ずっと君だけ。

しゅく

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19(緑川視点)

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「・・・・・・んだよあれ」

寮から出て、偶然にも香村と会った緑川が二人並んで登校していた時、前方に歩いている二人に気付いて呟いた。

やや離れているけど、後ろ姿だけで分かる。
間違えるはずがない。


「・・・おい、緑川?おはようございますって叫ばれてるぞ。いつもの王子スマイルはないのか?」

緑川と香村の二人が歩く周りは、いつの間にか増えた他の生徒達で囲まれているが、円をかくように一定の距離が保たれている。
愛想を知らず、人混みを嫌う香村。
人が近付いて来ようものなら冷たい目で睨み、近付くなと凄みを利かせているお陰で大抵は寄ってこないのだ。
鬱陶しい周りを遠ざけるのには香村は本当に役立つ。


「・・・緑川聞こえてないのか?うるさいから早く黙らせてくれ」

横から不機嫌そうな香村が訴えてくるが、気分が悪すぎてそれどころじゃない。
霧丘があおるに抱きついたのを見て、緑川の憤りが増す。

「なに抱き合ってんだよ・・・・・・朝から気分悪いなぁ・・・」


また1回くらい痛い思いしないと分からないかな。
閉じ込めて、外部から遮断して、その目に俺しか映らないようにして・・・


「緑川・・・何をぶつぶつ言ってるんだ。いい加減に・・・」

眉間に皺を寄せた香村が、横見で緑川を睨む。
だが緑川の鋭い視線に気付いて怪訝な顔をし、その視線を辿った。


抱きつかれている奴のあの横顔は確か外部生。

「ははっ・・・あおるは本当に腹が立つなぁ・・・・・・」

緑川が小さく笑って呟く。


仲を引き裂いてやる。
霧丘をあの女のようにしてやると言えばきっと簡単に壊れる。


緑川があおるの元へ近付こうと足を踏み出した時、

「おい!」

香村が緑川の肩を掴みそれを止めた。

「・・・そんなにあの外部生が好きか?」

「・・・・・・・・・は?何言ってんのお前」

行動を制された緑川は核心に触れてきた香村を鋭く睨む。

「好きなんじゃないのか?お前が、あの掛田なんとかってやつの事を」

涼しい顔をして淡々と言う香村に緑川が苛立ったように言葉を返す。

「・・・・・・むしろ気に入らねぇから邪魔すんだよ」

「気に入らないのなら無視すればいい」

「はっ・・・逆だよ。向こうは俺が嫌いらしいからなぁ・・・立場上逆らえないあいつの全てを奪って、言う事聞かせるしかないだろ?」

緑川が吐き捨てるように言った。

「・・・・・・よくは知らないが、友達まで奪わなくても気弱そうな掛田はお前の言う事聞くんだろ?」

確かに、あおるは言う事は何でも聞くから霧丘との仲は裂かないでほしいと言っていた。
小学校の頃は逆らってきたけれど、その原因は遠ざけた。
何のためにあおるから全てを奪いたいのか・・・

「香村・・・お前は知らないだろうけどな。あいつの泣きそうな顔とか涙が溜まった目は・・・俺しか映ってないんだよ。俺だけが知ってる、俺しか知らないって・・・最高だと思わねぇか?」

そう言って緑川は薄笑いを浮かべた。

「・・・ずいぶん酷いな。狂ってるぞ」

「はっ・・・よく言う。俺から見るとお前もだけど」

緑川の言葉に香村は眉間に皺を寄せ、言い返す。

「俺はお前とは違う。大切なものは何か十分わかった上で、精一杯大事にするからな」

「・・・・・・何が言いたい?」

「別に。掛田が可哀相だと思っただけ「緑川くーん!!」

突然、後方から近づいてきていた宮野があげた声によって香村の声は遮られた。

可愛らしく駆け寄った来た宮野は、いつものようにそのまま緑川の背中にボフッと抱きつき、その衝撃で緑川は前方に僅かによろめく。

「っ、宮野・・・?」

「おはよう、緑川くん!・・・・・・・・・と香村」

「・・・悪い、緑川。煩いのが来たから俺先に行く」

香村はあからさまに不機嫌さを露わにし、宮野を一瞥すると眉間に皺を寄せた。

「ちょっと何それ、ひどーい」

「いつも付き纏って・・・いい迷惑だって言ってやれ緑川」

さすが香村。
緑川が言いたいことをズバズバと言ってのける。

「・・・僕にそんな事言ってるけど、香村だって緑川くんのこと好きな人達から、近寄れなくて邪魔って言われてるの知ってるー?」

「お前は近寄ってきてるだろう。どっか行ってくれ」

「僕は香村なんかに圧倒されないもんっ!」


うるさい。
あおるはいつの間にか居なくなっていた上に、香村に言われたことが引っかかってもやもやする。
宮野は煩いしで緑川は苛立たしさを必死に抑えていた。


「・・・まぁまぁ、二人とも。ねぇ宮野、早く教室行こうか」

「うんっ」

宮野は緑川の腕にピッタリとくっ付くと、二人並んで歩き始めた。

「・・・・・・俺には真似できないな・・・」

香村はそんな二人の背中を見て呟いた。

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