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31(霧丘視点)
しおりを挟む「よくよく考えればさ、ちょっと引っかかってたんだよなぁ・・・」
一段落付き、あおるが適当に作った肉野菜炒めをモグモグさせながら霧丘が言う。
「え、なにが?」
あおるは箸を止め、霧丘を見る。
「だってさ、あおる俺を遊びに誘う時も初めてだとかって真っ赤になって異常に緊張してたし、なんつーか他にも反応が初々しいつーか・・・」
「うん、だって・・・俺、友達らしい友達って霧丘が初めてだったから」
「マジで!?」
霧丘は衝撃的だったらしく、発言と同時に勢いよく口の中の物が飛んだ。
「ちょ・・・!霧丘ご飯飛んだ」
「ああ、悪い。まあ緑川・・・あいつなんて友達って言えねぇけどさ、他に少しくらい仲良い奴は居ただろ?」
「ううん、特に居なくて。それに一人ちょっとだけ仲良くなった子が居たけど、急に転校しちゃって・・・結局いつも傍に居たのは緑川だけだったかな」
あの時は本当に急だったな・・・とあおるは美守の顔を思い出して胸が少し切なくなった。
「あ、嫌なこと思い出させたよな。ごめんな。さっさと飯食おーぜ!」
「え、いやもう全然大丈夫だったけど・・・」
無意識に表情に出ていたのだろうか。
意外な所で謝ってきた霧丘にあおるはきょとんとするが、ガツガツと残りを食べ始めた霧丘を見てあおるも箸を動かした。
「ぷはー・・・食ったー食い過ぎたー」
「霧丘、俺の倍くらい食べてたもんね」
満腹だと腹をさする霧丘にクスクス笑いながらそう言うと、あおるは後片付けをするべくキッチンに食器を持って行く。
「あー、いいってあおる。明日俺が洗うから。それより飯食ったら眠くなった・・・」
ふらりと立ち上がってソファーに座り、そのままボフッと横になる霧丘を見てあおるが言う。
「あ、駄目だよ霧丘!歯磨きと風呂」
「・・・あおるはしっかりしてるもんなぁ」
「ぷっ、当たり前」
霧丘の発言にあおるは笑った。
―――外見も性格も普通。
むしろ性格は良いくらいだ。
友達が出来なかったのがにわかに信じられないくらい。
嫌いなら無視すればいいだけの話。
ストレス発散なんて金持ちで人望あって、何でも持っている緑川ならあおるに発散しなくたって他にいくらでも手段はあるはず。
第一、優等生で王子様を周りに完璧に作りあげてるのに、なんで本性を見せるのがあおるだけなんだ。
売る予定だった家にあおるを住まわせる。一見親切に見えるけど。
逃げられなくしているとしか思えない。
あおると唯一、仲の良かった子が急に転校したこと、「あいつを選んだら、あいつは居なくなると思って」という緑川の発言がどうしても引っかかる。
霧丘は途中で発言さえしなかったものの、あおるの話を聞く中で釈然としない所がいくつかあった。
・・・・・・緑川が最悪な奴には変わりはないけどな。
「ごめん霧丘、着替え貸してくれる?」
「ああ、そこから好きなの取っていいから」
霧丘は自分のタンスの中から服を選んでいそいそと風呂の後の着替えを準備し始めるあおるを見てそう思った。
「あおる奥と手前どっちがいい?」
寝室。
ベッドに腰掛け、あおるを手招きして呼んだ霧丘が尋ねる。
「・・・あれ、意外と普通なんだね」
さらりと聞いてきた霧丘にあおるはふと思った。
「ん?」
その意味が分からず霧丘が聞き返す。
「あ、えっと、同じベッドで一緒に寝ること・・・?」
小首を傾げて言うあおるに霧丘は不意にもドキリと心臓が鳴った。
時々、あおるに感じる言いようの無いこの気持ちは何なのだろうか。
「え、な、なんで?もしかして嫌だった?」
急にどぎまぎし出す霧丘に、特に何も疑問を持たずにあおるが続ける。
「いや、そうじゃなくて・・・前に緑川が当然みたいにして引き込んだ事があったから・・・」
「・・・・・・は!?」
霧丘は思わず声を上げた。
ち、ちょっとまて・・・・・・
何か言いたそうで何も言葉が出ない霧丘を見てあおるが切り出す。
「お、俺の考えすぎだったのかも。じゃあ俺奥でもいい?」
なぜかベッドに腰掛けたまま動かない霧丘の横を通り、あおるが奥側へと移動した。
「・・・霧丘?もう寝るんでしょ」
「え、あ、ああ・・・」
きょとんとした顔のあおるにハッとなり、霧丘は電気を消すとベッドに入った。
あおるは、おやすみと言うとよほど疲れていたのか、ものの数分でスースーと心地よさそうな寝息が聞こえてきた。
あおるの横に並んで寝てみて初めて分かる距離の近さ。
なぜか胸の鼓動が大きくなる。
「おかしいだろ・・・」
薄暗がりの中、霧丘の口から声が漏れる。
変に緊張している自分も。
緑川も。
『前に当然みたいに引き込んだ』ってベッドにって事だろ?
それにあおるだから、霧丘はベッドを勧めたのだ。
ただ単に布団を出すのが面倒で、あおるの体型が華奢だからって理由もあるけれど。
それでも他の友達ならたぶん普通に布団を準備していたと思う。
それなら尚更だ。
機嫌悪くて八つ当たりしたり、酷い事をするくらい嫌いな相手なら普通は一緒に寝るなんて考えられない。
隣の家に住まわせたり、幼稚園から良いように扱き使って今でも傍に居させようとしたり、嫌いな奴にすることなのか。
皆の前では優しいとあおるは言っていた。
そんな事したらあおるが妬まれて周りから忌み嫌われるのだって、頭のいい緑川なら容易に分かるはず。
それを見て緑川は嘲笑ってるのだろうか。
・・・・・・何か釈然としない。
第一、今日あおるがラインを返事し忘れて遊んでたってだけであの態度。
あの時、自分から奪い返すようにあおるの手を引き、強引に寮に連れて行こうとした緑川はまるで嫉妬してるみたいで・・・・・・
まさか―――好きなのか・・・?
しかも恋愛的な意味合いで。
霧丘の中でもやもやと引っかかっていたものが解けたような感覚になる。
あくまでも予想にしか過ぎないけれど。
本当はあおるの事を好きなのかも知れない。
霧丘はすぐ横で寝息を立てているあおるを横目で見る。
・・・・・・なんか、すごく嫌だ。
緑川があおるを好きかも知れないと思った途端、霧丘の中に悔しいと言うか、焦燥感のような感情が込み上げてくる。この気持ちは何なのか。
それでも、緑川があおるを好きでも嫌いでもどっちにしても。
緑川にあおるは渡さない、渡したくない。
あんな嫌な奴だけには。
霧丘はそう思った。
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