ずっと君だけ。

しゅく

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「霧丘・・・っ!」

朝。
あおるは珍しく遅刻ぎりぎりで教室へ駆け込み、息を切らしながらも一目散に霧丘に話しかけた。

「おー、あおるはよー」

朝だからか、まだ眠気が多少残っているようで霧丘の間延びした返事が返ってきた。
が、そんなことより・・・

「おれうかってた・・・!!受かってたよ!!」

興奮するあおるに、霧丘は一瞬何のことだか分からないような顔をしたがすぐに目を見開いた。

「え?・・・・・・え!?マジで!!?」

「うん!本当に本当なんだよ!!推薦合格って!」

昨日の夕方、簡易書留で届いた合格通知を直接受け取った。
何度も何度も見直したから見間違えや間違いじゃない。

母親も通知を見て、合格祝いをくれると言っていた。
今朝、遅刻しそうになったのはその嬉しさのあまり昨晩なかなか寝付けなかったからだった。


「やったな!!あおる!頑張ったよお前ー!」

そう言ってガタッと椅子から立ち上がると霧丘はあおるをガシッと抱きしめた。

「うん・・・っ!」

あおるも霧丘の背に腕を回して答える。


嬉しさで涙が出そうだった。





◇ ◇ ◇





桜がちらほらと咲き、まだ少し肌寒さが残る3月末。

卒業式。


小中一貫教育で9年間通ったこの校舎とも今日でお別れ。

9年間の思い出が頭の中に次々に浮かんでくる。
せっかくの祝辞や送辞も、聞いているのに内容がほとんど頭に入ってこない。

早く過ぎる事を願っていた6年間はとても長く、止まればいいのにと思った3年間はあっという間だった。


・・・友達の影響ってかなり大きいと思う。
これまでで学んだことだ。

明るくなれたり、元気になれたり、時にはムッとなることもあるけれど、やっぱり一緒が楽しくて。
そういえば中学校では一度も泣かなかった。

そうかと思うと、辛くて惨めで、時々怖くて、一緒にいることで自尊心を傷つけられることもあった。
小学生の時は泣いてばかりだったっけ。


あの頃、自分が嫌いだった。
今でも好きだ、と胸張って言えるわけじゃないけれど。
少し自信がついたのは確かだ。

怖くて逆らえなかった自分もいけなかった。
やり返すくらいの勇気を持つべきだった。
ちょっとした事で泣く涙腺の弱さも堪え性がなくて、情けなかった。

楽しい事だっていっぱいあるのに。
どうして思い出すと辛くなるような事ばかりが浮かんでくるのだろう。

楽しかったことよりも辛かったり泣いた時の方が鮮明に覚えているから不思議だ。


式も終わり、涙を誘う切ないBGMが流れる中、退場した。
感極まって涙を流す生徒も居た。

霧丘も少し涙ぐんで目が赤くなっていたけれど、あおるは泣かなかった。




式終了後、中学校最後のHRでは担任が号泣していた。

教室で一人ずつ担任から卒業証書を受け取る際、担任からの一言が添えられる。
あおるは推薦に合格したこと、それまでの努力を盛大に褒めて貰った。
それにはクラスメート達も拍手をくれて、少し照れくさかった。

HRの後で卒業式に出席していた霧丘の母親から、霧丘との写真を何枚か撮ってもらって今日は終わった。

「じゃあな、あおる!春休み、暇だったら遊ぼーな!」

「うん!暇な日、俺電話するから・・・!」

「俺もする・・・ってか、スマホ買ったら絶対教えろよー」

「わかったー」

少し冷たい春風に乗って桜の花びらが舞う中、片手に卒業証書を入れた黒筒を握りしめ、もう片方の手を大きく振って霧丘と別れた。


春休みにまた霧丘と遊べる。
そうでなくても碧翠学園に入学したら毎日会える。

スマホはなんと母さんが卒業祝い兼、合格祝いで買ってくれるらしい。
本当に嬉しい。

今日も仕事の都合で一足先に帰った母だが、最近なんだかとても優しいんだ。
スマホは明日買って貰える予定だ。
買った後、そのまま霧丘の家に行って使い方を教えてもらいたいな・・・

あおるはこれからの事を思うと、心が弾んだ。
言い方を変えると浮かれていたんだ。


あんなに受かったことを喜んだ碧翠学園で、あいつが待っていたなんて知らなかったから。

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