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翌日の朝、担任の先生から暮らす全員に美守の転校が知らされた。
突然な知らせにクラス全員が戸惑い、その日以降から美守はクラスメートたちに囲まれていて、あおるが話しかける隙もないくらいだった。
どうにかして美守と二人で話せるタイミングを見計らっていたが、月日は流れる一方だった。
今日こそはと思っていても時間が過ぎるのは早く、無情にも友人たちに囲まれて下校する美守の後ろ姿を切なく見送るしかできない日々が続いた。
―――ついに美守がこの学校に通う最後の日。
この日も焦るあおるをよそに、あっという間に放課後になってしまった。
帰りのHRでクラスの代表として美守と仲の良かった友達数人が渡した花束を抱えている彼女を見て言いようのない寂しさが込み上げてきた。
今日を逃したらもう終わりだ・・・!
どうにかして伝えようと思ったあおるは、みんなに挨拶を終えた美守が担任に呼ばれて職員室へ行ったのを見て、気味悪がられることを覚悟の上で職員室前で美守が出てくるのを待つことにした。
―――緊張する。
先生と話し込んでいるらしく、美守を待って既に10分程経っている。
ドキドキと心臓が高鳴る。
職員室のドアを前に、あおるは今まで体験したことがないくらい緊張していた。
思えば生まれて初めての告白だ。
早く出てきて欲しいようなまだ出てきて欲しくないような、ソワソワと落ち着かない気持ち。
伝えたいことを頭の中で繰り返すのも、もう何回しているだろうか。
この時、あおるは美守に気持ちを伝えようと必死になっていて周りなんて全く見えてなくて。
気付かなかった。
あおるを見つけて近付いてくる人物、緑川の存在に。
「・・・あおる!」
いつの間にかこちらに来ていた緑川に呼ばれて驚きのあまりビクッと肩が上がった。
「っ!?・・・・・・緑川!?」
「ふぅ・・・やっと見つけたよあおる。気付いたら居ないんだもん。早く帰ろう?」
「あ、えっと・・・き、今日は先に帰ってていいよ・・・!」
美守に伝える最後のチャンスを前に帰るなんて出来ない。
「なんで?ていうかこんな職員室前で何してるの?・・・・・・何か待ってるの?」
にっこりと微笑みながら聞いてくる緑川の口調は優しいのに、どこか怖い。
「それはっ・・・・・・えっと、その・・・・・・」
「帰ろう」
「え!?ま、待って!!緑川・・・!」
もごもごと誤魔化そうとするあおるの手首を掴み強引に歩き出した緑川に、あおるは連れて行かれまいと踏ん張った。
「・・・こっち来いって」
だがあおるの抵抗も虚しく、グイッと引っ張った緑川は職員室の直ぐ近くにある資料室のドアを開け、あおるを引き込むと、ガチャッと本棚しかない小さな部屋のドアの鍵を素早く閉める。
「・・・・・・大体予想はつくけど、さっき職員室前であおるは何をしようとしてた?」
「こ、ここから出してよ!緑川・・・っ!!」
壁に追い詰められたあおるが緑川に訴えた。
どうにかして資料室から出ようと足をバタつかせるが、両方の手首を顔の横で緑川によって壁にガッチリ抑えられているため動けない。
「あおる答えろよ。何しようとしてた?」
「・・・そんなの緑川には関係なっ・・・!」
関係ない、勢いでそう言ったとき緑川の眉間に皺が深まるのを見てあおるは言葉を切った。
「・・・・・・お願いだから・・・離してよ、緑川」
力で適わないばかりか声が震え、目に涙が溜まっていくのが自分でも分かって情けなく感じた。
その時、
―――ガラッ
職員室のドアが開く音がした。
「・・・・・・転校先でも頑張りなさいよ。元気でね!」
「はいっ、頑張ります!今までありがとうございました」
耳に入る担任と美守の声。
あおるはハッとなって緑川から逃れようと試みる。
「っ緑川!!離して!!!」
早くしないと、美守さんが・・・!
美守さんが行ってしまう!
「離すわけないだろ!っく、んな暴れんな・・・っ!」
「なんでっ!?お願いだからっ・・・・・・緑川!!」
どんどん遠ざかっていく足音。
ここから大声で叫んだら伝わるだろうか。いっこうに押し返せない緑川。
あおるは大きく息を吸って声と共に吐き出した。
「みもりさっんぅ・・・・・・!?んんーー!!」
だが、あおるの精一杯の大声は緑川の唇で遮られた。
「みもっ・・・!?んっ・・・・・・んぅ!!?」
それでも声を出そうとするあおるの口に今度は舌が入ってくる。
後頭部は押さえ込まれているため後ろにも引けない。胸を両手で押し退けようとしても緑川は動かなかった。
あおるの抵抗で、お互いの歯が唇にガツッと何度もあたり、痛みと同時に鉄のような不味い血の味が口の中に広がった。
息苦しさも相まってあおるの力は徐々に抜け、抵抗もなくなると緑川は離れた。
「っはぁ・・・はぁ、はぁ」
あおるは不足した酸素を取り込む。
流石に今回は緑川の呼吸も少し乱れているようだった。
気付けば足音も聞こえない。
静まり返る資料室内。
「・・・っ!!」
あおるは力の抜けた足腰を気力で動かし、鍵を開けて勢いよく飛び出した。
緑川が自分の名前を叫んだ気がしたが、振り返ることなく夢中で廊下を駆けた。
上履きのまま校庭へ出てすぐ左右に分かれる道を見回したが、もうどこにも美守の姿は無く、あおるは立ち尽くした。
そう言えば、帰りは親が車で迎えにくるからってクラスの友達と一緒に帰らなかったんだっけー・・・
・・・伝えられなかった。
もう会えない。
「っうぅ・・・」
あおるの目から大粒の涙が溢れた。
突然な知らせにクラス全員が戸惑い、その日以降から美守はクラスメートたちに囲まれていて、あおるが話しかける隙もないくらいだった。
どうにかして美守と二人で話せるタイミングを見計らっていたが、月日は流れる一方だった。
今日こそはと思っていても時間が過ぎるのは早く、無情にも友人たちに囲まれて下校する美守の後ろ姿を切なく見送るしかできない日々が続いた。
―――ついに美守がこの学校に通う最後の日。
この日も焦るあおるをよそに、あっという間に放課後になってしまった。
帰りのHRでクラスの代表として美守と仲の良かった友達数人が渡した花束を抱えている彼女を見て言いようのない寂しさが込み上げてきた。
今日を逃したらもう終わりだ・・・!
どうにかして伝えようと思ったあおるは、みんなに挨拶を終えた美守が担任に呼ばれて職員室へ行ったのを見て、気味悪がられることを覚悟の上で職員室前で美守が出てくるのを待つことにした。
―――緊張する。
先生と話し込んでいるらしく、美守を待って既に10分程経っている。
ドキドキと心臓が高鳴る。
職員室のドアを前に、あおるは今まで体験したことがないくらい緊張していた。
思えば生まれて初めての告白だ。
早く出てきて欲しいようなまだ出てきて欲しくないような、ソワソワと落ち着かない気持ち。
伝えたいことを頭の中で繰り返すのも、もう何回しているだろうか。
この時、あおるは美守に気持ちを伝えようと必死になっていて周りなんて全く見えてなくて。
気付かなかった。
あおるを見つけて近付いてくる人物、緑川の存在に。
「・・・あおる!」
いつの間にかこちらに来ていた緑川に呼ばれて驚きのあまりビクッと肩が上がった。
「っ!?・・・・・・緑川!?」
「ふぅ・・・やっと見つけたよあおる。気付いたら居ないんだもん。早く帰ろう?」
「あ、えっと・・・き、今日は先に帰ってていいよ・・・!」
美守に伝える最後のチャンスを前に帰るなんて出来ない。
「なんで?ていうかこんな職員室前で何してるの?・・・・・・何か待ってるの?」
にっこりと微笑みながら聞いてくる緑川の口調は優しいのに、どこか怖い。
「それはっ・・・・・・えっと、その・・・・・・」
「帰ろう」
「え!?ま、待って!!緑川・・・!」
もごもごと誤魔化そうとするあおるの手首を掴み強引に歩き出した緑川に、あおるは連れて行かれまいと踏ん張った。
「・・・こっち来いって」
だがあおるの抵抗も虚しく、グイッと引っ張った緑川は職員室の直ぐ近くにある資料室のドアを開け、あおるを引き込むと、ガチャッと本棚しかない小さな部屋のドアの鍵を素早く閉める。
「・・・・・・大体予想はつくけど、さっき職員室前であおるは何をしようとしてた?」
「こ、ここから出してよ!緑川・・・っ!!」
壁に追い詰められたあおるが緑川に訴えた。
どうにかして資料室から出ようと足をバタつかせるが、両方の手首を顔の横で緑川によって壁にガッチリ抑えられているため動けない。
「あおる答えろよ。何しようとしてた?」
「・・・そんなの緑川には関係なっ・・・!」
関係ない、勢いでそう言ったとき緑川の眉間に皺が深まるのを見てあおるは言葉を切った。
「・・・・・・お願いだから・・・離してよ、緑川」
力で適わないばかりか声が震え、目に涙が溜まっていくのが自分でも分かって情けなく感じた。
その時、
―――ガラッ
職員室のドアが開く音がした。
「・・・・・・転校先でも頑張りなさいよ。元気でね!」
「はいっ、頑張ります!今までありがとうございました」
耳に入る担任と美守の声。
あおるはハッとなって緑川から逃れようと試みる。
「っ緑川!!離して!!!」
早くしないと、美守さんが・・・!
美守さんが行ってしまう!
「離すわけないだろ!っく、んな暴れんな・・・っ!」
「なんでっ!?お願いだからっ・・・・・・緑川!!」
どんどん遠ざかっていく足音。
ここから大声で叫んだら伝わるだろうか。いっこうに押し返せない緑川。
あおるは大きく息を吸って声と共に吐き出した。
「みもりさっんぅ・・・・・・!?んんーー!!」
だが、あおるの精一杯の大声は緑川の唇で遮られた。
「みもっ・・・!?んっ・・・・・・んぅ!!?」
それでも声を出そうとするあおるの口に今度は舌が入ってくる。
後頭部は押さえ込まれているため後ろにも引けない。胸を両手で押し退けようとしても緑川は動かなかった。
あおるの抵抗で、お互いの歯が唇にガツッと何度もあたり、痛みと同時に鉄のような不味い血の味が口の中に広がった。
息苦しさも相まってあおるの力は徐々に抜け、抵抗もなくなると緑川は離れた。
「っはぁ・・・はぁ、はぁ」
あおるは不足した酸素を取り込む。
流石に今回は緑川の呼吸も少し乱れているようだった。
気付けば足音も聞こえない。
静まり返る資料室内。
「・・・っ!!」
あおるは力の抜けた足腰を気力で動かし、鍵を開けて勢いよく飛び出した。
緑川が自分の名前を叫んだ気がしたが、振り返ることなく夢中で廊下を駆けた。
上履きのまま校庭へ出てすぐ左右に分かれる道を見回したが、もうどこにも美守の姿は無く、あおるは立ち尽くした。
そう言えば、帰りは親が車で迎えにくるからってクラスの友達と一緒に帰らなかったんだっけー・・・
・・・伝えられなかった。
もう会えない。
「っうぅ・・・」
あおるの目から大粒の涙が溢れた。
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