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FIRST MAGIC
第2話 非凡へのスイッチオン
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買って来たおにぎりとサラダで空腹を満たした知衣は、脚立と新しい豆電球を手に玄関へと向かった。
(最近ろくに掃除できてないし、電球埃かぶってるだろうなぁ。)
予想通りにたまっていた埃に眉をしかめつつ古い電球を取り外した知衣は、うっかり吸込んでしまった埃に咳込みながらも、新しい電球を取り出した。
(これでやっと玄関が明るくなるよ。)
残業で疲れきって帰った時、電気のつかない真っ暗な玄関に何度苛立ったことか。
その度、疲れが増す気さえしていた。
「よっし。装着完了!」
手についた埃をはたいて、知衣はスイッチを入れた。
「うわっ。まぶしっ!」
いきなり明るくなった視界に、とっさに目を細めて凌ごうとした知衣だったが――
「いっ!?」
目を焼くほどの強烈な光に慌てて目を閉じ、更に両手で覆い隠す。
目を閉じてなお、残光で目がちかちかする。
(ま、まぶし過ぎでしょっ、いくら何でも!まさか不良品!?)
これほど強烈な光は目に毒だ。
家庭用の電球で、これはおかしい。
到底目を開ける気にはなれず、知衣は手探りでスイッチを探す。
すぐ側にある筈のスイッチ。
しかし、知衣がそのスイッチを探しあてることはなかった。
代わりに予想外の弾力が、知衣の手を伝う。
玄関に立つ知衣の手に届くものは、壁とスイッチ。精々靴箱くらいのものの筈なのに、そのどれでも有り得ない感触――それは生暖かく、鼓動にも似た振動を感じた。
ギョッとして手を引っ込め、思わず目を開けた知衣は、その感触の正体に息を飲む。
見たことのない青年が、そこにはいた。
人工的なものとは思えない眩いほどの金髪に、碧い瞳。
顔立ちからしても、日本人ではないだろう。
(泥棒?ストーカー?何にしても不法侵入者!)
叫ばなくては!
危機感と共に口を開いた知衣が声を上げるよりも早く、目の前の青年が声をあげた。
「なんだ。まだ子供じゃないか。」
思いもよらない言葉に、叫ぶのも忘れて知衣は問い掛けた。
「は?それ、私に言ってるの?」
「他に誰がいるんだ。」
そう答えた青年に、流暢な日本語に聞こえるけれどちょっと日本語が不自由なのかもしれないと思う。
24歳の知衣に向かって、『子供』はないだろう。
知衣は童顔ではあるが、さすがにもう子供と間違われることはない。
知衣から見たところ、目の前の青年とはさほど年も変わらない筈だ。
年下と見られることは、元々日本人は童顔とされていることからもやむを得ないとしても、『子供』は酷い。
考えているうちに段々と憤りを感じて、見ず知らずの青年に対する恐怖心はすでに知衣の意識の中から消えていた。
「私はとっくに成人してます!大体あなたは何?何でここに?不法侵入ってわかります?今出て行けば見逃してあげますから、さっさと出て行ってくれませんか?」
苛々とした調子で言い放つと、男は馬鹿にしたように笑った。
「成人?笑わせる。大体、ここがどこだかわかっているのか?」
「ここがどこだかですって?そんなの――」
私の家に決まっているじゃない!――そう言いかけて、知衣は固まった。
見慣れた玄関はそこにはなかった。
社宅の中ですらない。
さらに言えば――。
(に、日本でも……ない!?)
少なくとも知衣は、日本にこんな豪奢で広大な部屋を持つ建物があることを知らない。
はるか遠くに見える壁。広大な面積の天井を埋め尽くす、贅を尽くしたシャンデリア。
足をつけるのもためらう程ピカピカに磨き上げられた床は、ひょっとせずとも大理石か。
さらには美術館のように値段を聞くのも恐ろしい芸術品の数々が、至る所に並べられている。
「な、な、な……こ、ここは!?」
錯乱する知衣に、青年は告げた。
「ここは魔法大国セルシアータの王城、アルスーン城だ。」
(最近ろくに掃除できてないし、電球埃かぶってるだろうなぁ。)
予想通りにたまっていた埃に眉をしかめつつ古い電球を取り外した知衣は、うっかり吸込んでしまった埃に咳込みながらも、新しい電球を取り出した。
(これでやっと玄関が明るくなるよ。)
残業で疲れきって帰った時、電気のつかない真っ暗な玄関に何度苛立ったことか。
その度、疲れが増す気さえしていた。
「よっし。装着完了!」
手についた埃をはたいて、知衣はスイッチを入れた。
「うわっ。まぶしっ!」
いきなり明るくなった視界に、とっさに目を細めて凌ごうとした知衣だったが――
「いっ!?」
目を焼くほどの強烈な光に慌てて目を閉じ、更に両手で覆い隠す。
目を閉じてなお、残光で目がちかちかする。
(ま、まぶし過ぎでしょっ、いくら何でも!まさか不良品!?)
これほど強烈な光は目に毒だ。
家庭用の電球で、これはおかしい。
到底目を開ける気にはなれず、知衣は手探りでスイッチを探す。
すぐ側にある筈のスイッチ。
しかし、知衣がそのスイッチを探しあてることはなかった。
代わりに予想外の弾力が、知衣の手を伝う。
玄関に立つ知衣の手に届くものは、壁とスイッチ。精々靴箱くらいのものの筈なのに、そのどれでも有り得ない感触――それは生暖かく、鼓動にも似た振動を感じた。
ギョッとして手を引っ込め、思わず目を開けた知衣は、その感触の正体に息を飲む。
見たことのない青年が、そこにはいた。
人工的なものとは思えない眩いほどの金髪に、碧い瞳。
顔立ちからしても、日本人ではないだろう。
(泥棒?ストーカー?何にしても不法侵入者!)
叫ばなくては!
危機感と共に口を開いた知衣が声を上げるよりも早く、目の前の青年が声をあげた。
「なんだ。まだ子供じゃないか。」
思いもよらない言葉に、叫ぶのも忘れて知衣は問い掛けた。
「は?それ、私に言ってるの?」
「他に誰がいるんだ。」
そう答えた青年に、流暢な日本語に聞こえるけれどちょっと日本語が不自由なのかもしれないと思う。
24歳の知衣に向かって、『子供』はないだろう。
知衣は童顔ではあるが、さすがにもう子供と間違われることはない。
知衣から見たところ、目の前の青年とはさほど年も変わらない筈だ。
年下と見られることは、元々日本人は童顔とされていることからもやむを得ないとしても、『子供』は酷い。
考えているうちに段々と憤りを感じて、見ず知らずの青年に対する恐怖心はすでに知衣の意識の中から消えていた。
「私はとっくに成人してます!大体あなたは何?何でここに?不法侵入ってわかります?今出て行けば見逃してあげますから、さっさと出て行ってくれませんか?」
苛々とした調子で言い放つと、男は馬鹿にしたように笑った。
「成人?笑わせる。大体、ここがどこだかわかっているのか?」
「ここがどこだかですって?そんなの――」
私の家に決まっているじゃない!――そう言いかけて、知衣は固まった。
見慣れた玄関はそこにはなかった。
社宅の中ですらない。
さらに言えば――。
(に、日本でも……ない!?)
少なくとも知衣は、日本にこんな豪奢で広大な部屋を持つ建物があることを知らない。
はるか遠くに見える壁。広大な面積の天井を埋め尽くす、贅を尽くしたシャンデリア。
足をつけるのもためらう程ピカピカに磨き上げられた床は、ひょっとせずとも大理石か。
さらには美術館のように値段を聞くのも恐ろしい芸術品の数々が、至る所に並べられている。
「な、な、な……こ、ここは!?」
錯乱する知衣に、青年は告げた。
「ここは魔法大国セルシアータの王城、アルスーン城だ。」
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