ずっと君だけ。

しゅく

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『今なにしてる?』

朝、遊びに出かける支度をしている時、スマホの新着に気付いてあおるの顔が引きつる。
差出人は緑川、受信した時間は23時38分。
既に寝ていた時間だ。

基本的に自分の都合第一な緑川はどんなに深夜だろうがお構いなしにラインや、酷い時にはビデオ通話してくることすらある。

「と、とりあえず返信だけは・・・」

した方が良いと判断し、あおるは『ごめん。寝てた』と無難に返すが、しばらくしても返事が来なかったため、緑川はまだ寝ているのだろう。
その事に少し安堵する。

「あおるー!悪いけど適当に服貸してくんねぇ?」

私服までは持ち合わせていなかった霧丘は洗面所から戻るとあおるに尋ねる。

「うん、いいんだけど俺の服、霧丘入るかな。ちょっと着てみて」

あおるはとりあえず自分が持っている中で大きめの白いTシャツといつも裾が余って困るジーンズを霧丘に渡すと霧丘はその場で着替える。

「・・・どう?」

「うーん、ズボンは丁度いいんだけど上がなぁ」

「・・・っく、ちょっとピッチリし過ぎるね」

綺麗な顔立ちでジーンズもスッと着こなす霧丘がTシャツだけ小さく、妙にアンバランスになっていてあおるは堪えきれずに笑いが漏れる。

「笑ってんなよー!」

霧丘はあおるの頭に手を置くと髪をぐしゃぐしゃにする。

「うわぁ・・・っ!ごめんって!あ・・・そうだ、こっちの方がサイズ大きいかも・・・」

あおるは自分が今着ている黒色無地のTシャツを見て呟くと、腕をクロスさせTシャツの裾を掴むとそのまま脱ぎ始めた。

「うわっ!?ちょ、あお・・・!?」

「?はい、交換しよう。これ今着たばっかだから」

「・・・お、おう・・・ありがとな」

突如露わになったあおるの白い肌がなぜか直視できず、霧丘は目を逸らして差し出された服を手に取った。
中学生の頃、体育の着替えや水泳の時とか、何度も見ているのに、その都度どうしてか変に緊張する自分に戸惑う。

「・・・うん、今度は良い感じ」

「見てないで早く着ろって。あおる白過ぎんだよっ」

無意識に顔が赤くなるのを誤魔化すように霧丘が言った言葉を貶されてるとでも思ったのか、あおるは大げさにむっと膨れる。

「別に白くたって・・・インドアでもいいじゃんか」

「あーごめんごめん、ほら早く行こうぜー」

霧丘は的外れに怒り出すあおるを適当に宥めると、準備を早めるように急かした。








それから一日は楽しいことばかりだった。

まずはじめに映画を見に行って。
霧丘と二人で見た映画は純愛ラブストーリー。
男二人で・・・ってなるかも知れないけれど元々は霧丘の部活の先輩が彼女と見るつもりだった映画券。
そうなるのも仕方が無かったし、何より心温まるストーリーであおるも霧丘も見た後に良かった場面を振り返って盛り上がるくらい、満足だった。

それからうどん屋で昼食して。
一息つくとカラオケに行った。

歌は特別上手いというわけじゃないけれど、歌うとスッキリするから好きだった。
霧丘はお世辞にもあんまり上手いとは言え無くて。
マイクを持って歌う姿はかっこよくて、アイドルと言われても違和感無いほど、同じ男なのにちょっと見惚れてしまうくらいだった。
それなのに歌うと音痴で、そのギャップを目の当たりにするのは2回目だけれど、思わずこっそりと笑ってしまった。

霧丘の提案でカラオケの採点機能で、どっちがいい点数とれるかの勝負。
見事に勝つことができて、悔しそうな霧丘にジュースを奢って貰った。
カラオケが終わって外に出たらもう辺りは日が落ちていて、時間の早さを感じた。

このまま帰るのが惜しいくらいに。

「なあ、あおる夕飯どうする?ってか今から食材買ってそのまま俺んとこで食べね?」

今日が土曜って事を思い出した、とニッと笑って霧丘が提案する。

「あれ?霧丘明日は部活じゃ・・・」

「明日の練習は10時!あおるは泊まって明日好きな時間に帰ればよくね?」

笑顔で言う霧丘にあおるは迷うことなく首を縦に頷いた。

「よっしゃ、決まり!」

霧丘の笑顔につられてあおるの頬も緩んだ。


久々に一日中遊んで、本当に楽しかった。
今から霧丘のところに行って、まだまだ楽しい時間は続くんだ。

だから忘れてた。

いくら休みでも同じ寮内に緑川が居ること。
どんなに霧丘と緑川の部屋が遠いからって、会ってしまう可能性は十分あること。


・・・・・・忘れるなんてどうかしてる。

早く気付くべきだった。
映画を見る時、スマホの電源を切っていたことを。

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