソナー員である。 そこは、訓練生のソナー員だ、日本海軍の老練なソナー員ではない。 「航海士?」 「ハイ。」 「いままでの動きからUボートの位置を予測できないかね。」 と艦長が航海士を試す。 なんせ、訓練なのだから。 本来なら、これが日本海軍のフネなら航海士から具申があってしかりなのだが・・・ まあ、そこは訓練生である。 まともにできたら、ヨコイ艦長の席は無いのだ。 あわてて、海図に書き込む訓練生の航海士であった。 それでは、お寿司なのだ。 「いいか、君は航海士だ、自艦の位置そして敵の予測位置を逐一書き込むことだ。」 と艦長の教育が入る。 「ハイ、肝に命じます。」 「うむ。」 そして、「アクデブを打て。」 とソナー員に命じた。 駆逐艦から、「ピィキーーーン。」とソナー音が響いた。 アクデブは敵に自艦の位置が知れるが、同時に敵の位置も明るみにでるのだ。 ソナー員が、「反応が薄いですが返ってきました。」 と報告する。 どうやら学習したようだ。 魚や海水の音と潜水艦からの反射音の区別をである。 「うむ、よくやった、では反撃だ。」 やっと訓練の成果が観えてきた駆逐艦であった・・・・・・
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