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しおりを挟むあの後、しばらくして緑川が教室に戻ってきて、置き去りにしてきた荷物を手渡されたがあおるは気まずくてろくに顔も見れなかった。
「緑川くーん!寮まで一緒に帰ろう?」
放課後になってすぐ宮野が緑川の席まで駆け寄り、甘えた声を出す。
「うん・・・・・・ね、あおるも一緒に帰ろう?」
緑川はスクールバッグを肩に掛け椅子から立ち上がると、隣のあおるに声を掛ける。
その時に宮野の目つきが鋭くなったのをあおるは見逃さなかった。
「え!い、いや・・・俺はまだ電車来るまでの時間あるし、少し今日の課題して帰るから・・・先に帰っていいよ」
明らかに邪魔すんなといった宮野の視線を受けながら、あおるは極力にこやかに断る。
「ふーん、あおるは真面目だもんねぇ。そういえば、最近あの霧丘・・・くん?の姿見ないけど・・・・・・もしかして陰で会ったりしてるとか?」
どうなの?っと優しい口調で笑顔なのにどこか怖いオーラが緑川から出ている。
「そんなこと・・・!してな・・・」
「そうだよね、あおるが俺に内緒な事するはず無いもんね?会う時は・・・俺にも声かけてくれるもんね?」
まるで釘を刺すようにニッコリと綺麗な笑顔でいう緑川。
そんな笑顔がこちらに向いている事が不愉快極まりないらしく、宮野は大きな目であおるをずっと睨み付けている。
「そ、そうだよ・・・内緒だなんて」
「うん、信じてるよ。あおる、じゃあまた明日」
「早く帰ろっ、緑川くん」
腕を組んで帰る二人の後ろ姿はお似合いで、そんな二人をあおるは心臓が飛び出すかってくらいにドキドキさせながら見送った。
二人の姿が完全に見えなくなってあおるは大きく息を吐く。
―――っ危なかった・・・!!
緑川に勘付かれたかと思った。
霧丘には詳しくは言ってないけれど、一応口止めしているから大丈夫だとは思うが、用心のためにこれからは霧丘の部屋には行かずに自分の家に呼ぼう・・・。
あおるはそう思った。
あの二人と会わないように、あおるは暫く時間をおいて靴箱へと向かったのだが。
「あ、あれ・・・?緑川と一緒に帰ったんじゃ・・・」
時間差で行った靴箱で、宮野と鉢合わせしてしまい戸惑った。
「居ちゃまずかった?嫌って顔に出てるよ?」
無意識に表情に出ていたのだろうか・・・あおるは見透かされたようでドキリとした。
「いや、そんな事は思ってないけど・・・・・・どうかしたの?」
「丁度今から帰るって時に偶然通りかかった担任に緑川君がお手伝いにって呼ばれたの。もう最悪だよ。まあ、それを快く引き受ける緑川君もかっこいいけど」
うっとりとした表情で話す宮野は本当に緑川の事が好きなんだ、と実感させられる。
「そうだったんだ・・・それは、残念だね・・・」
じゃあこれで・・・とあおるは帰ろうとしたが、宮野に行く手を阻まれ、立ち止まる。
「僕、緑川くん待ってる間、ついでに掛田くんも通りかかるかなぁって待ってたんだ」
「な、なんで・・・?」
「えーうそ。心当たりないの?」
「・・・っ」
きっとおそらく緑川に弁当を作ってきた初日、二人で学内レストランに向かっていたのを邪魔した事についてだろう。
思い当たる節はあったが、何を言っても宮野の神経を逆撫でしそうで言葉を慎むのが正解に思えた。
「なに黙ってんの・・・?僕さあ、協力してって言ったよね?」
怒気を含んだ表情と声で宮野が距離を詰めてくる。
自分よりも身長は低いのにその雰囲気で圧されてしまうくらいだ。
宮野との距離が縮まった途端、ガッと胸倉を掴まれ、耳元で囁かれる。
「・・・・・・僕、見ちゃった。君がお弁当持って緑川君の休憩室に出入りしてる所」
宮野は口を挟ませないように早口で言葉を続ける。
「最近、ずっと昼休み二人で居なくなるから怪しいって思ってたんだ。どうせ、君がお昼一緒に食べる人居ないから緑川くんが同情してくれてるんでしょ?しかも緑川くんに好かれたくてお弁当まで作ってきてるんでしょう?親友って面しといて、その立場利用して卑怯だなぁ」
宮野は掴んでいた胸倉を乱暴に離すと、見下したような目であおるを睨み付ける。
「違う・・・。弁当は緑川が言ったからで・・・!緑川は俺に同情なんてしない・・・!そ、それに今は一緒に食べる人が居ないって訳でもない・・・」
「はぁ?なーんか・・・緑川くんが君のお弁当食べたくて、一緒に食べることを望んでるって言い方だね。むかつくんだけど」
「そういうわけじゃないけど・・・」
・・・でも極端に言ってしまえば実際そうじゃないか。
単に素を出せるから一緒に居ることを強要するのだろうけど。
弁当作って来いって言ったのも緑川。
弁当渡した後に「どこ行くんだよ?」と強制的にソファーに座らせるのも緑川。
宮野君と一緒に食べなくてもいいのかと聞いても「別に約束してない」と流したのも緑川・・・なんだから。
「でも僕ね、もう緑川くんと一緒にお昼過ごしてた理由なんてどうでもいいんだ。協力するって言ったくせに役にも立たずに邪魔してる事に一番ムカついてるから」
「い、一応・・・自分なりにできる事はしようとしてた」
付き合っているフリを止めるよう改めて宮野に言おうとした緑川を止めた事だってそうだ。
「へー、でも僕もう君の存在が邪魔になってきちゃった」
「っ・・・・・・!」
「緑川君が話しかけないと、誰からも相手にされてないじゃん。きっとクラスの皆も僕と同じように思ってるんじゃないかな?」
グサッと胸を鋭いもので突かれたよう。
実際、誰からも話しかけられないし、宮野の言葉通りな所もあったからだ。
存在が邪魔・・・・・・その言葉にも胸が痛んだ。
あおるはその場に居たくなくて、もうこれ以上宮野の言葉を聞きたくなくて、逃げ出すようにその場から立ち去った。
◇
―――存在が邪魔。
あおるは家に着いても宮野から言われた言葉が頭から離れなかった。
緑川に逆らってでも宮野と一緒に過ごすように言えば良かったのだろうか。
でも弁当は家賃代わりって・・・それに、何より逆らった後が怖い。
あおるは落ち込んで気分が晴れずにいた。
「こんな時、霧丘に会いたいな・・・」
ぽつりと独り言が漏れた。
気分が沈んでいる時とか、霧丘と遊んだり喋ったりすると楽しくて、いつも元気になれるんだ。
・・・そうだ、夕食に誘ってみようか。
パッと閃いたようにあおるは思い立った。
今日は金曜で明日は休み。
母親はここ数日仕事が忙しいのか、いつ帰ってきているのか分からない状態であるため、霧丘を家に呼んでも大丈夫だろう。
時計を見ると18時半すぎ。
部活はそろそろ終わってる頃だろう。
あおるはスマホで霧丘にメッセージを送信した。
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