ずっと君だけ。

しゅく

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「卵焼きにネギとチーズ入り・・・なんか今日、色々手が込んでるね」

昼休み、場所は私室とかいう緑川がサボる時に使う部屋。

あおるの作った弁当の中身を見て顔を上げた緑川と目が合った。
なぜがテーブルを挟んで座らず、あおるの横に緑川が来て、ひとつのソファーに横並びの状態で座っているために距離がやたらと近くて気まずい。

「うちの冷蔵庫にいっぱい材料あったから・・・」

「へぇー美味そう、いただきます」

そう言ってパクッと緑川が口に入れたのを見てあおるも食べ始めた。


この間まで、あおるはもう二度と緑川の分の弁当なんか作ってこないと心に誓っていた。
だが、その事を言った時の緑川がもの凄い剣幕で「家賃代わりだから」と吐き捨て、あおるは反論できなかったのだ。

それ以来、昼食はほぼ毎日のようにあおるの作ってきた弁当で。
緑川の私室で食べる・・・といった具合だ。


最初以来、香村とはこの部屋で会っていないため、緑川と二人きり。
以前ふと気になって宮野とは食べなくていいのかと聞くと「別に約束してない」と流された。
つい先日は霧丘から昼食のお誘い連絡が来て、緑川に一緒に良いかと尋ねてみたが、「いいわけあるか」と一言で片付けられてしまった。

だから昼ご飯を一緒に食べない代わりに、たまに夕食を霧丘のところで食べたりしている。

霧丘と一緒にいる時が一番楽しいし、何より落ち着く。

霧丘がいる時は緑川も猫被って穏やかだけれど、やっぱり緑川の反応を気にしながら過ごすのは心が休まらないからあおるは微妙だった。

緑川に言ったら「俺も行く」となりそうだから、霧丘のところで夕食を食べる事は秘密だ。
コソコソしているようでもやもやするが、霧丘との楽しい時間が無くなるのはもっと嫌だ。


「あおる・・・口開けてみて」

暫く黙々と食べていた緑川が突然口を開いた。

「え?なに・・・・・・っ!嫌だ!」

緑川が箸で掴んでいるものを見たあおるはグッと口を閉じる。

「・・・別容器にデザートかと思って開けてみれば、びっくりだよ。俺の方には山ほど詰められてるのに、あおるには一個も無いじゃん」

「あ、いや、昨日母さんがお弁当のおかずにって・・・ミニトマト買ってきて・・・く、腐らせたらもったいないと思ったから・・・」

数日前、母親にどうして二人分作っているのかと尋ねられ、緑川の分だと話した途端、それから1日おきに食材を買ってきてくれるようになったのだ。
それは良かったのだが、トマトは買わないでと言っておくべきだったとあおるは後悔した。

しどろもどろに言うあおるをジトッと見て緑川が低い声を出す。

「それで俺に全部食べさせようと思ったんだ。でも7つは多すぎるなぁ、ほら・・・あおるも食べて」

「嫌だ・・・!俺、トマト駄目で・・・」

緑川は手に持ち替えてミニトマトをあおるの口元へ持って行くが、あおるは食べるもんかと両手で口を覆った。

「そんなこと昔から知ってるって。手どけて」

「うあっ・・・!嫌だ、やめ・・・・・・んぐっ・・・!!」

力ずくで手を退かされ、隙を突かれ口の中に無理やりトマトを突っ込まれたあおるは嫌なトマトの味が口の中に広がると同時にじわっと涙ぐむ。

「・・・どう?食べてみれば案外おいしくない?」

「うぅ・・・・・・っ緑川の、いじわる・・・!」

苦しむ表情を見て、すぐ隣で楽しそうにニヤつく緑川をあおるは潤んだ目でキッと睨む。


「それ・・・やめろよ。誘ってるようにしか見えないから」

「は・・・っ?!なに、意味分かんな・・・・・・って、あっ、箸・・・!」

緑川があおるの手から箸をスッと抜き取り、更に距離を詰める。

「俺さ・・・ゾクゾクするって言ったよね、あおるの泣きそうな目」

言いながら緑川があおるの顎を掴み、お互いの視線が交差する。

「ちっ、近いっ・・・!」

緑川の綺麗に整った顔は心臓に悪い。
近距離での視線に耐えきれず、目線を逸らしたがカァッと熱が顔に集中するのが自分でも分かる。
あおるは顎を引こうとするが、そうはさせまいと緑川の手にも力が入る。

「・・・ふっ、かわい・・・・・・」

「っ・・・!?」

緑川の顔がさらに近づいたと思った瞬間、唇に柔らかい物が触れ、ちゅ、と軽いリップ音を立てて離れた。

「・・・っ、な、何してっ・・・!」

ボッとのぼせたように更に顔を赤くしたあおるを見て緑川が目を細める。
そしてあおるが逃げるよりも早く、両手で輪郭を捉えて引き寄せ、再び口付けた。

さっきとは違い火が付いたように深いキスをされる。

暴れて唇を怪我した痛みと血の味がした記憶を思い出し、いつかのように激しく抵抗できなかった。

「んっ・・・みど・・・かわ、やめ・・・っんぅ・・・!?」

開いた唇のわずかな隙間に今度は舌を差し込み、あおるの舌を絡め取った。
緑川は味わうようにあおるの口内を満足するまで侵すと、二人分の唾液の糸を引いて離れていく。
そして唾液で艶めかしく濡れた唇を耳元に寄せ、囁いた。

「あおる・・・この前の・・・・・・またやってあげようか?」

乱れた息を整えるのにいっぱいで何の事か思考が追いつかない。
いつの間にか肩や腰に腕を回され、緑川に体重を預けるような体勢になっていた。

「ほら、ここ・・・」

「っ・・・!!」

スッと緑川の伸ばした手があおるの下半身に触れ、弾けるようにハッとした。

「なっ・・・!いい、しなくていい!!」

「気持ちよかったでしょ?・・・・・・すぐイッてたし・・・」

そう甘く囁いてくる緑川の声はあの時の強い快感を思い出させ、眩暈がした。

ネクタイで目を覆われ、緑川の口内であっという間に達した事、それを緑川が飲み込んだこと・・・鮮明に蘇ってきて羞恥でどうにかなりそうだ。

「っ、あんなの・・・嫌だ・・・っ」

腕の中でふるふると首を振って拒む。
そんなあおるに、緑川が嗜虐心をくすぐられるだなんて事は知らない。

「も・・・っほんと無理・・・!!」

あおるは身を捩ってどうにか腕から抜け出すと、弁当箱の片付けもそのままに部屋を飛び出した。


「あーあ・・・・・・逃げられた・・・」

そう呟く緑川は妖艶な笑みだった。





あおるが勢いよく部屋を飛び出したその時・・・
部屋から出た所を影から見られていた事にあおるは気付くはずもなかった。
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