ずっと君だけ。

しゅく

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「よぉ、あおる!なんか久しぶりだな」

8時ちょっと過ぎ、インターホンが鳴り、あおるが勢いよくドアを開けるとニカッと爽やかに笑う霧丘の姿があった。

あおるは久しぶりに会った嬉しさが溢れ出し、思わず抱きつく。

「~~~っ霧丘、霧丘、霧丘・・・っ!」

「うわあっ、やめろって!俺そのまま来たから汗くせぇぞ」

抱きついたまま頭をグリグリと擦り寄せてくるあおるを霧丘が引き離す。

「へへ、ごめん。あ、ちょっと散らかってるかもだけど、どうぞ」

そう言ってあおるは家の中へと霧丘を招き入れた。

「お邪魔しまーす。・・・・・・すっげー良い匂い。唐揚げ?」

「霧丘すごいね、当たりだよ」

あおるは可笑しそうにくすくすと笑って答える。

平凡な顔なのに、あおるの笑った顔はなぜか可愛く見える。
霧丘は毎回感じる変な胸のモヤモヤを誤魔化すようにあおるから目を逸らして言った。

「あー、マジ腹減ったー」

「そう思っていっぱい作った」

「俺かなり食うぞ?」

「え、20個でも足りないかな・・・?」

「いやいや、さすがに十分過ぎ」

真剣に、足りないかな・・・と心配するあおるがなんだか可笑しくて霧丘は笑った。



それから夕食の準備が整うと、二人は「いただきます」と手を合わせ、食べ始めた。

「なぁ、唐揚げ余った分持って帰って良いか?」

夕飯を食べ終え、霧丘が言う。

「うん、全然良いよ」

持って帰りたくなるくらい美味しかったという事だろう。
あおるは嬉しくなる。

「タッパーに入れて冷蔵庫にしまっとくよ」

「おう、ありがとな」



それから後片付けをし、二人で喋ったり、スマホや漫画、読書などそれぞれ自由に寛いで。
時間はあっという間に経ち、気付けば10時を過ぎていた。

「あー・・・そろそろ帰んねぇと終電無くなるよな。うあー帰るのだる・・・」

時計を見て背伸びをしながら霧丘が脱力気味に言う。

楽しかった分だけ、帰るとなった時に胸が切なくなる。
楽しい非現実なところから厳しい現実に引き戻されるような、そんな感覚。

「あおる・・・?なんて顔してんだよ」

切ないと思う気持ちが表情に出ていたのか、心配そうに霧丘があおるの顔を覗き込む。


あおるは握っていた拳にギュッと力を込め、勇気を振り絞るように口を開いた。

「き、霧丘・・・っ!今日、と、泊まっても大丈夫だよ・・・!俺は・・・霧丘にまだ帰って欲しくない・・・!」

「え・・・?」

ぽかんとした霧丘の表情。


言って気付いた。
自分の顔に熱が集中するのが分かる。

「うわぁ・・・ご、ごめ・・・!俺、言い方間違え・・・?で、でも言いたいことは言ったっていうか、その・・・・・・・・・霧丘?」

あおるは恐る恐る顔を上げると、あおると同じく顔を真っ赤にした霧丘が目に入った。

「・・・お、お前なぁっ!そういうのは普通に言えって前にも・・・!変に緊張するだろーがっ」

「だ、だよね!俺こういうのってほんと慣れてなくて・・・、こんな誰かを泊まりに誘った事も初めてで・・・だから何て言ったらいいかがよく分かってなくって・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

ふと真顔になった霧丘にあおるは少し不安になる。

「・・・霧丘?」

「そっかそっか」

霧丘は微笑むと、あおるの頭にポンポンと触れた。

「じゃあ、今日は泊まらせてもらうか!」

「うん・・・!」

あおるは勢いよく返事を返した。









「ふーっ、スッキリ・・・あおる風呂ありがとな」

あおるの後に風呂に入った霧丘が風呂からあがり、頭をタオルで拭きながら言う。

「うん、でもちょうど着替えあって良かったね」

「部活の練習用に用意してた下着とユニフォームだけどな」

寝巻き代わりと言うには、真っ赤という目には優しくないものを身につけている霧丘は苦笑する。
スラリとしていて、程よくついた筋肉が羨ましい。
きっと試合なんかでもかっこいいんだろうな・・・そう思わせるユニフォーム姿だった。


「あ、霧丘の布団、敷いといたよ」

「おお、何から何まで!なんか悪いな」

「全然いいよ」

「・・・なあ、あおる明日って何か用事あるか?」

髪は自然乾燥させ、布団の上で軽く柔軟ストレッチをしていた霧丘が不意に尋ねる。

「明日は特に無いけど・・・?」

既に自分のベッドに入って本を読んでいたあおるは霧丘に目を向ける。

「ならさ、俺部活が久々に休みだから、遊びに行かね?」

「・・・行く!行きたい」

霧丘と遊ぶのは高校入学前の春休み以来。
特に用事も無く暇なあおるは喜んで返事をした。

「じゃあ映画行こうぜ、映画!ちょうどこの間、部活の先輩が映画の前売り券くれたんだよ。なんかよく分かんねーけど。彼女と行く予定だったのが行けなくなったとかで・・・」

俺は一緒に行くような彼女もいねーし、と霧丘が2枚の映画チケットを困ったように笑いながらあおるに見せる。

「お、俺・・・映画館って初めてだ」

目をキラキラさせながらあおるは言う。

「・・・マジで!?」

「うん!親にも連れて行ってもらったこと無かったし」

霧丘は一瞬驚いたが、それ以上は深くは聞かなかった。

「へー、そうだったのか。他に・・・どっか行きたい所とかない?」

「あ、カラオケ行きたい」

中学を卒業して霧丘と初めて行ったカラオケが楽しかった事を思い出し、また行きたいと思ったのだ。

「なら明日は映画見て、昼メシ食って、カラオケって事でいいな!?」

「うん!楽しみだ・・・っ」

あおるは活き活きと答える。

「じゃあ寝ようぜ!明日は8時起床な!」

楽しみなのは霧丘も同じなようで、霧丘は慌てるようにして布団に潜り込んだ。

「俺、アラームかけとくよ」

「おう、お休み」

あおるはアラームをセットし、電気を消した。


こんなにも明日が楽しみでワクワクするのを抑えて眠ることは久しぶりだった。
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