ずっと君だけ。

しゅく

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―――霧丘と仲良くなって毎日が楽しかった。



時々、他のクラスの人達から霧丘と一緒にいて釣り合ってないとか、なんで一緒にいるの?など言われたりもしたけれど、それを知った霧丘はどうしてあおると一緒に居たら駄目なのか?って聞き返していた。
霧丘がそうやって怒ったことで、それ以来周りは何も言わなくなった。

自分もどうして一緒にいてくれるんだろうっていう不安は極力考えないようにした。
霧丘がいてくれるだけで十分だった。


1年から2年になる時に知ったのだが、中学校では3年間クラス替えが無いらしい。
男女比が8:2で周りは不真面目だったり、チャラついてて今でも少し怖かったりもするけれど、E組になって本当に良かったと思っている。

クラス替えが無いと分かったあおるはテストも真面目に受けた。
勉強は苦ではなくて、コツコツやっていた。

担任からなんでE組なんだと言われた時は1年の時にわざとテストで手を抜いていた事がバレたのかと思い、少し焦ったけれど、純粋に褒めてもらえただけだった。


あの日以来、毎週欠かさずとは言えなくても、土曜日の運動する日は継続されている。
最初に比べ、バドミントンが上達したと霧丘が褒めてくれた。

霧丘の試合がある時には、あおるも何度か応援に行った。


宿題を教えながら一緒にやる事もずっと続けた。
その成果で数学の成績が上がったらしく、先生に褒められたと霧丘が抱きついてきて、あおるはまるで自分が褒められたみたいに嬉しかった。



毎日他愛のない話しで笑って、
時々ムッとむくれたりして、
毎日一緒に昼食を食べて、
たまにお互いの家に行き来して遊んだ。


楽しい時間は過ぎるのが早いってよく聞くけれど、本当にその通りだった。


気付けば高校の志望校を決めなければならない時期。

あおるは無難に家から一番近い公立高校を志望していたが、担任が碧翠へきすい学園の推薦はどうかと勧めてきた。
スポーツ推薦で早くに決まっていた霧丘と同じ学校。

あおるにとっては願ってもない話しで嬉しく思う反面、それ以上にあおるは驚きの方が大きかった。


「先生・・・どうして俺なんですか?」

碧翠学園は成績家柄ともに優秀でなくては入れない。
もしくは霧丘みたいなスポーツ面で特に秀でた成果を上げている者。
それは誰でも常識のように知っていることだ。

「掛田は2年になってから心を入れ替えて頑張っているだろ?成績も10位以内をキープしている。E組なのにも関わらず周りに流されることなく努力してきた事を高く評価している」

「あ、ありがとうございます・・・っ」

ペコッと勢いよく頭を下げる。
そういう事ならば本当に嬉しいことだ。
だが、別に首席なわけでもない。成績はいつも学年8位程度。
特技もなく、良い家柄でもないあおるは受かるなんて到底思えなかった。

その日はとりあえず、学園のパンフレットだけ貰って帰った。





「あおる、碧翠学園の推薦はもちろん受けるわよね?」

夕食時、先に食べ終えて食器洗いを始めていた母親が突然手を止め、振り返って聞いてきた。
既に担任が母親に話していたのだろうか。

ちゃんと自分の進路の事に関心を持ってくれているのだと分かってあおるは少し嬉しくなった。

「・・・一応不備がないか確認しておくから、願書は今日書いて渡しなさい」

あおるの意思とは関係なく、碧翠学園の推薦を受ける事は母親の中で決まっているようだった。
少し待ってほしい、自分の意見も聞いてほしいとあおるが話し出す。

「・・・・・・一番近い公立の高校と迷ってて・・・それに碧翠学園は遠いから・・・」

これもすんなりと推薦の話を快諾できない理由の一つ。
例え受かったとしても、通学に長時間かかってしまうのだ。

家から近い高校に通うようになれば放課後の時間を使ってアルバイトがしたい。
バイト代は微々たるものだと思うが、高校卒業後は一人暮らしするために貯金がしたい。

「・・・公立?あおる、あなた先生からお話聞いたの!?推薦は受かれば3年間授業料免除なのよ?通学だって電車で通える距離でしょう!?言っておくけど、二校も受験料払えないわよ」

生活費や教育費を払ってまともな生活をしていくために母親が毎日仕事で忙しく働いている事は知っている。
金銭的に余裕がないのもよく分かっていた。
一つの受験しかできないのなら、絶対に受かる方を選ぶのが普通だ。

「で、でも・・・成績だって学校で一番ってわけじゃないし、公立の方が受かる確率も高いし・・・・・・」

それに良い家柄じゃないから・・・碧翠学園に受かるわけない。
なんて仕事で苦労している母親の前で言えるはずがない。

受験シーズンは周りも志望校に合格したくて今まで以上に精一杯勉強する。
それこそ、一日中机にへばりつくように。
特に碧翠学園なんか成績維持するくらいじゃ駄目だろう。

「将来の事も考えなさい。収入の良いお仕事に就くためにはそれなりの学歴が必要なのよ。絶対推薦に受かるように頑張りなさい。先生も私も・・・応援してるわ」

そう言うと食器を洗い終えたらしい母親は自室に去って行った。



―――応援してるわ。

母親が付け足すように言ったその一言が酷く温かく感じた。

母親に期待されるのは何時ぶりだろうか。


受験まであと約半年。
必死で勉強すれば受かるだろうか。
成績で家柄をカバーできるくらいにまでなれば良いのか。

よくよく考えれば高校でアルバイトをするよりも、碧翠学園を卒業して給料の高い職に就いた方が一人暮らしが早くできる。
そのことに後で気付くほど、あおるは早く自立したいと焦っていたのだ。

期待されれば人はそれに応えたくなるもの。


・・・がんばる。

あおるの口から独り言のように言葉が漏れた。

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