49 / 93
9(緑川視点)
しおりを挟む「あ、あの・・・!緑川先輩、握手してください!」
「私もお願いします・・・っ!」
中学3年になり、卒業式が近づいているせいか緑川は最近やたらとラブレター、告白、握手だのを求められることが多かった。
今回は一つ下の後輩にあたる女子2人。
休み時間の移動教室中を狙って来たようだった。
告白は丁寧にお断りをしていたが、握手は断るに断れない。
「俺でよければいくらでも」
にっこりと綺麗な笑顔を作って手を差し出すと、その手を2人の女子は一人ずつ両手でギュッと握った。
「ありがとうございました・・・っ!」
頬を染めた2人の女子達はキャーと言い合いながら小走りで去って行った。
そんな彼女達の背中を見る緑川の表情はさっきまでの笑顔は消え、無表情で冷めたものだった。
「すげーな。俺なら絶対断る・・・」
知らない奴に触られたくないと、緑川のすぐ横で黙って一部始終を見ていた香村が呟く。
香村は自他共に認める、美形だ。
少しつり上がり気味な黒い目に少し長めの漆黒な前髪がかかり、薄めの形の良い唇はいつも不機嫌そうだが、鼻筋の通った綺麗な顔をしている。
その鼻に掛かっているフレームの薄いシンプルな眼鏡は知的な魅力を醸し出していた。
嫌なことは嫌だとはっきり態度に表し、愛想っていうものを知らない。
挨拶されてもシカトは当たり前、そういう男だ。
逆にその冷めたところが堪らないという者も多い。
緑川とは中学1年からの仲で、2人が並ぶと学園のアイドルだとかで、学校中が騒がしくなる。
「・・・・・・香村は愛想くらい俺見て学べ」
「お前のその猫被った性格より今のままがマシだ」
「はっ、そうかよ」
周りからチヤホヤされ、必要以上に注目を浴びてきた中学3年間は緑川にとって苦痛なくらいに長かった。
特に親密なわけでもないが、素を出せる香村がいなかったら気が狂っていたかもしれない。
―――卒業して高校の校舎に移動するのが楽しみで仕方が無い。
つい先日、父さんに高校推薦の受験者名簿を見せて貰ったら当然あいつの名前があった。
中三の秋頃、母さんと久々に食事をした時、あおる以上に気が合う友達は居ないと、寂しくて学校に通いたくない、と言った。
照れくさいからあおる本人には言えない、と付け加えて。
息子がぐれたら大変だと思ったのか、母さんは父さんに交渉し、父さんは推薦枠を多くするといった話をあおるの学校に持ちかけていた。
あおるの母親には母さんが電話で「あおるくんの担任の先生には既に連絡してありますので、お勉強は少し大変かも知れませんがぜひ夫の学園に来て下さい」と話していた。
あおるの母親は願ってもないお話だと喜んでいたらしい。
人からの頼まれごとを無下にできない所や褒められたり応援される事に免疫のないあおるの性格からして、絶対推薦の話を受け入れるという確信があった。
そして、それは見事に的中だった。
あと少しで再会できる。
中一の頃、寝ていたあおるに会って以降は敢えて会いに行くことをしなかった。
「・・・・・・いろいろと楽しみだな」
「・・・は?」
香村が訝しげに聞き返す。
「いや・・・なんでもねぇよ」
そう言う緑川は、いつもの王子様と言われる笑みとはかけ離れた、妖艶な笑みだった。
50
あなたにおすすめの小説
イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺
スノウマン(ユッキー)
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。
大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?
【短編+連載版】一度も話したことないイケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた
時
BL
サクッと読みたい方は短編版(約5000字)をどうぞ!
◇◇◇
「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。
けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。
もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。
ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。
「俺と二人組にならない?」
その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。
執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。
◇◇◇
いいね、エールありがとうございます!嬉しいですー!
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
可哀想は可愛い
綿毛ぽぽ
BL
平民、ビビり、陰キャなセシリオは王立魔術学園へ入学を機に高校デビューを目指したが敢え無く失敗し不良のパシリをさせられる毎日。
同室者の男にも呆れられ絶望するセシリオに天使のような男が現れるが、彼もかなりイカれた野郎のようで……?セシリオは理想の平和な学園生活を送る事が出来るだろうか。また激重感情を抱えた男から逃げられるだろうか。
「むむむ無理無理!助けて!」
━━━━━━━━━━━
ろくな男はいません。
世界観がごちゃごちゃです。余り深く考えずに暖かい目で読んで頂けたら、と思います。
表紙はくま様からお借りしました。
きみが隣に
すずかけあおい
BL
いつもひとりでいる矢崎は、ある日、人気者の瀬尾から告白される。
瀬尾とほとんど話したことがないので断ろうとすると、「友だちからでいいから」と言われ、友だちからなら、と頷く。
矢崎は徐々に瀬尾に惹かれていくけれど――。
〔攻め〕瀬尾(せお)
〔受け〕矢崎(やざき)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる