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しおりを挟む「あ、そっか・・・二人分だったっけ」
朝、5時半。
あおるは台所に立ち、まだ覚醒しきっていない頭で緑川の分の弁当も作るよう言われた事をぼんやりと思い出す。
・・・そういえば緑川の好き嫌いとかって知らない。
あの緑川の事だからちょっと味が口に合わなかったり、嫌いな物が入っていたりしたらすぐ文句を言ってくるに違いない。
昨日だってわざとではあったが、ちょっとラインに気付かなかったくらいで散々な目にあった。
授業中なのにすぐ真横から「誰とどこに居た?」と答えるまでしつこく問いただされた。
小声だったけれど、あれは尋問だった。
なんとなく霧丘の名前は出したらいけない気がして一人で屋上に居たって嘘をついたけれど、それでも納得いかない様子で、次から自分も屋上に行くと言い出すから・・・本当に困った。
緑川も来るだなんてとんでもない。
唯一の癒やしの時間なのに。
しばらく霧丘との昼食は断念せざるを得ないのかな・・・
そんな事を考えていたら緑川の話が聞こえて無かったらしく、面と向かってシカトするなんていい度胸だな、と太ももや股間の際どい所を撫でられたり、真剣に授業を聞いている時に背中を背骨に沿って上から下へツーっとなぞられたり・・・性的な嫌がらせを受けた。
授業に集中できないから止めて欲しいと言ったら、「・・・この生真面目」と耳元でボソッと厭味を言われ、同時にフッと息を吹きかけられてゾクリと鳥肌が立った。
耳を手で押さえて横目で睨むと、何が可笑しいのか緑川はニヤニヤと嫌な笑顔だった。
さっきまで機嫌悪くしていたかと思えば、人が嫌がってるのを見て楽しそうにしているし・・・なんて気分屋なんだろうか。
ふと視線を感じて顔を上げると、前方の席から振り返ってこちらを睨んでいる宮野と目が合った。
人を殺せそうなくらい凄まじい視線にバッと目を逸らしたけれど・・・いつから見ていたのだろう。
あれは怖かった。
緑川もそれに気付いたが、睨まれているとは思っていないらしく、わざとらしく「ここ漢字違う」とべったり不必要に密着してくるし、宮野からの視線は突き刺さるしで、自分への嫌がらせか、宮野に嫉妬させたいのか何なのか・・・・・・本当に散々だった。
「あっ、こ、焦げる・・・!」
昨日の事を思い返していたら、焼いていた卵焼きが焦げそうになっていた。
緑川の好き嫌いを考えているそんな自分が酷く馬鹿らしく思えて、結局これといって普段と変わりない弁当を作った。
学内レストランが飽きたと言っていた緑川。
この前、霧丘と3人で食べた夕食が意外と美味しくてまた食べたいと思ったのか。
結局、どんなつもりでお弁当作るよう言ってきたのか分からないけど。
・・・どうせなら美味しく食べてほしくはある。
あおるは二人分の弁当を作り終えると、傾かないように気を付けながらも鞄に詰め込み、身支度すると直ぐに仕事で誰も居ない家を出た。
「あおるー!」
校門に向かって歩いていた時、後から呼ばれて振り返る。
「霧丘!おはよう」
手を振りながらこちらに向かってきていた霧丘に嬉しくて笑顔で応えた。
「・・・実は今日さ、俺あおるに会いたくて早めに出てきたんだ」
タイミング良くてラッキー、とそんな事を爽やかな笑顔で言われたら嬉しいに決まってる。
だが霧丘のあまりにストレートすぎる発言になんだか気恥ずかしくて、あおるは思わず薄ら赤面した。
「えっ、な、なんで?」
「ぶっ、あおる赤くなってる」
「や、恥ずかしいから普通に・・・」
「でも今ちょっと嬉しかったろ?」
ニヤリと笑みを向けられて何か言い返したいが、実際に霧丘の言う通りであおるは言葉に詰まった。
「・・・で、あおるにお願いなんだけどな」
「うん?」
「俺、今日あたってて、その・・・数学が・・・」
あははっと誤魔化すように笑ってみせる霧丘にあおるの声が低くなる。
「・・・霧丘、目的は最初からそれだったんでしょ」
「・・・ダメ?朝、忙しい・・・?」
しょぼんとして、チラリと見てくる霧丘が少し演技がかって見えるけれど。
「・・・・・・まあ仕方ないからその問題一緒にやってあげるよ」
「っあおるありがとなー!答え写させてくれないあたり愛を感じるー!」
ふざけるようにして霧丘がギュッとあおるに抱きついた。
「ふふっ・・・そう愛のムチってやつ」
こんな事で抱きついてくる大型犬みたいな霧丘に、あおるはなんだか可笑しくて笑ってしまった。
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