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しおりを挟む「・・・あおる大丈夫か?」
緑川から逃げるように走って霧丘の部屋に入った後、霧丘が青ざめているあおるに尋ねる。
「俺よりも、霧丘の方が・・・っ!」
大丈夫じゃないかもしれない。
『あいつを選んだら、あいつは居なくなると思って』
緑川が言っていた言葉が、本気かも知れないと思うと怖くて堪らない。
もし、あの時みたいに、美守さんの時みたいに突然居なくなってしまったら・・・
最悪な事が頭を過ぎり、無意識に霧丘の袖を掴んでいたあおるの手にギュッと力が入る。
「・・・俺は大丈夫だって言っただろ?」
そんなあおるに気付いた霧丘はあおるの頭にポンッと手を置き、宥めるように言った後、さっきの出来事をあおるに問いかけた。
「それより何なんだよ、あいつ」
緑川ってあんな奴だったのか!?と霧丘があおるに言う。
「・・・・・・なぁ、あおる。あいつと幼稚園からの仲良しって本当か?」
あおるの両肩をグッと掴み、事情があるなら話してくれ、そう目で訴える。
今まで霧丘と一緒にいる時間が一番楽しかった。
嫌なことも心のモヤモヤも全部忘れるくらいに。
だから緑川の事とか話さなくても平気だったし、巻き込みたくなかった。
でも・・・もう迷惑なくらいに巻き込んでしまったんだ。
自分を庇って、手を引いてくれた霧丘に話すべきだと思った。
「・・・・・・み、緑川と幼稚園から一緒なのは、本当の事なんだけど・・・・・・」
あおるはポツポツと話し始める。
小さい頃から緑川の言いなりだったこと。
緑川の売る予定だった家に住んでいること。
仕返しとか、逆らうとか出来ない立場にあること。
いつの間にか緑川の顔色を窺うようになって、でも何で不機嫌になったのかも分からなくて、自分にあたられる事。
そもそも喧嘩したところで返り討ちにあい、勝ち目などなかった事。
皆の前では優しいのに、自分には口調も態度も変わって・・・・・・それが辛いこと。
あおるはこれらについて全部霧丘に話した。
―――どうしてこうなってしまったんだろう。
「最初は、普通に仲良い友達だった気がするんだけどな・・・・・・」
まるで独り言のようにあおるは呟いた。
「あいつ・・・最悪だ」
大まかに話し終え、今まで黙って聞いていた霧丘が口を開く。
初めて聞く霧丘の低い声にあおるは少し恐怖を感じるが、それほど緑川へ嫌悪感を抱いているのだろう。
「・・・っあおるも!そういうのは早く言えよ!なんで今まで・・・っ、何か俺信用ねぇみてぇじゃん・・・」
霧丘の悲しげな声色と表情にあおるは慌てた。
「ご、ごめんそんなんじゃ・・・!ただ・・・霧丘と一緒だと楽しくて・・・そんなの忘れるっていうか、迷惑かけたくなかったって言うか・・・その・・・・・・ごめん」
決して信用してないとか、そんなんじゃなかった。
それでも何を言っても弁解がましく思えて徐々にあおるの声が小さくなり、消えた。
シンッ―・・・とした沈黙。
悲しげでどこか悔しそうに顔を歪める霧丘にあおるは申し訳なさと、言わなかった事がかえって傷つけてしまったという自己嫌悪で視線を床に落としてしまう。
「・・・もういいよ」
霧丘がポツリと呟いた。
「・・・・・・っ!」
もう友達をやめられるのではないか、とあおるは絶望にも似た感覚になる。
恐る恐るゆっくりと顔を上げると、何かを堪えているような表情の霧丘と視線が合う。
「・・・っいーよもう!許してやるから、そんな顔すんな!俺・・・あおるの泣きそうな顔マジで勘弁」
霧丘は何かを吹っ切るようにそう言うとあおるの頭に手を置き、思いっきり痛いくらいに髪をグシャグシャにする。
霧丘の言動にあおるは一気に安堵し、詰めていた息を吐き出した。
「・・・き、きりおかぁ」
「俺も泣きそうだよ!迷惑かけたくないって気持ちも分かるけどなぁ、俺はあおるが言ってくれない事の方がずっと嫌なんだよ」
わかったか!と霧丘はあおるの頭を掻き回す手を止め、今度は両頬を摘まんでムニッと引っ張った。
「よ、よかっ・・・もう嫌われたかと思っ・・・!」
「はあ?それで嫌いになるかよ、あおるのばかやろー」
そう言って霧丘はあおるの頬を摘まむ手に力を入れた。
「い、いひゃい、霧丘」
「・・・ぶっ!変な顔」
張り詰めていた雰囲気を解すように、あおるの顔を見て霧丘は可笑しそうに笑った。
霧丘が友達で居てくれて、本当に幸せだとあおるは思った。
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