ずっと君だけ。

しゅく

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「掛田くん、おはよー」

「お、おはよう・・・」

朝、教室に入って自分の席に着くや否や宮野がやって来た。
少し小首を傾げて挨拶してくる可愛さは本当に同性なのかと思わず疑ってしまうほど。

男子生徒ばかりなこのクラスでは宮野はひときわ目を引く一輪の花のような存在らしく、遠巻きに熱い視線も集まる。

その宮野が可愛らしく口を開いた。

「昨日さ、寮内で緑川くんが誰かと手を繋いで歩いてたっていう噂があったんだけど・・・それって掛田くんかなぁ?実は僕ね、朝から2人が一緒に部屋を出てくるの見ちゃった」

笑顔だけれど怒りを含んだような声色に恐怖を感じて内心ドキリとした。
見られたのなら変に言い逃れをしても余計に何かあるのではと疑われてしまうだけ。

「な、仲直りしたんだ・・・」

どのみち、緑川から仲良く振る舞うように言われていたのだからと、あおるは宮野に言った。

「へぇーそっかぁ。緑川君は親友って話してたけど・・・・・・もしかして掛田くんは緑川くんの事が好きなの?」

そういう意味で、と笑顔のまま顔を近付けてボソリと囁かれる。
その声は、思った以上に冷たくて。

「違うよ・・・っ」

自分が緑川に片想いでもしているかのような言葉に否定した。
ついでに言うと親友でもない。

「よかったぁ、そうだよね!緑川くんとは友情なんだもんね、変なこと聞いてごめんね」

冷たかった宮野の声がパァッと明るくなる。

「い、いや・・・分かってくれたならいいけど」

「じゃあ、掛田くんにお願いなんだけどね」

「な、なに・・・?」

「僕と緑川くん中3の時から付き合ってるんだ。だからね、あんまり親友だからって近付き過ぎないでほしいなあって」

「・・・え?つ、付き合ってるの?」

「うん、でも緑川くんって誰にでも優しいから僕以外見ないでってわがまま言えなくて・・・掛田くん協力してくれないかなぁ」

・・・つまりは親友として緑川の近くに居る自分が邪魔だということだろう。
それに2人が付き合ってるんなら、

「そうだったんだ・・・できる限り邪魔しないようにするよ」

「あっ、あとね僕が掛田くんに言った事は緑川君には内緒にしてね!こんなの・・・恥ずかしいし」

約束だよ?と可愛らしくあおるの手を取ると宮野は華奢な小指を絡ませ、半ば強引に指切りを交わした。


何となく腑に落ちないところはあったけれど、協力した方が自分も緑川から少しでも離れられる。
自分のためにもなるんだ、とあおるはそう思った。







宮野と緑川が付き合ってる・・・

そう聞いた時は驚いたけれど、あんなに可愛い宮野と緑川だったらお似合いだ。
自分がそういった事に疎いだけで、今やニュースなんかで同性婚などの話題も取り上げられている程にありふれているのかも知れない。


でも・・・!!
あおるは珍しく憤っていた。

だいたい付き合っている人が居るんなら俺にあんな・・・き・・・キスとか、ましてそれ以上の事とか・・・絶対おかしい!
いくら弱みを握るためでもあんなのは好き同士がするものだ。
緑川は小学生の頃から間違えてる!

あおるは宮野と楽しそうに会話している緑川を遠くの席から見てそう思っていたが、授業開始のチャイムにハッとした。

そうだ・・・・・・教科書なかった・・・!

緑川の部屋に泊まらせられたため、今日の時間割は何も持ってきていない。
何も取り柄のないあおるはせめて勉強くらいは・・・と取り組んできた。

あおるにとって教科書がないことは一大事だった。

「ご、ごめん教科書見せてもらえないかな?」

勇気を出して隣に頼んでみたが思いがけない返事が返ってきた。

「・・・大丈夫なんじゃない?」

「え・・・?」

「・・・外部生で推薦枠で来てるんでしょ?そんな頭良いなら別に教科書無いくらい平気なんじゃないの」

初めて話しかけた相手にすら冷たくあしらわれる。
外部からの推薦枠ってだけでこんな扱いを受けなきゃならないのだろうか。
そんなの理不尽すぎる。

思っていることが顔に出ていたのだろう、隣の彼は更に口を開いた。

「宮野くんだけじゃないからね。緑川君に憧れて、好きって人。宮野君は仕方ないけど・・・基本的に緑川くんに近付く身の程をわきまえない人って僕嫌いなんだ」

僕みたいな考えの人結構多いんじゃないかな?と嫌な笑顔を向けた。

「・・・自分から近付くなんてしてない」

あおるは勝手な言い分に反論したが、冷たい目を向けられ無視されるだけだった。

気分を害されたが授業を聞こうと気持ちを切り替えてペンを握った時。

「先生、すいません」

緑川の声が教室全体に届いた。

「あの俺、掛田くんの隣の席に移ってもいいですか?やっぱり後の方が落ち着いて授業受けれるので」

な・・・・・・!!?

「あ、ああ・・・席に関しては本人同士で決めてくれ」

教師も緑川に取り繕うような態度。
親が理事長の緑川には逆らえないのだろう。

萩尾はぎおごめんね」
「ううん、いいよ緑川君のためなら」
「荷物はあとで入れ替えようね」

授業の真っ最中であるのにも関わらず、緑川は堂々と席を入れ替わった。

俺の学校も同然ってこういう事か・・・!

あおるの隣だった萩尾はあおるを思いっきり睨み付けると緑川の座っていた席に移動した。

「えー・・・授業再開するぞー」

「はい、あおる。教科書見るでしょ?」

そう言ってピタリと机をくっ付けられ、微笑まれた。

「あ・・・う、うん・・・」

緑川に席を譲った萩尾や緑川に憧れや好意を寄せていると思われる生徒、特に宮野からの視線が痛いくらいに突き刺さる。


こうやって敵が増えていくんだ・・・

居づらくなるんだ・・・


友達もできなくなっていくんだ・・・
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