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「あおるって何かスポーツとかしてんの?」
放課後、いつものように部活後の霧丘に教えながら数学の宿題をしていた時、突然霧丘が尋ねてきた。
「え、スポーツ?」
「ああ。お前って見た目貧弱だから」
きっと悪気は無いんだと思う・・・けど、そんな貧弱とか言われて嬉しいわけがない。
「い、一応腹筋とか腕立てくらいはたまにしてるよ!」
たまにというのは一週間に1度やるかやらないか、その程度。
あおるは少しムキになり、ムッとむくれて返事を返すと霧丘に二の腕を掴まれた。
「・・・にしては腕とかフカフカだな」
「わっ・・・や、やめ」
「そんなムキになんなって」
ははっと笑いながら霧丘はあおるを宥める。
「うー・・・気にしてるのに・・・っ」
あおるは掴まれている腕をバッと大げさに振り払う。
「ごめんごめん、貧弱ってのは言い過ぎだな。うん、あおるはそのくらいがちょうどいいよ」
筋肉質なあおるは想像できない、そう言い霧丘はニカッと屈託の無い笑顔であおるの頭をクシャクシャと撫でた。
なんだかフォローになってない気もするが、そんな笑顔を向けられると気にしている事の方が馬鹿らしくなってくる。
「霧丘って、スポーツしてるからそんな明るいのかな・・・」
頭に置かれている霧丘の手を温かく感じながら、あおるはポツリと呟いた。
「なんだよ突然・・・でもまぁ、運動は楽しいよ。俺はね。特に部活は!」
「どのくらい・・・?」
「へ?・・・えーっと、勉強の百倍?」
口元に手を置き、考える素振りをして霧丘が答える。
「・・・・・・そ・・・それなら・・・・・・」
「・・・あおる?」
俯き、肩に力が入ってわずかに震えているあおるに気付いた霧丘が心配そうに覗き込む。
「・・・俺っ・・・今度・・・き、霧丘とバドミントン・・・してみたいっ・・・」
あおるは膝の上に握りこぶしをつくり、ギュッと閉じた目に力を入れて精一杯言った。
断られるかもしれない、断られたらどうしよう、その後気まずくならないかな、そんな思いの中で初めて自分から友達を誘った。
たかが遊びに誘うのに緊張しすぎかもしれない。
こんな誘い方じゃ余計に気まずい・・・!
さらりと言いたかったがうまく言葉が出なくて、思った以上に真剣になってしまったのだ。
「・・・・・・お、お前なあ!顔上げろ・・・っ!」
「いっ!?」
俯いたままのあおるの額に霧丘がビシッとデコピンした。
顔を上げると、霧丘の顔が少し赤くなっていることに気付く。
「そーいうのは普通に言え!普通に!」
「ご、ごめん。言い慣れてないから何だか変に緊張して・・・」
「お前が顔真っ赤にして、声も震えてっから何事かと思っただろー!?不覚にもか・・・っなんでもない!」
可愛いなんて思ってしまったと思わずそう言いそうになって霧丘は言葉を飲み込んだ。
同性相手に可愛いなんて表現は間違えてると思ったから。
「う、うん。でも・・・なんで霧丘まで顔赤いの?」
「ちがっ・・・焦ったんだよマジで!あおるがどうかしたんじゃないかって!」
霧丘はなぜかドキドキと高鳴る心臓の鼓動を隠すようにあおるの頭を今度はグシャグシャと少し強めに撫でた。
「それで・・・今度バドミントンできる?」
「・・・ああ!次の土曜日に5時ごろ体育館来いよ。4時までは部活あってるから、その後な」
「分かった・・・!!」
誘ってみて本当に良かった。
あおるは嬉しくて勢いよく返事をした。
「・・・あおる前よりも明るくなったよな」
ふとそう呟いた霧丘の声は嬉しそうな顔で宿題の問題に取りかかったあおるには聞こえていなかった。
◇
土曜日、約束していた通りあおるは霧丘とバドミントンをした。
部活後、部員は全員帰ったようで体育館には霧丘と二人だけ。
体育館シューズは持参して、ラケットは霧丘が貸してくれた。
最初は羽がラケットに掠りもしなかったが、霧丘が教えてくれて少しずつまともに打てるようになった。
さすが部活でしているだけあって、霧丘は一度も空振りやミスはしなかった。
綺麗なフォームで打つ霧丘の姿に素直にかっこいいと言ったら霧丘は照れて打った羽が変なところに飛んでいった。
焦ってその羽を追いかけてどうにかラリーを繋いだ霧丘の格好が可笑しくて思わず笑ったら少し怒られた。
楽しい。
本当に楽しくて心が温かい。
こんな気持ちは初恋だった人、美守さんと話していたとき以来かも知れない。
こうやって運動する事も楽しいけれど、霧丘という友達と遊んでいることそれ自体が楽しかった。
「ふー・・・いい汗かいた」
「な!?楽しいだろ?また時々体育館借りてやろーぜ」
「うん!」
きっと相手が霧丘だから楽しいんだ。
2時間ほど遊んで、後片付けをしながらあおるはそう思った。
帰り道、霧丘の提案に乗ってファミレスで夕食を食べた。
もちろん今度は割り勘で。
オムライスを頼んだらミニトマトが2つ添えられていた。
トマトが苦手だって言ったら霧丘が残すのは勿体無いからと言って食べてくれた。
代わりに霧丘が頼んだハンバーグに添えられていたブロッコリーを貰った。
―――誰かとは大違いだな・・・
霧丘がトマトを食べてくれる姿を見て一瞬チラッと緑川の顔が浮かんだけどすぐに消えた。
思い出しても平気な自分に気付いて驚いたと同時に自分にも友達ができたんだと、少し緑川に対して勝ち誇ったような気持ちになった。
霧丘にオムライスのケチャップは平気なのかと聞かれ、それは平気だと答えたらなんだそりゃと笑われた。
霧丘は明るくて、その明るい性格が自分にも伝染していくみたいだ。
帰り道、土曜日の夕方5時からは運動する日にしようと、霧丘との会話の中でそう決まった。
放課後、いつものように部活後の霧丘に教えながら数学の宿題をしていた時、突然霧丘が尋ねてきた。
「え、スポーツ?」
「ああ。お前って見た目貧弱だから」
きっと悪気は無いんだと思う・・・けど、そんな貧弱とか言われて嬉しいわけがない。
「い、一応腹筋とか腕立てくらいはたまにしてるよ!」
たまにというのは一週間に1度やるかやらないか、その程度。
あおるは少しムキになり、ムッとむくれて返事を返すと霧丘に二の腕を掴まれた。
「・・・にしては腕とかフカフカだな」
「わっ・・・や、やめ」
「そんなムキになんなって」
ははっと笑いながら霧丘はあおるを宥める。
「うー・・・気にしてるのに・・・っ」
あおるは掴まれている腕をバッと大げさに振り払う。
「ごめんごめん、貧弱ってのは言い過ぎだな。うん、あおるはそのくらいがちょうどいいよ」
筋肉質なあおるは想像できない、そう言い霧丘はニカッと屈託の無い笑顔であおるの頭をクシャクシャと撫でた。
なんだかフォローになってない気もするが、そんな笑顔を向けられると気にしている事の方が馬鹿らしくなってくる。
「霧丘って、スポーツしてるからそんな明るいのかな・・・」
頭に置かれている霧丘の手を温かく感じながら、あおるはポツリと呟いた。
「なんだよ突然・・・でもまぁ、運動は楽しいよ。俺はね。特に部活は!」
「どのくらい・・・?」
「へ?・・・えーっと、勉強の百倍?」
口元に手を置き、考える素振りをして霧丘が答える。
「・・・・・・そ・・・それなら・・・・・・」
「・・・あおる?」
俯き、肩に力が入ってわずかに震えているあおるに気付いた霧丘が心配そうに覗き込む。
「・・・俺っ・・・今度・・・き、霧丘とバドミントン・・・してみたいっ・・・」
あおるは膝の上に握りこぶしをつくり、ギュッと閉じた目に力を入れて精一杯言った。
断られるかもしれない、断られたらどうしよう、その後気まずくならないかな、そんな思いの中で初めて自分から友達を誘った。
たかが遊びに誘うのに緊張しすぎかもしれない。
こんな誘い方じゃ余計に気まずい・・・!
さらりと言いたかったがうまく言葉が出なくて、思った以上に真剣になってしまったのだ。
「・・・・・・お、お前なあ!顔上げろ・・・っ!」
「いっ!?」
俯いたままのあおるの額に霧丘がビシッとデコピンした。
顔を上げると、霧丘の顔が少し赤くなっていることに気付く。
「そーいうのは普通に言え!普通に!」
「ご、ごめん。言い慣れてないから何だか変に緊張して・・・」
「お前が顔真っ赤にして、声も震えてっから何事かと思っただろー!?不覚にもか・・・っなんでもない!」
可愛いなんて思ってしまったと思わずそう言いそうになって霧丘は言葉を飲み込んだ。
同性相手に可愛いなんて表現は間違えてると思ったから。
「う、うん。でも・・・なんで霧丘まで顔赤いの?」
「ちがっ・・・焦ったんだよマジで!あおるがどうかしたんじゃないかって!」
霧丘はなぜかドキドキと高鳴る心臓の鼓動を隠すようにあおるの頭を今度はグシャグシャと少し強めに撫でた。
「それで・・・今度バドミントンできる?」
「・・・ああ!次の土曜日に5時ごろ体育館来いよ。4時までは部活あってるから、その後な」
「分かった・・・!!」
誘ってみて本当に良かった。
あおるは嬉しくて勢いよく返事をした。
「・・・あおる前よりも明るくなったよな」
ふとそう呟いた霧丘の声は嬉しそうな顔で宿題の問題に取りかかったあおるには聞こえていなかった。
◇
土曜日、約束していた通りあおるは霧丘とバドミントンをした。
部活後、部員は全員帰ったようで体育館には霧丘と二人だけ。
体育館シューズは持参して、ラケットは霧丘が貸してくれた。
最初は羽がラケットに掠りもしなかったが、霧丘が教えてくれて少しずつまともに打てるようになった。
さすが部活でしているだけあって、霧丘は一度も空振りやミスはしなかった。
綺麗なフォームで打つ霧丘の姿に素直にかっこいいと言ったら霧丘は照れて打った羽が変なところに飛んでいった。
焦ってその羽を追いかけてどうにかラリーを繋いだ霧丘の格好が可笑しくて思わず笑ったら少し怒られた。
楽しい。
本当に楽しくて心が温かい。
こんな気持ちは初恋だった人、美守さんと話していたとき以来かも知れない。
こうやって運動する事も楽しいけれど、霧丘という友達と遊んでいることそれ自体が楽しかった。
「ふー・・・いい汗かいた」
「な!?楽しいだろ?また時々体育館借りてやろーぜ」
「うん!」
きっと相手が霧丘だから楽しいんだ。
2時間ほど遊んで、後片付けをしながらあおるはそう思った。
帰り道、霧丘の提案に乗ってファミレスで夕食を食べた。
もちろん今度は割り勘で。
オムライスを頼んだらミニトマトが2つ添えられていた。
トマトが苦手だって言ったら霧丘が残すのは勿体無いからと言って食べてくれた。
代わりに霧丘が頼んだハンバーグに添えられていたブロッコリーを貰った。
―――誰かとは大違いだな・・・
霧丘がトマトを食べてくれる姿を見て一瞬チラッと緑川の顔が浮かんだけどすぐに消えた。
思い出しても平気な自分に気付いて驚いたと同時に自分にも友達ができたんだと、少し緑川に対して勝ち誇ったような気持ちになった。
霧丘にオムライスのケチャップは平気なのかと聞かれ、それは平気だと答えたらなんだそりゃと笑われた。
霧丘は明るくて、その明るい性格が自分にも伝染していくみたいだ。
帰り道、土曜日の夕方5時からは運動する日にしようと、霧丘との会話の中でそう決まった。
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