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碧翠学園の推薦を受ける。
そう決めてからあおるはひたすら頑張った。
今まで勉強したことを最初から全部復習した。
最低でも教科書に書いてあることは全部完璧に理解しようと、分からないところがあれば積極的に先生に聞いた。
受験間近で宿題も出されなくなり、霧丘に放課後教えることもなくなった。
霧丘が勉強に必死な自分に気を遣って、土曜日の運動もやめるか?って提案してきたけれど、それだけは続けたいと言った。
あおるにとって唯一の息抜きだったから。
結局、毎週土曜日の運動は受験の1ヶ月前まで続いた。
霧丘は全国からバドミントン強い奴らが集まるから負けてられないと、日々練習に打ち込んでいた。
受験まであと一ヶ月を切った頃。
授業はもう学習範囲は全て終わったと、担任が自己学習の時間に充てていたそんな時。
「・・・なぁ、あおる。明日の放課後・・・1時間だけでいいから俺に時間くれないか?」
隣の席でスマホを触っていた霧丘がふいに顔を上げ尋ねてきた。
珍しく真顔な霧丘にあおるは少し動揺する。
「う、うん。いいけど・・・何かあるの?」
「・・・俺どうしてもあおると行きたい所があって」
「えっ、どこに?」
「あ、やべっ・・・ごめん時間ない、詳しくはまた明日な!」
「う、うん・・・また明日」
バタバタと身支度を済ませると霧丘は授業終了のチャイムが鳴ると同時に、あおるに手を振りながら部活に走って行った。
翌日の放課後。
結局、行き先を知らされぬまま、あおるは霧丘に腕を引かれて半強制的にバスに乗せられた。
バスに乗って15分くらいの所で降車し、少し歩くと大きな鳥居が見えた。
「・・・・・・神社?」
「ここ、学業に強い神様ってあったからさ。受験には願掛けも大切だと思ってな!」
わざわざネットで調べてくれたのだろう。
既に進路が決まっているとは言え、霧丘だって練習やトレーニングで忙しいはずなのに。
「あ・・・ありがとう霧丘、連れてきてくれて・・・」
あおるは心から応援してくれる霧丘に感激した。
はぐらかして行き先を教えてくれなかった霧丘に対して、渋々な態度でバスに乗った事が申し訳なく思えた。
「いいって!俺がお前と来たかったんだし。よっし、早速お参りしようぜ」
「うんっ!」
霧丘の明るい笑顔に促され、二人で参拝した。
学業成就の祈願をし、帰ろうと足を進めていた時、
「あ!あおるちょっとここで待ってて」
「え、霧丘・・・?」
霧丘は急に神社の本堂の方に入って行った、かと思いきやすぐに戻って来た。
「あおる!はいこれ」
走って戻ってきた霧丘の片手にはお守りが握られていた。
「学業成就!頑張れっ」
グイッとお守りを差し出される。
寒さのせいで少し赤くなった霧丘の鼻先、血色の良い頬、形の良い唇のわずかな隙間から出る弾んだ白い吐息。
二重でくっきりとした瞳を細めてニカッと笑う霧丘があおるにはキラキラして見えた。
あおるは差し出された霧丘の手ごと両手でギュッと握りしめる。
「っ・・・霧丘ありがとう・・・ほんとに!俺、頑張る!」
「おお!気合いは分かったけど・・・っ、あおるの手冷たすぎ」
「霧丘の手、カイロみたいだ・・・」
あったかい・・・と呟いてなかなか手を離そうとしないあおるに霧丘が笑って言う。
「んだよそれ。このまま手繋いで帰るか?」
「いいね、それ。・・・でもここの階段狭いから気を付けないと」
言葉を真に受けてそのまま境内を歩こうとするあおるに霧丘が吹き出した。
「ぶっ・・・、いや冗談だって!」
「な、なんだよそれ・・・っ」
ムッと大袈裟に頬を膨らませ、あおるは貰ったお守りを握りしめた手を自分のコートのポケットにボスッと突っ込んだ。
「あー、はいはい。もうすぐバス来るからはよ行くぞ」
「あっ、待ってよ霧丘!」
いつものようにあおるの頭をクシャクシャにすると、霧丘はバス停まで走り出し、それにあおるも続いた。
運良く座れたバスの2人がけの席の窓からあおるは景色を覗いた。
差し出されたお守りが、霧丘の行動が、笑顔が、嬉しくてたまらなかった。
◇
第一志望校に合格したくて周りが塾通いする中、あおるは一人で黙々と頑張った。
何時間も机に向かう日々。
もう勉強したくないと思ったことも何度もあった。
その度に霧丘から貰ったお守りを見て、励まされた。
夜遅くまで勉強した日はやはり睡魔が襲ってくる。
そんな時は推薦に落ちて、霧丘や母親、さらに担任のがっかりした顔、高校に通えず中学浪人になった自分を想像する。
そうすると恐怖感に駆られて目が覚めてくるのだ。
・・・・・・できるだけの事はやってきた。
その成果をぶつけよう、そう意気込んで迎えた受験当日。
「・・・あおる、受験票は持ったわね?」
「うん、持ってるよ」
早朝に母親から見送られる。
母親からは特別お守りなどは無かったけれど、
「いってらっしゃい。頑張ってくるのよ」
こうやって見送られるだけでも嬉しい。
通帳を見て眉間に皺を寄せていた母親が払ってくれた受験料を無駄にはしたくない。
昨晩は仕事で遅くに帰宅した母親が、自分よりも早起きして今日の日のためにお弁当を作ってくれた。
態度は相変わらず素っ気なかったりするけれど、陰で母親が応援してくれているのはよく伝わってくる。
―――お守りも持った。
制服のズボンのポケットに手を入れ、霧丘に貰ったお守りを確かめるようにギュッと握る。
精一杯、頑張るんだ。
「行ってきます・・・!」
あおるはそう言うと、玄関を開け、ピリッと身の引き締まるような寒さの中に出ていった。
そう決めてからあおるはひたすら頑張った。
今まで勉強したことを最初から全部復習した。
最低でも教科書に書いてあることは全部完璧に理解しようと、分からないところがあれば積極的に先生に聞いた。
受験間近で宿題も出されなくなり、霧丘に放課後教えることもなくなった。
霧丘が勉強に必死な自分に気を遣って、土曜日の運動もやめるか?って提案してきたけれど、それだけは続けたいと言った。
あおるにとって唯一の息抜きだったから。
結局、毎週土曜日の運動は受験の1ヶ月前まで続いた。
霧丘は全国からバドミントン強い奴らが集まるから負けてられないと、日々練習に打ち込んでいた。
受験まであと一ヶ月を切った頃。
授業はもう学習範囲は全て終わったと、担任が自己学習の時間に充てていたそんな時。
「・・・なぁ、あおる。明日の放課後・・・1時間だけでいいから俺に時間くれないか?」
隣の席でスマホを触っていた霧丘がふいに顔を上げ尋ねてきた。
珍しく真顔な霧丘にあおるは少し動揺する。
「う、うん。いいけど・・・何かあるの?」
「・・・俺どうしてもあおると行きたい所があって」
「えっ、どこに?」
「あ、やべっ・・・ごめん時間ない、詳しくはまた明日な!」
「う、うん・・・また明日」
バタバタと身支度を済ませると霧丘は授業終了のチャイムが鳴ると同時に、あおるに手を振りながら部活に走って行った。
翌日の放課後。
結局、行き先を知らされぬまま、あおるは霧丘に腕を引かれて半強制的にバスに乗せられた。
バスに乗って15分くらいの所で降車し、少し歩くと大きな鳥居が見えた。
「・・・・・・神社?」
「ここ、学業に強い神様ってあったからさ。受験には願掛けも大切だと思ってな!」
わざわざネットで調べてくれたのだろう。
既に進路が決まっているとは言え、霧丘だって練習やトレーニングで忙しいはずなのに。
「あ・・・ありがとう霧丘、連れてきてくれて・・・」
あおるは心から応援してくれる霧丘に感激した。
はぐらかして行き先を教えてくれなかった霧丘に対して、渋々な態度でバスに乗った事が申し訳なく思えた。
「いいって!俺がお前と来たかったんだし。よっし、早速お参りしようぜ」
「うんっ!」
霧丘の明るい笑顔に促され、二人で参拝した。
学業成就の祈願をし、帰ろうと足を進めていた時、
「あ!あおるちょっとここで待ってて」
「え、霧丘・・・?」
霧丘は急に神社の本堂の方に入って行った、かと思いきやすぐに戻って来た。
「あおる!はいこれ」
走って戻ってきた霧丘の片手にはお守りが握られていた。
「学業成就!頑張れっ」
グイッとお守りを差し出される。
寒さのせいで少し赤くなった霧丘の鼻先、血色の良い頬、形の良い唇のわずかな隙間から出る弾んだ白い吐息。
二重でくっきりとした瞳を細めてニカッと笑う霧丘があおるにはキラキラして見えた。
あおるは差し出された霧丘の手ごと両手でギュッと握りしめる。
「っ・・・霧丘ありがとう・・・ほんとに!俺、頑張る!」
「おお!気合いは分かったけど・・・っ、あおるの手冷たすぎ」
「霧丘の手、カイロみたいだ・・・」
あったかい・・・と呟いてなかなか手を離そうとしないあおるに霧丘が笑って言う。
「んだよそれ。このまま手繋いで帰るか?」
「いいね、それ。・・・でもここの階段狭いから気を付けないと」
言葉を真に受けてそのまま境内を歩こうとするあおるに霧丘が吹き出した。
「ぶっ・・・、いや冗談だって!」
「な、なんだよそれ・・・っ」
ムッと大袈裟に頬を膨らませ、あおるは貰ったお守りを握りしめた手を自分のコートのポケットにボスッと突っ込んだ。
「あー、はいはい。もうすぐバス来るからはよ行くぞ」
「あっ、待ってよ霧丘!」
いつものようにあおるの頭をクシャクシャにすると、霧丘はバス停まで走り出し、それにあおるも続いた。
運良く座れたバスの2人がけの席の窓からあおるは景色を覗いた。
差し出されたお守りが、霧丘の行動が、笑顔が、嬉しくてたまらなかった。
◇
第一志望校に合格したくて周りが塾通いする中、あおるは一人で黙々と頑張った。
何時間も机に向かう日々。
もう勉強したくないと思ったことも何度もあった。
その度に霧丘から貰ったお守りを見て、励まされた。
夜遅くまで勉強した日はやはり睡魔が襲ってくる。
そんな時は推薦に落ちて、霧丘や母親、さらに担任のがっかりした顔、高校に通えず中学浪人になった自分を想像する。
そうすると恐怖感に駆られて目が覚めてくるのだ。
・・・・・・できるだけの事はやってきた。
その成果をぶつけよう、そう意気込んで迎えた受験当日。
「・・・あおる、受験票は持ったわね?」
「うん、持ってるよ」
早朝に母親から見送られる。
母親からは特別お守りなどは無かったけれど、
「いってらっしゃい。頑張ってくるのよ」
こうやって見送られるだけでも嬉しい。
通帳を見て眉間に皺を寄せていた母親が払ってくれた受験料を無駄にはしたくない。
昨晩は仕事で遅くに帰宅した母親が、自分よりも早起きして今日の日のためにお弁当を作ってくれた。
態度は相変わらず素っ気なかったりするけれど、陰で母親が応援してくれているのはよく伝わってくる。
―――お守りも持った。
制服のズボンのポケットに手を入れ、霧丘に貰ったお守りを確かめるようにギュッと握る。
精一杯、頑張るんだ。
「行ってきます・・・!」
あおるはそう言うと、玄関を開け、ピリッと身の引き締まるような寒さの中に出ていった。
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